医療機器の購入時に気を付ける事 (安く購入するために)

病院はもちろんのこと、クリニックの開業時にもそれなりの医療機器を購入することになるかと思います。

医療機器では、メーカー、医療機器商社(卸)があり、普通は開業医が直接メーカーから医療機器を購入することはできません。

そもそも卸の機能として、1:調達/販売の機能、2:物流機能、3:与信管理の機能などがあります。

特にクリニックにおいては、個人開業であるために倒産のリスクがあります。

3:与信管理の機能が主たる理由であると考えてよろしいかと思います。

今回はクリニック開業時に医療機器を買う場合に焦点を置いて安く買う秘訣、業界お作法的なものを紹介したいと思います。

【寵愛】

呼び方は様々でしょうが、メーカーの寵愛という言葉があります。

メーカーが特定の医療機器商社だけに特別に安く見積もりを出すということです。

この特定の医療機器商社というのは、A社だけ、B社だけと決まっているわけではなく、一次卸の特約店の中で、一番最初に案件として情報を持ってきた、もしくは見積もりを出した先であるということです。

医療機器の業界では、情報優先が原則になっていて、メーカーは一番最初に話を持ってきた先とタッグを組みます。

他の業界でも同じことは多々あるかと思います。

例を挙げますと、

AクリニックでB社のエコーを買おうという計画があります。

カタログをたまたま訪問してくれていたC社さんにお願いしました。

できるだけ安く買おうと思い、付き合いのある卸業者さんD,E社に見積もりをお願いしました。

見積もり依頼は、最初にカタログを持ってきてくれたC社さんに、その翌日訪問してくれたD社さんに2番目に、E社さんには1週間後に見積もりをお願いしました。

それぞれのC,D,E社は依頼を受けて即日B社に連絡を取り見積もりを取り、Aクリニックに見積もり提出。

その流れでいいますと、ほぼ確実にC社が安くなると思います。

数値は適当ですが、イメージとして、メーカーであるB社は、C社には定価の20%引き、D,E社には定価の10%引きで見積もりを提出します。C社は、定価の11%引きで見積もりを提出すると100%D,E社の見積もりよりも安くなるというわけです。

ここから、さらに値引きをお願いしたとしても、メーカーの出している価格が下がらない限りは卸の利益幅を削って再提出になるだけですので、正直あまり大幅な値下げ交渉はできません。

なので、実はカタログを依頼する相手、見積もりをお願いする順番だけでも卸業者の立場から言うと値段は決まってしまうのです。

【1メーカー1ディーラー】

公的な組織のとある病院では、医療機器を購入する際には、同種同行品を入札にかけるという手法を取ります。

上記の寵愛という仕組みを理解しているためです。

一番欲しいコレ!という商品が決まっている場合には有効ではありませんが、エコーなどの場合は、同等品がある場合が多くあります。

メーカーA&卸業者B、メーカーC&卸業者D、メーカーE&卸業者Fのように、メーカーごとの価格競争、卸業者も入札に勝つために利幅を薄くするという競争原理が働きます。

そうでない場合には、卸業者Bが、メーカーA、C、Eすべてに最初に声をかけ、卸業者Bがすべての提出価格のコントロールをしてメーカーには安く値下げさせ、クリニックや病院にはさほど値下げせずに販売することが可能になります。

【メーカーに最初にコンタクトする】

卸業者が間でいろいろ操作するから安くならないのか?という考えに行き着くこともあるかと思いますが、実はそうでもありません。

メーカーに直接コンタクトを取り、商談をし、購入したい商品構成をしてから卸業者に見積もりを出すパターンもあります。

その場合、メーカーは卸業者すべてに同じ金額で見積もりを出します。

すでに自社の製品が第一優先で進んでいると思えば、卸業者にも安く金額提示する必要はありませんので、高止まりします。

購入の打ち合わせをするご本人が医療機器の購入、販売の経験値が豊富で金額相場などに詳しい場合は、より強力に値下げ交渉ができるかと思いますが、たいていは難しい事と思います。

【安く買うための推奨パターン】

まずは、同種同行品を調べることです。

できれば3つくらいの同種同行品を扱うメーカーのなかから、一番安く見積もり提示をしてくれた機器を購入するというストーリーを作ります。

この時、上で説明した「1メーカー、1ディーラー」に見積もりをお願いします。

別々の業者さんに見積もりをお願いするので手間は多少かかりますが、この程度の手間であればやったほうがお得になる可能性は高くなります。

3社の見積もりがそろったところで、交渉開始です。

卸業者もメーカーも日常茶飯事で競合していることが多いので、嘘をつくとすぐばれますが、嘘ではない範囲の交渉として
・「御社の製品が一番機能性が高くていいと思っているんだけど、他社さんの見積もりが安く魅力的で、悩んでいる。もう少し安くなりませんか?」

・「御社の出してくれた見積もりが一番安いんだけれど、他社は別の機能も有している。そのアドバンテージの分値段でもう少しメリット出してもらえませんか?」

・「各社の見積もりを比較しているのだが、値段も機能の横一線で決め手に欠け、悩んでいる。何か特典やキャンペーンみたいなものあったりしませんか?」
こんな交渉をしてみるのが良いと思います。
ポイントは、もう一押しで他社に勝てると思ってもらうことです。

おそらく、さらなる値引きであったり、オプションをサービスしてくれたり何かのメリットを提示してくれるでしょう。

気を付けるべきポイントは、「他社はこの価格にしてくれたけど、御社はどこまで下げてくれるの?」とか、「(根拠なく)高いから安くしてくれ」という交渉の仕方です。

メーカーも卸業者も今までの販売価格は競合他社の金額含めデータをとっていますので、あまりにしつこい値段交渉をするとクリニックの評判を下げることにつながるでしょう。

また、根拠のない値下げ交渉は、知識がないことをアピールしてしまうようなものなので、あまりお勧めできません。


理想的なことは、利害関係者以外に医療機器購入の相談に乗ってくれる人が近くにいることが望ましい事です。

ただ、コンサルなどに相談してしまうと、キックバックを裏で要求していたりして結局割高になってしまうこともありますので、注意が必要です。




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