卵を割ってしまった時に読む話。
卵のパックを持つのはいつも私の役目だった。家までの道のりは、ガタガタしていて、卵が割れてしまうから。
袋の詰め方が甘いとか、クッション性がないとかそういうんじゃなくて、私に持たせた方が楽だったのだろうと思う。卵の安売りの日はたいてい私も買い物に連れていかれた。
時々、こうやって思い出すことがある。過去の記憶の断片が、まるでくじで当たりを引いた時みたいに、ひょいっと現れる。
そして私は探るのだ。物心ついた時から、最近のことまでの中で、その記憶がどこからきたのかを。
私は、卵