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【2022.09.15 イベントレポート】チーム規模の1→10フェーズで直面したハードシングスと乗り越えかた / akippa

皆さん、組織やカルチャーづくりにおいては非常に悩みも多く、手探りなこともあるのではないでしょうか?
特に、スタートアップフェーズにおいての組織やカルチャーは非常に大きなissueです。そこで今回はスタートアップの中でも既存産業DXをリードしている5社によるLT形式で様々な事例をご紹介するイベントを開催しました。

こちらではイベントで紹介した内容を各社のレポート形式でご紹介させていただきます。様々な企業の取り組みをぜひ参考にしてみてください。

今回は、akippa株式会社 井上氏のLTをご紹介いたします。

井上 直登 | akippa株式会社 | プロダクト開発責任者

akippa 井上 直登氏(以下、井上): はじめまして。akippaの井上と申します。よろしくお願いいたします。弊社は駐車場のシェアリングサービス「akippa」を提供している会社です。2014年にサービスをローンチしてもう8年になりますが、実は開発チームの人数は10名強と、まだまだ小さなチームで開発しております。8年の間に紆余曲折ありましたので、チーム規模が大きくなった時に直面した課題とその乗り越え方というテーマで話をします。広く浅く、生々しい話になると思います。
趣味は釣りです。



akippaとは?

使っていない空きスペースを駐車場として誰でも簡単に貸出しができ、ドライバー様は駐車場をネット予約で利用できるサービスを運営しています。
駐車場版のAirbnbをイメージしてください。
東京駅周辺や大手商業施設のビルの駐車場がakippa経由で貸出しされていたり、あとは郊外の住宅街にも多いです。例えば、高円寺や世田谷などの住宅街にも多くのakippa駐車場を貸出しいただいています。

個人宅の駐車場利用の場合、門が付いてる駐車場などもあって、門をガラガラ開けて「お邪魔します」って感じで車を停めるようなサービスになっているので結構新感覚の駐車体験を提供しています。

akippaが直面した2つの課題

ここからが本題です。組織的な課題の話をする前にまずはチームの規模がどれぐらいかを説明します。
チームの規模の定義はいくつかの区分があるとは思うんですけれども、今日は数名から10名ぐらいのお話です。あとは、これからどう伸ばしていくかという点においての課題感も含めて話をしていきます。

私が参画する前には、akippaの開発チームには2つ大きな課題がありました。
1つ目は、大事にすべき価値観が揃っておらず、コミュニケーションや信頼関係が成立していない問題が発生していました。心理的安全性がなく内部崩壊の危機に繋がってしまいました。
2つ目は、プロダクトが戦略の中でちゃんと位置づけられておらず、ストーリー性のある開発が行えないという問題がありました。結果、あるあるな話だと思いますが、せっかく自社に開発チームがあるのに社内受託的な受け身な位置づけになってしまっていました。

内的課題

1つ目の問題についてもうちょっと掘って話をすると、まず、コミュニケーションの機会も圧倒的に少なかったですね。コロナのタイミングっていうのもありましたが上長とメンバーのコミュニケーション機会も少なかったですし、メンバー同士でも話し合う機会がなかなか持てていなくて、相手がどういう人なのか知らない状態でチームを運営していたこともあります。
あと、会社のバリューも当時からちゃんとあったのですが、それをちゃんとマネジメントに活かせず、せっかく素晴らしいバリューがあるのに絵に描いた餅状態になっていました。結果、みんなが自分の価値観や経験で語ってしまい、正論で殴り合うみたいな状況が生まれていました。
また、採用段階からのミスマッチ、カルチャーギャップ、スキルギャップみたいなところがあり、エントリーマネージメントができていなかったというのも心理的安全性が欠如していた問題につながっていたと思います。

外的課題

2つ目のストーリー性のある開発が行えていなかった問題についても踏み込んだ話をしますと、弊社はボードメンバーが非エンジニアで、組織的にプロダクトを作ってきた経験がなかったという背景がありました。例えば、代表の金谷のバックグラウンドがセールスなので「セールスで事業を伸ばしていくぞ」みたいな空気感になっていました。
結果、プロダクトをどうしていきたいのかというロードマップがなく、どんな要素技術が必要で、どういうところに投資していくかみたいなところが見えていませんでした。そうなるとエンジニアってどこを向いてなにを頑張ればいいんだっけ?という状況になりました。

これらの内的課題・外的課題に起因してチームの雰囲気も悪くなり結果、コードレビューは荒れるし、朝会は盛り上がらない、ユーザーの課題解決の時間より、チーム課題の解決の方が長くなるし、「社内的に受託でいいんじゃない?」「わざわざ僕らでチーム抱えてやるべき?」みたいな話にもなって。メンバーの希望退職者が出てくる、結構荒れた状態に一時期なっていました。

解決策と現在の状況

そこからどう盛り返してきたか。2021年1月に私が開発チームに入ってトライしてきたところを紹介します。
止血と、リデザイン、成長という3つに分けて取り組みました。
止血期においては、「心理的安全性」をどう確保するかというところにこだわり、リデザイン期ではチームの役割や個人の役割を変えていくよ、開発手法を変えるよみたいなところを進めてきました。現在は成長期の途中ですがそこではプロダクトのロードマップを作成して、それに向けてちゃんと攻めの開発チームを作っていこうとしています。

止血期

止血期において、どういう風に心理的安全性を提供していったのかを説明します。まず、会社として設定しているバリューをチームごとにちゃんと再解釈して、何が正しいんだっけ?というところの共通認識を持つようにしました。もう一つは、コミュニケーションの機会をとにかく増やすこと。よくある話ですが、1on1の実施とか朝会で雑談の時間を必要以上に取る、そういったことをやりました。あと意外とよかったのが一緒に遊ぶみたいな話ですね。釣りに一緒に行くとか、休みの日にラーメン食べに行くとか、ボードゲーム大会開いて集まってわいわいするとか、そういう機会を設けるようにしてお互いの信頼関係をちゃんと構築できる機会を作ってみました。
バリューをチーム内でどう解釈して運用していたかというと、会社として当時はThink and RushとかDown with Prideみたいなこういう言葉を掲げていたのですが、これをいきなり目指せって言われてもなかなか難しいですよね。
なので、エンジニアやデザイナーに、これって僕らにとってはどういう言葉だっけ?ということを考えてもらい、みんなで噛み砕いてチームバリューを定義していきました。また、それを体現している行動を定期的に称えたり、逸脱した行動にはここはバリューに即していないよと正すようなコミュニケーションを意識しました。自分の価値観で語らずに、チームとして大事にするものを軸に語るということを心がけています。
結果、どうなったかと申しますと、HRに協力してもらいチーム状況をスコアリングしてもらったところ、「概ね血が止まったね」ぐらいの点数まではつくようになりました。
あとは、これは個人的にめちゃくちゃ嬉しかったところですが、朝会のテーマを毎日担当を割り振って出してもらっているんですが、その中で大喜利をやろうみたいな空気が出てきたんですね。
「今日、大喜利をやってみましょう」って結構勇気がいると思うんですよ。無謀なチャレンジも提案できるのが心理的安全性なんだと思ってるので。こういったことも出るようになってきて、だいぶ雰囲気が良くなったと言えるんじゃないかと。

リデザイン期

その後、セカンドステップとして作り直すというところをやりました。大きかったのが代表の金谷の援護射撃です。代表の金谷自身のスタンスがガラリと変わり、プロダクトが大事だということを上から言ってもらうことで「会社としてプロダクトドリブンでやるんだ」という意思をチーム内外で共有できたと思います。
あとは、メンバーの役割をちゃんと自分たちで考えてやっていくんだよという意識改革をやっていきました。他社さんと比べたら今更感ありますが、スクラム開発を導入したり、ちゃんとユーザー様、オーナー様に向き合ってプロダクトを一歩ずつ作っていくっていうサイクルを生み出していってます。
代表のスタンスの変化はnoteとかでも発信しています。プロダクトに向き合うんだ。僕らはそれで事業を成長させるんだ。というのを社内外でも言ってもらえるようになりました。

既存産業DXのスタートアップだと、会社のボードメンバーがプロダクトのことを分かっていないこともあるので、こういったスタンスの変化やそれを伝えるということは非常に大事だなというのを改めて思っています。

成長期

成長期に入り、もっといいチームにしていく為に、プロダクトのロードマップの策定を今やっています。プロダクトのロードマップを作るのに必要なTechのロードマップも合わせてつくっています。そうすると今のアーキテクチャってどうすべきだっけみたいな話を議論するようになり、そこからフォーメーションに落としてこういう組織にしていかないといけないよね。と話をしています。Product戦略などの上流から足元の開発体制までしっかり考えられるように今はなってきたかなと思ってます。

まとめ

整理すると、まずは心理的安全性を確保しましょうというところから始まります。次にトップダウンの改革もやっぱり必要というところがあります。下から突っついたりすることも大事ですし、社内の力だけだとなかなか難しかったりもするので、外部の協力を得ながら意識改革を進めていくということも重要かなと。そして、ワクワク感は大事ですよね。自分達のプロダクトはどんな未来を作っていくのかをわかりやすく示すこと。既存産業DXは社会が変わっていくというインパクトをもたらしやすいと思っているので、そういったワクワク感は大事にしたいです。

Q&A

Tebiki 渋谷和暁氏(以下、渋谷):ありがとうございました。こんなリアルな生々しい話を聞ける機会はないので、すごく貴重ですし、楽しかったです。ありがとうございました。
「メンバーの役割と意識改革スライド内のグラフの推移が気になりました。」差し支えなければ追っている数字をご教示いただきたいですということで。
井上このグラフ(下記イメージ右図)が何かというと、とある機能のユーザー数、申し込んでいただいてるユーザー数の伸びです。

これ自体は事業として重要なKPIではないものなんです。なぜ重要なKPIではないところから取り組んだかというと、改善して結果が出やすい課題だったからです。何かを開発して事業にインパクトを出していくことはもちろん大事ですが、いきなりは難しいので、小さな成功体験を重ねていくためにイージーな課題から取り組んで実際に結果を出せました。それを重ね自信を持つことで本格的にしっかりとKPIを追いかけて事業・プロダクトを大きくしていけるチームになると思います。準備体操として小さなKPIに取り組むことをやっていました。
ご清聴ありがとうございました。
是非また次回のイベントでお会いできることを楽しみにしています。


ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございます!
様々な壁を乗り越えてきたakippa社。実はQ&Aは上記以外にもたくさんいただきましたが時間の関係上お答えできませんでした。ぜひ更に気になる方は直接井上氏へご連絡してください。
akippaにご興味をお持ちの方はこちらをご覧ください。

Startup Tech Live

Startup Tech Liveのテーマは「エンジニア組織のグロースに必要な知見の流通」です。

運営元であるGlobis Capital Partnersは、国内巨大産業のアップデート(DX)や日本発グローバル展開を志すスタートアップへの投資を行うベンチャーキャピタルです。我々は、国内産業の更なる発展の可能性や、それを強力に推進するテクノロジーの力を信じています。

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