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#13 【新月企画:三題小説】

こんばんは。三十路を手前に、何かを発信したい(できれば友達がほしい)と思い、ポッドキャスト配信し始めた、りげりげと申します。

「星屑らじお」新月企画の『三題小説』、第13回も配信させていただきました。

三題小説とは、くじ引きで決めたワード3つをもとに、短編小説のネタを即興で考えるものです。

というわけで、配信内でお題を決めましたので、そのお題の小説をぽちぽち書いております。
もしよかったら、配信を聞いたのち、小説を読んで貰えたらうれしいです!
また、小説のお題をお待ちしております!番組フォームより、ぜひ、お送りください!

風船、こたつ、米

26日、商店街の風景は一気に正月模様だ。昨日がクリスマスだったとは思えないくらい様変わりが早い。
冬休みになって、こたつでぬくぬくしていた俺は、母ちゃんから「ちょっとは手伝え」と、こうして寒空の下、買い物に来ているわけである。
商店街恒例の年末のガラポン抽選会をやっているらしく、遠くからがらんがらんと鐘の音が聞こえてきた。

木枯らしが吹き付け、俺はポケットに手を突っ込んだ。
突っ込んだ手の先には、抽選券が4枚。
5000円分の買い物をすると1回ひけるこの抽選会のために、母ちゃんが集めた抽選券をもらっている。今日の買い物を含めて、5回引ける予定だ。「3等、お米大当たりー」
一際大きな声が聞こえる。
母ちゃんに当ててこいと言われた米は、残すところあと1つのようだった。

俺は手早く買い物をすませ、そそくさと抽選会の列に並ぶ。
今日から始まったばかりの抽選会には、近所のおばちゃんも居て顔見知りが多い。
「あら、裕也ちゃん、おつかい?」
「あ、はい。そうっす。」
「えらいわねぇ。うちの子なんて全く帰ってこないのよぉ。」
近所のおばちゃんの子どもさんはみんな県外だ。大学2年にもなって、ごろごろと家にいる俺は、ちょっと恥ずかしくなってマフラーに顔をうずめた。
「次の方どうぞー。」
「裕也ちゃん、呼ばれてるわよ。」
「…うす。」
俺は近所のおばさんから逃げるように、ガラポンの前に立ち、商店街組合の人に抽選券を渡した。
「はい、5回分ですね。どうぞ!」
母ちゃんに頼まれた米、米、米。
俺は念じるようにグリップの部分を握って、力強く回した。

「はい、こちらから景品をお選びください。」
最下位にもあたる参加賞には、お菓子、ラップ、たわし、おもちゃが並んでいる。俺は恥ずかしくなって近くにあった景品を選んで抽選会場を後にした。

「あーあ、なーんも当たらんかったわー。」
家に帰った俺は、適当に選んだ遊具を持ってこたつに潜る。
知恵の輪、紙風船、折り紙、シャボン玉、コマ。こたつの上に並んだおもちゃに俺はため息をついた。
「あら、懐かしいわね。」
洗い物を終えた母ちゃんが、こたつに入ってくる。
「紙風船じゃない。あんた小さいころ、これ好きだったのよ。」
母ちゃんは嬉しそうに袋を開けて膨らます。
「小せえ頃の話だろ。」
「そうよ。ほら裕也、いくわよー。」
「は、おい、ちょっと。」
「いいもの当ててきたじゃない。」
こたつの机を挟んで母ちゃんがにっと笑う。
俺もつられてにっと笑ってしまったのだった。

スーパー、自転車、夜

「ねえ、パパ。サンタさん、いつくるかな?」
「う、うーんとね、それは佐奈ちゃんが寝た時かな。」
「さな、サンタさんがくるまでねないー!」
時刻は22時すぎ。いつもは20時にはママと一緒に寝てしまう佐奈は、今日は夜更かしだ。
ママは息子の優斗を寝かしに部屋に向かってから降りてこない。
いつもは20時に寝ているから、たぶん一緒に寝ているんじゃないかな…。
「佐奈、サンタさんはいい子にしないと来ないよ?」
「さな、いい子だもん!ゆーとのみるくあげた!」
「ま、まあそうなのか?」
「パパ!さなね、サンタさんにココアつくる!」
「え、ええ?」
「だってね、おそとさむいもん。ココア、ぽかぽかするもん!」
ココア作ったら寝てくれるかな…。
「じゃあ、パパと一緒に作ろうか。」
「わーい!」

佐奈は優斗が産まれてから、とてもお姉ちゃんになった。それまでは、私かママにべったりだったが、「さな、おねえちゃんだもん!」と率先してお手伝いをしてくれる。いい子に育ったなーと、戸棚に向かう佐奈の頭をなでる。ただ、寝てほしい。私も準備をしたいんだよ…。

「ない!パパ、ココアがない!」
佐奈が泣きそうな顔で私を見上げる。確かにココアは全くなくて、これではココア汁になるだろう。
「パパ、どうしよう。さ、サンタさんに、ココア、つ、つくって、あげられなっ…いぃ~」
佐奈は目に涙をいっぱい溜め始めた。
「え、ええ!?さ、佐奈、泣くな泣くな。え、ええっと。そ、そうだ!パパと一緒にスーパー行くか?一緒にココア買いに行こう!」
「うん、行く!」
大きくうなずいた佐奈に、マフラーやらコートやらを着せて、私は近所の24時間スーパーマーケットに向かうため、車を走らせた。
「佐奈、ついたぞ…って、あれ?」
コートに包まった佐奈は、後部座席の後ろですやすやと寝息を立てて寝ていた。
「寝ちゃったか…。」
せっかくスーパーに来たけど、佐奈を一人にはできないしな、と思った私だったが、ふと、スーパーの入り口近くの駐輪場前に自販機がある。
「ココア買って帰るか。」
私はまばらに止まった自転車を避けてココアを2つ買った。
「明日、パパサンタと飲もうな。」
私は、佐奈を起こさないように、ゆっくり、車を走らせて帰ったのだった。

今夜はクリスマスイブ。明日、佐奈たちの笑顔を見られるよう、パパ、もうひとがんばりします。

ちょっとしたあとがき

配信で話したネタと実際に小説に書き起こしたネタに変更を入れさせていただきました。

風船、こたつ、米では、ヘリウムガスを入れた風船をガラポンでもらって、それを幼い子にあげる、というつもりだったのですが、「ガラポン抽選で風船もらう?」とか「高校生、大学生くらいの子が風船手に持つ?」などと書きながら思って、紙風船になりました。
ちょっとオチがうまくオチてないかもしれません。締めがうまくできなかったなあ、反省。
他のネタなら、年末年始こたつでのんびりしたいのに、もち米を蒸かしたりもちつきなど色々手伝わされてふてくされて風船ガムを噛んでいる主人公、などなど。

スーパー、自転車、夜では、自転車がクリスマスプレゼントだったのですが、自転車の必然性がなかなか難しく、スーパーの描写で、駐輪場を出したら自転車が自然に組み込まれるかも!と思って変更してみました。
幼稚園生のクリスマスプレゼントが自転車というのはスタンダードなのでしょうか…。小学校低学年くらいなのかな…。無理やりクリスマスに当て込めてしまったのですが、このワードであれば、青春っぽく(真夜中に自転車走らせて24時間スーパー行く男子高校生)もできそうだなあと思った次第です。

また、来月の新月もやってみたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

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