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本と映画と日々のこと。

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最近の記事

卵を割ってしまった時に読む話。

卵のパックを持つのはいつも私の役目だった。家までの道のりは、ガタガタしていて、卵が割れてしまうから。 袋の詰め方が甘いとか、クッション性がないとかそういうんじゃなくて、私に持たせた方が楽だったのだろうと思う。卵の安売りの日はたいてい私も買い物に連れていかれた。 時々、こうやって思い出すことがある。過去の記憶の断片が、まるでくじで当たりを引いた時みたいに、ひょいっと現れる。 そして私は探るのだ。物心ついた時から、最近のことまでの中で、その記憶がどこからきたのかを。 私は、卵

    • 正義は世界を変えられるのか? ー映画『罪の声』が伝えるものー

       2020年公開の映画『罪の声』を鑑賞した。原作は、塩田武士さんの『罪の声』(講談社文庫)。以前、この作品を読んだことがあるのだが、実際にあった未解決事件を題材にしたこの作品のあまりの緻密さに、途中で断念してしまった。先日、Netflixでこの映画を見つけ、観てみることにした。 あらすじ  新聞記者の阿久津英士は、既に時効を迎えた未解決事件を追うことになる。それは、35年前、食品会社を標的とし、誘拐や身代金の要求、毒物混入などで警察やマスコミを挑発した事件だった。  一方

      • 「人生のバイブル」を持つということ

        あなたには、「人生のバイブル」と言える特別な本がありますか?これは、私の人生を支える1冊と出会った奇跡と軌跡の記録です。 #1 アンとの出会い私が初めてその本に出会ったのは、小学校低学年の頃。休み時間ともなれば、図書館へ行って本を読む、そんな子でした。ある日、母は私に、1冊の外国文学を薦めてくれました。タイトルは、『赤毛のアン』。 さっそく図書館から借りてきて読んでみましたが、ちっとも面白くありません。最初の数ページで(まだ主人公のアンが登場する前に)お手上げ状態でした。

      卵を割ってしまった時に読む話。