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宇宙に鳴る潮騒

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宇宙に憧れ、星を愛し、それを糧として生きる人たちの群像劇です。少しずつ更新していきます。少し、切ない。そんな気分になりたいときにおすすめです。一話完結ですのでお気軽にどうぞ。
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#短編小説

星のラブレター

私は古い灯台の上にいた。写真部の私は星空の写真が撮りたくて、新月の夜にはこうして家を抜け…

星見さとこ
4か月前
5

投影機が照らすもの

学芸員の彼は小さなプラネタリウムに勤めている。 ベッドタウンの脇に建てられたその施設は、…

星見さとこ
6か月前
1

星占いは嘘をつく

 少女は朝から極めて上機嫌だった。気が付けば鼻歌交じりで制服のブレザーに袖を通している。…

星見さとこ
6か月前

レンズの先に

 私は天体望遠鏡の修理職人として働いている。小さな工房を構えて、個人や団体からの依頼を受…

星見さとこ
6か月前
1

薔薇とロケット

 父はかつて東側で天才と呼ばれた科学者だった。彼の技術力は東側の政府から高く評価されてい…

星見さとこ
6か月前
2

流れ星の名前

 今日の夜は少し冷える。日付が変わる頃には、もっと外気温が落ちていくだろう。彼女はできる…

星見さとこ
6か月前
4

亡霊の帰還

 今度の8月のミッションを終えれば、もう二度とこのタラップを上がることはない。  彼にとって、最後のミッションになるはずだった。  彼のコールサイン ”Ghost” (亡霊) とは似つかない、地表の天候も、その先の状況も、これ以上ないというコンディションに恵まれた。  タラップに上がる直前、スタッフの配慮か、乗車シーケンス直前まで来てくれた妻と娘に別れを告げることができた。最初のミッションでは妻の胸の中で気持ちよく寝ていた娘も、涙を流しながら今度は自身の娘を抱えて彼を見送って