病院における同種同効品の選定

医療機関で使用する医療機器やその他消耗品、ITツールなどでは、多くの場合、「同種同効品」が存在します。
例えば、注射の時の注射針でも、主要なメーカーでもテルモ、ニプロ、トップなどがあります。

10数年前に医療機器商社に勤めていた時の知識ではありますが、当時ではメーカー営業からはニプロの注射針は金属部分にシリコンを塗ってある分、挿入や引き抜きがスムーズであること、逆に留置するような針では抜けやすいことがメリットデメリットあるが特徴であるという話を聞いたことがあります。
本当にそうなのかは、カタログなどに書いていなかったですし、調査もしていないのでわかりません。

ただ、違いといってもほとんどわからないレベルの話なので、ほとんどの病院では価格面での選定になります。

中小規模病院ではともかく、自治体病院などでは「共同購入」という仕組みによって複数病院で1年間に使用する予定数量に対して、いくらで納入をするのかという入札の方式がとられます。

これにより同種同効品であれば、価格による競争原理が働くということです。

ただ、それ以外にも、「指定品」である場合も多数存在します。
また、針の例で言うと、G(ゲージ:針の太さ)毎に色分けをされていることが多いのですが、その色であることを院内でチェックするために認識を合わせていたりします。
色が変わったら、現場のスタッフが混乱してしまうので、そういった人為的なミスを犯さないよう同種同効品であっても「指定品」とする場合があります。

そもそも、医療材料などにおいては、大規模病院であればあるほど、使用数も多くなり、単価は安くとも総額ではそれなりに大きな金額になります。
また、同種同効品が院内に多数存在する状況だと、在庫管理が複雑になったり、発注管理も複雑になります。
そのほか、使用数によるボリュームディスカウントの恩恵も少なくなり、患者さんやスタッフがそれぞれ適切なものを選択できるというメリットをデメリットのほうが上回ることになります。

点滴のルート(チューブ)、特に閉鎖式輸液セットでも1品目を指定して院内で使用するケースがあります。
むしろ統一メーカーにする場合のほうが多いと思います。
閉鎖式輸液セットというのは、チューブ、輸液バック、三方活栓、留置針を組み合わせて使用します。
そのジョイント部分が閉鎖式であるという意味ですが、ジョイント部分がシリコンゴムで密閉されています。そのゴムにはスリット(切れ目)があり専用のジョイントをはめるとそのスリットが開き、空気に触れることなく輸液の投与が可能になるので、感染防止に役立つ製品です。
これについては、メーカーによってジョイント部分の構造に違いがあり、製品を選ぶうえで考慮するポイントです。
デッドスペースという投与されずに輸液ルート内に薬液が残ってしまうというのもメーカーによって多少の違いがあることもポイントになってきます。

ヒューバー針の例
ヒューバー針というのは、CVポートに穿刺するための専用の針です。
CVポートという血管内にカテーテルを留置させ、かつ、いちいち血管に穿刺せずとも抗がん剤などを投与できるようにしている医療機器です。
体内にカテーテルとポートを埋め込み、ポート部分を狙って針を刺し、薬剤を投与します。
ヒューバー針は入院や外来では看護師が穿刺しますが、場合によっては自宅で患者さん自身か家族が穿刺するケースもあります。
そのため、使いやすさももちろんですが、なるべくシンプル、安全、間違うリスクが一番少ないものという点で、選択します。

要するに、看護師にとって使いやすいものではなく、使いにくさがあったとしても間違わないものという点を重視するということです。

院内で使用するペーパータオルもよく検討に上がるものです。
院内での使用数量が非常に多いので、少しの単価ダウンが総額に換算すると大きく変わることがあるからです。
1枚組か2枚組。柔らかいか硬いか。耐久性、吸水性がどうか。という点と価格です。

紙ごときと思うかもしれませんが、意外とアンケートを取ったりすると人気があるのはやはり柔らかく耐久性がある紙が好まれます。
意外と、硬めの紙のほうが手のしわにたまる水分を取れたりするので、硬い紙のほうが目的を果たしてたりすることもあります。

そんなわけで、
1:だいたいの製品には同種同効品が存在する
2:同種同効品を比較、見積もり合わせすることで価格が下がる
3:使用する人のことを考えたときに一番有用なものはなにか
4:価格や機能よりも、安全性や間違った使い方を防止することを優先することもある
というようなことでまとめとしてみます。


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