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BEST NGC天体(夏の天体-1)

 CMOSカメラを使った電視観望でメシエ天体並みに楽しめる NGC天体です。星図は Guide を使用。
使用機材
 ・Vixen R200ss(D=200mm、fl=800mm、コマコレクター)
 ・ASI183MC+UV/IR Cut filter
 ・ASI Studio(ASI DeepStack)、Gain=高(270)、Binning=3、15秒

星図6(はくちょう座付近)

1.はくちょう座 NGC 6819(Collinder 403)

 こと座ベガとはくちょうγの中間に位置する散開星団。10~12等星が20個、さらに多くの暗い星が集まっていて見応えがある。星団の左上の恒星は6.2等、左下は6.8等。星団全体は7.3等で。
 大きな口径の望遠鏡で肉眼で見ると、耳がとがった動物の頭に見えるという。「Foxhead Cluster」という愛称があるが、「キツネの頭 星団」と訳して良いのだろうか。Stellariumは「Octopus Cluster(タコ星団)」とも表示。

NGC6819

2.はくちょう座 NGC 6888(Cardwell 27、三日月星雲)

 「三日月星雲」「耳 星雲」の愛称のある散光星雲。7.4等と言われるが、赤い星雲なので肉眼では見えず、赤の感度の高い CMOSカメラでスタックして天体像が浮かび上がる。
 星雲の円弧の中央にある7.5等星(スペクトル型O3)がWR星(ウォルフ・ライエ星)WR 136で、この星が赤色巨星の時の40万年前に放出された速度の遅い恒星風に、WR星の高速の恒星風が衝突し、その衝撃波が殻状になって赤く光って見えているもの。差し渡し25光年あるという。赤く見える水素原子の星雲の外側は、酸素原子の殻状の青い星雲が覆っている。
 WR星は大質量星の最後期。最終的には超新星爆発を起こして、星雲もろとも無くなってしまう。

NGC6888

3.はくちょう座 NGC 6960(Caldwell 34、網状星雲-西)

 網状星雲は、数万年前に爆発した超新星の残骸で、ガスは毎秒100kmで広がっている。そのフィラメントの西側が NGC6960 で、「Witch's Broom Nebula(魔女のほうき星雲)」の愛称がある。
 超新星爆発で放出された衝撃波が宇宙の中を突き進み、恒星間物質を押し流して励起し、酸素原子が青く、水素原子は赤く発光して見えている。

NGC6960(左が北)

4.はくちょう座 NGC 6992/5(Caldwell 33、網状星雲-東)

 網状星雲の東側にはいくつかのカタログ番号が付けられている。北側が NGC6992、中間が NGC6995、南側の広がっている部分は IC1340。

網状星雲の各部名称(wikipediaから)
NGC6992(左が北)

5.はくちょう座 IC 5070(ペリカン星雲)

 はくちょう座の尾部、1等星デネブの西側に見える、散光星雲と暗黒星雲の入り交じった大きな塊の一部。暗黒星雲で区切られた西側がペリカンに見えることからこの名がある。東側は北アメリカ大陸のメキシコ湾周辺に見えることから北アメリカ星雲と呼ばれる。見える部分が分れているが、同一の星間雲が暗黒星雲で分れて見えるもの。
 ペリカン星雲には2つの IC 番号が振られている。ペリカンの顔の部分が IC5070。その西の、特に明るくも無い所が IC5067 とされている。なお、ペリカン星雲の南にある明るい部分には IC5068 が振られている。

ペリカン星雲と北アメリカ星雲(fl=400mm)

6.はくちょう座 NGC 7000(北アメリカ星雲)

 ペリカン星雲の東にある、北アメリカの(フロリダやメキシコ周辺の)形に見える星雲。実際は隣のペリカン星雲を含む大きな星間ガスが暗黒星雲で分れて見えるもの。暗黒星雲には Lynds’ Catalog of dark Nebula から LDN934 が振られている。
 北アメリカ星雲は、星雲部分が NGC7000。上の画像(fl=400mm画像)のフロリダ半島の上にある星団が NGC6997、その北に NGC6996 の星団「Bird's Nest(鳥の巣)」がある。

ペリカン星雲と北アメリカ星雲(fl=800mm)

7.はくちょう座 IC 5146(Caldwell 19、まゆ星雲)

 はくちょう座とカメレオン座の境界近くにある散光星雲。星団と重なって見え、IC5146 と呼ぶときは星雲を、Collinder 470 と呼ぶときは星団を表わす。星雲は3300光年、星団は4000光年の距離。
 IC5146 は、星形成が進行している星の苗床。赤い星雲は9.3等の中心星による輝線星雲。水素を電離させる紫外線を放射する恒星は、スペクトル型ではO型とB型(B型では B0 と B1 の一部)に限られる。IC 5146の中心星(9.3等)は B1型星で、散光星雲になれるぎりぎりの量。
 まゆ星雲の中心星の 10" 右(西)にある A0型星の周囲に青白い星雲(vdB 147)があり、これは反射星雲。(vdB、van den Bergh カタログ)
 暗黒星雲 Barnard 168 と重なって見えるため、赤い星雲から西に暗い帯があるように見える。ESAのハーシェル宇宙望遠鏡の観測では、暗黒星雲とまゆ星雲は繋がっているように見える。

IC5146

8.こぎつね座 NGC 6823 と Sharpless 86

 こぎつね座の、有名な亜鈴状星雲より西側にある散開星団と散光星雲。星雲は Sharpless 86 という大きな星雲で恒星が生まれている現場。そこから生まれた星団 NGC6823 の近くが明るく見えている。
 星団の右下の14等星の周囲を星雲が包み、その部分が NGC6820。

NGC6820
Sharpless 2-86 全体像(南が上)
https://www.astrobin.com/pf2ze0/D/ から)

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