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NFTプロジェクトの栄枯盛衰 — フロア価格推移の定型パターン

NFTプロジェクトの成長は、継続するのか?

世界的なNFTの急拡大から1〜2年が経過し、これまでに数多くのNFTプロジェクトが勃興し、「成功例」が喧伝されてきた。一方で、その実態はどうなっているのだろうか。NFTプロジェクトが、どのように成長するか、また、その成長要因は何かを本レポートで考察する。

論点
1. NFTプロジェクトのFloor Price (=コレクション内の最低価格)はどう推移するか?
2. NFTプロジェクトの継続的な成長にはどのようなことが必要か?

データの取得方法
【 対象 】
・OpenSea上の取引総額上位100のNFTプロジェクトを対象
・対象プロジェクトの内、例外ケースを除いた、全91プロジェクトで調査
【 期間 】
・Mint日から6ヶ月の期間 
【 価格データ 】
・上記期間について、1ヶ月区間ごとに、区間内の最低価格をFloor Priceとして取得
・各コレクションのMint Priceを取得 

NFTの成長継続期間とプロジェクト成功のための秘訣

1. Mintから1ヶ月までは価格増加するが、4ヶ月以降も継続するものは僅少

NFTプロジェクトの価格推移の傾向を明らかにするために、各プロジェクトにつき、Mint日から連続して増加した月数を集計したうえで、全体の何割が価格増加を継続するかを調査した。

上のグラフを見てみると、調査した91のNFTプロジェクトのうち、Mint Priceから1ヶ月目までで価格上昇するプロジェクトは、全体の80%であった。大半のプロジェクトがMint Priceよりも高いFloor Priceに価格が高騰しており、プロジェクト開始初期段階において価格が増加しやすい”バーゲン効果”があるように見える。一方で、2ヶ月目までFloor Priceが上昇し続けるプロジェクトの数は全体の35%であった。このことから、NFTプロジェクトはMintから2ヶ月ほど経過すると価格減少に転じる、つまり、前述の”バーゲン効果”はMintから1ヶ月で効果がなくなる傾向にある。

“バーゲン効果”終了後については、多くのプロジェクトが価格減少に転じ、4ヶ月目で価格上昇を継続するプロジェクトは6%のみであった。このことから、プロジェクトの存続のためには、”バーゲン効果”が期待されるMint直後の1ヶ月間だけでなく、3~6ヶ月後を見据えた布石が必要と考えられる。


2. 継続的なNFTプロジェクトの運営のために

ここまでNFTプロジェクトには”バーゲン効果”が存在する可能性があることが分かり、概ねその期間はMintから1ヶ月程度しか持続しないことがわかった。ではこのように”バーゲン効果”に左右されず、継続的にNFTプロジェクトを運営していくためにはどのようなことが必要なのだろうか?ここではある2つのプロジェクトを比較することで、そのヒントを探る。

“バーゲン効果”後にも価格増加を継続するBoss Beutiesと”バーゲン効果”をピークに価格減少したCoolman’s Universe

ここでは、0.05-0.10ETHのMint価格帯のプロジェクトから、Mintから5ヶ月にわたって価格増加が継続していたBoss Beautiesと、”バーゲン効果”期間を境に価格減少に転じたCoolman's Universeを比較して、命運を分けた要因を考察する。

上図から、”バーゲン効果”終了後に両プロジェクトがとっている方針には違いがあることがわかる。まず第一に挙げられる違いはBoss BeautiesはCoolman's Universeと比較して、規模の大きな場所で自プロジェクトのアピールをWeb3関係か否かを問わず行っている点だ。Boss Beautiesを見てみると、”バーゲン効果”によるFloor Priceの低下こそ無いものの、Mintから3ヶ月後時点まででそこまで大きなFloor Priceの向上は見られない。しかし、Veecon 2022への代表登壇決定や、国連での作品展示のあとのタイミングで、Floor Priceの向上が見られる。一方のCoolman's Universeは、クロックスとのコラボレーション動画の公開を除いて、あまりWeb3界隈外でのアピールや、大規模なカンファレンスでの発表が見られない。このことから、界隈の外にも訴求できるようなブランドを育成していく活動が成功の一因として考えられる。

加えて、Coolman's Universeがトークンの追加付与を行っているが、これは効果がないのだろうか。当時のCoolman's Universeは”バーゲン効果”後のFloor Price低下の後、創業者が起訴されるというショッキングな報道を経て、Floor Priceの伸び率が横ばいとなった。その後、ホルダー向けの追加ドロップを発表したが、結果的にFloor Priceの大幅な低下が起こってしまった。トークンの追加付与は、NFTプロジェクトとしては一般的な施策で、プロジェクトの認知向上およびホルダーのエンゲージメント向上を目的として行われるが、”応急措置”としての場当たり的な使い方はむしろブランドを毀損する恐れがあると考えられる。

一過性の流行に踊らされることなく、中長期的な目線をもって地道にプロジェクトを推進することが、NFTプロジェクトの成功には重要

これまでにMint直後の価格増加がMintから1ヶ月程度しか継続しないこと、そして、その後はほとんどのプロジェクトが価格上昇を継続できない可能性があることが分かった。さらに、Coolman's UniverseとBoss Beautiesとの比較からは、Floor Priceの継続的な上昇には内輪に閉じた施策にとどまらず、中長期目線でブランド価値を向上していく施策群が必要であることが分かった。

NFTプロジェクトの成功のために魔法のような方法はない。NFTだから、というだけの理由で成功することは難しいだろう。一過性の流行に踊らされることなく、中長期的な目線をもって地道にプロジェクトを推進することが、NFTプロジェクトの成功には重要なのではないだろうか。


古河 耀元
経営企画部

KEARNEYのコンサルタントを経てスタートバーンに参画。かつては薬学徒として病気を治療する“万能薬“を志すも、洋の東西を問わぬ思想に耽溺するうちに、思考を一変する“一滴の猛毒“が憧憬の的に。アートの毒性にテクノロジーを調合し、人類に絶えず内省をもたらす良薬を創りたい。東京大学薬学部薬科学科卒業。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修了。

市川 慧
インターン
神奈川県出身。大学で複雑系科学の勉強をする傍ら、美学を趣味で勉強するうちにNFTに関心を持つように。オープン間もないFabCafeNagoyaでアシスタントを経たのち2022年4月にスタートバーンに参加。 自身の研究内容であるDeepFakeとNFT、それから芸術の結合点を探っていきたい。名古屋大学情報学部自然情報学科卒業 東京工業大学環境社会理工学院技術経営専門職学位課程在学中。


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