一番先に「脱獄」した同期

私の社会人時代について思い出されることがある。
新卒で入った時のIT企業の同期は私を含めて全部で10人。
全員性格は違うし、私がこれまで出会ったことないタイプばかりで

学生時代にアルバイトを経験していない私は
彼らとすら慣れ合うのが大変だった。

アルバイトを経験していれば、いろんな人間とのやりとりができたかもしれないよな。

私はそれすらやらなかったからな。当時は金に困ってなかったので。

当時同期が10人いたわけで、今回は一番最初に辞めた同期の話をしたいと思う。
彼は私の1個上で、牡羊座、双子座が入ってそうな営業マンタイプの人間だった。

気遣いができる男だったし。ただ勢いがありすぎるのが玉に瑕かな。

彼は会社にインターン生でアルバイトとして入っていたので
実質1年先輩みたいな存在だった。

内部を知っているので、私たちの誰よりも会社について詳しかった。
アルバイトで会社で働いていたわけだから。

彼は営業志望の人間で、正直誰がどう見ても営業マンにしか見えないタイプだった。

私から見てもそうで、そのどこでも切り込める積極性、
先輩方にできる気遣い力が羨ましいと思って、私は見ていたし

根回しとかそういうこともできるんで、彼に関してはどんどん出世していって、
営業部の営業マンの一角として活躍するのだろうな、

そして10年戦士なんて言われるんだろうな、

と見ていた。


多分それは私だけじゃなくて、彼を見ていた会社の同僚たちも同じだったと思う。
私は彼がどんどん出世の階段を登っていくのを横目に

3年以内に辞めるもんだと思っていた。

しかし結果として、私のその予測は外れてしまっていた。
結論から言えば、結果は全く真逆だった。

「私の方が生き残っていた」。

その理由を言えば、彼は志望する営業になれなかったというのでなく

「システムを売るのが無理だと感じたから」。

私の会社では、営業マンになる前に一度は開発を経験させる、
という方針で、新人は全員開発を経験させる方針だった
(私という例外がいたが)。

その開発の仕事で彼は挫折をしてしまったと聞いた。
彼の両親まで来て辞めるの辞めないのという事態に発展したと。
私はそんなこと全く知らなかった。
私が彼らのことを知っているつもりでも私は全然知らなかった。

私は彼らの印象だけで彼らの人生を判断していることに気づかされた。

私は周りの人間と会話できないというカルマを持っていたが
彼のカルマはまた違ったものがあった。

私は、コミュニケーションがちゃんとできる人間って
悩みがないもんなんだ、欲しいものは全て手に入れられるもんなんだ、

そう思ってたくらいだ。

彼に関しては私ができないコミュ力というものがとても優れていた。

彼は会社を辞めて保育士の仕事に従事したという。

「人は一人じゃ生きていけないが、突き詰めると一人」

結局人生の終末も「独り」で病院にいるわけだろうしな。
最期の最期まで誰かと一緒ではないんだ。

私たち同期世代というのは「やりたいことが見つからないが、
就職の時期がきちゃったもんだから、仕方なしに就職した」世代だった。
早く辞めることは間違いでもなんでもないと思う、むしろ羨ましいと思っていた。


私はいろんなところで「辞めた」人を見てきた側だった。

生き残ったことが多い側なもんで、それを伝える義務があんのかなと勝手に思った次第だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?