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資金調達を実施。『Techpit』 開発の裏側にはスタートアップスタジオ

ガイアックススタートアップスタジオは、出資先に「事業開発支援」「エンジニアリング支援」「バックオフィス関連支援」を行なっています。

今回は、CtoCのプログラミング学習プラットフォーム『Techpit』を運営する、株式会社テックピット代表取締役CEOの山田晃平さんと取締役CTOの前山大次郎さんに、エンジニアリング支援を行う株式会社ガイアックス技術本部長の佐々木がインタビュー。
ガイアックススタートアップスタジオの技術支援の裏側に迫ります。

● 株式会社テックピットとは
現役エンジニアが執筆した学習コンテンツを用いて、アプリを作りながらプログラミングスキルを磨くことができる、CtoCのプログラミング学習プラットフォーム『Techpit』を運営。
2019年9月26日に、F Venturesなどを引受先とする第三者割当増資により、 総額3000万円の資金調達を実施したことを発表したばかり。
2018年7月創業。

集合者sん

山田
Techpitは、2018年10月にサービスをリリースしました。
「プログラミング言語の文法を初歩から学べるサービスはあるが、その次のステップとしてプロダクトの作り方を実践的に学べる場所がない」というユーザーの課題に着目し、プロダクトを作りながらプログラミングを学ぶことができるサービスのプロトタイプをTwitterで公開したところ、ローンチ初日に1000人もの登録者が集まりました。

山田
そこで初期フェーズでは開発よりも課題の仮説検証を優先するため、外部のCMSツール(コンテンツ管理システム)を使って教材を作成しリリースすることを最優先として始めました。そして徐々にユーザーがついてきたところで、2つ改善したいことがありました。
ひとつは、Techpitチームの運用フローです。ユーザーが作成した教材をGitHubに上げ、手動でシステムに移行するというフローで、あまりに効率が悪いので改善したいと思っていました。
もうひとつは、ユーザー体験です。あるツールを使っているとそのツールに依存するため、自分たちでやりたい仮説検証やカスタマイズができません。そのため、独自に開発をしたいと思っていました。
この2つの解決したい課題があり、最初は知り合いに副業として手伝ってもらうことで開発を進めました。しかし、あくまで副業。それぞれ本業があるため週1~2ペースで数時間お願いする4~5人の副業メンバーが集まっていたのですが、思うようには開発が進みませんでした。どうしよう?と思っていたところで、ガイアックスのスタートアップスタジオという仕組みにお願いすることにしました。

佐々木
ガイアックスの開発部は、スタートアップスタジオの出資先にエンジニアリング支援を行なっています。Techpitには、開発部から菊池がプロダクトマネージャーとして付き、WEBの開発支援を開発部のメンバー全体で行っています。
プロダクトマネージャーは、隔週で1度プランニングのためのミーティングを行ってプロダクトバックログを作っています。具体的には、どんな機能を実現するか優先順位を確認し、どういう状態で中身を作りたいかをひとつひとつ確認して、2週間分の開発するものを決めます。
そして週次で進捗報告のミーティングを行い、1週間ごとに実装したものを共有します。
開発支援は、属人的にならずに支援する体制を用意し、開発部全員が対応できることを目標にした体制を組んでいます。そうすることでエンジニアにもノウハウが貯まり、この人がいなくなったらテックピットの開発はできないという状態にはならないように配慮しています。

山田
週1~2ペースで数時間コミットできるメンバーが4~5人いる状態から、2人のベテランエンジニアがフルコミットではりつきで開発をする体制に変わったため、開発スピードはおよそ5倍向上しました。
それまで「この機能の開発はいつ終わるんだろう」という不安からもやもやする気持ちを抱くことがありましたが、Gaiaxの開発メンバーに任せてからは、作業の見積もりを立てて完成目安を伝えてもらうことができ、さらには僕らがその開発のマネジメントに関わる必要がなくなったため、余計なもやもやを感じることなく、事業づくり、事業のグロースに集中することができるようになりました。

佐々木
支援する上で、開発部でこだわっているポイントは、プロダクトマネージャーが、事業のフェーズや事業課題から何が必要なのか、どこまで作りに行くべきかという合意形成を取ることです。初期フェーズのスタートアップにおいては、特に重要だと思っています。
合意形成のための議論で、思い出に残っているものはある?

前山
サービスをはじめた初期は、執筆者も学習者も一気に欲しいという気持ちがありました。
そこにプロダクトマネージャーの菊池さんから、「本当に学習者側は必要なの?」と質問をもらい、そもそもどういった教材が分かりやすいのかを分かっていない状態で学習者側を作成しても作り直しになるのではないか、と議論しました。
このように、僕らの気持ちが先走り、僕らとしては「こういうことをしたほうがいいのではないか、これを作ったほうがいいのではないか」と提案したものに対して、本当に必要か?なぜ作るのか?を深掘りしてもらうことができて冷静な判断ができることがよかったです。そうしたやりとりを経て、はじめは執筆者側を先に作ろうとなりましたね。
今は半年以上やってきているので、菊池さんとの間で合意形成はしっかり取れていて、うまく進んでいます。

前山さん

佐々木
合意形成をするときは、プロダクトマネージャー側でモック(サンプル画面)を作っていき、モックをもとに「この機能は必要かどうか」などを話し合っています。
先ほどの「先に執筆者側をつくる」という意思決定のように、仮説検証をしながら全ての機能をつくりきらずに、状況を見て必要な機能を優先して作成するMVP( Minimum Viable Product)の考え方です。サービスとして必要最低限な実装とユーザーが価値を感じるために重要な機能だけがあるプロダクトになります。仮説検証のためのプロダクトをつくるときはこのMVPの手法を用いています。
開発部に任せてみて、どう?

前山
テストがしっかり書いてあったことが非常に嬉しかったです。
スタートアップだと人の入れ替わりが激しいですが、コード上にあるテストが設計書代わりになって、なんとなく仕様が分かるというメリットがあります。それに最初からテストがあると、「あ、テスト書かなきゃいけないんだな」って気持ちになりますね。
今はホスト側のサーバーサイドを開発部からテックピットの副業メンバーに引き継ぎましたが、今もガイアックスのエンジニアの方が書いたテストを参考にして、テストを書く習慣は続いていますね。
こうした、その場しのぎの開発ではなく、後で使う人たちにも役に立つ形で開発してくださったことが嬉しかったです。

佐々木
それは素直に嬉しいフィードバックですね(笑)
もしガイアックスのスタートアップスタジオがなかったとしたら、2人はどこかのメガベンチャーに就職して出会って、2人でテックピットを立ち上げていきたいというプロセスを踏む時、どうやって挑戦していたと思う?

山田
数年働いてから、辞めて起業しようとしてると思います。

前山
最初は僕らお金を持っていないので、起業しようと思ってもできなかったんじゃないかなと思います。売り上げが立つまでの資金もないし、どこからかお金を借りるという手段しかなかった。

佐々木
アイデアベースで投資してくれる人はなかなか見つけづらい?
開発はどうしてたと思う?

山田
アイデアベースで投資してくれる人は見つけづらいですね。開発も、2人で仕事が終わった後や週末に、少しずつ進める感じだったと思います。
そう考えると、2年くらい捲きのスピード感で、求めていた起業を実現できてると思います。それを実現するチャンスをくれた、ガイアックススタートアップスタジオの仕組みと開発の支援はとてもありがたかったです。
直近、総額3000万の資金調達をしましたが、VCを巻き込んでいくにあたり、「上場企業(ガイアックススタートアップスタジオ)が開発支援までしてくれるのはいいね!」という驚きはいつも持たれていましたね。

佐々木
資金調達した後もMVPの開発支援に止まらず、スタートアップが手が回しづらいオフィスネットワークやセキュリティ、社内インフラなど、技術が必要ところは継続的に支援していきたいと思っています。
今後も引き続き頑張ってください!

ラスト