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台本を読んだ後にテレビドラマを見てみた

    ほしかげ(いびつな塊)です。

    まずは、題名でびっくりさせてしまった方々にお詫び申し上げます。
    僕は内部関係者ではありません。
    そして極めて合法なのでご安心ください。

    今回、話題にするドラマは「高額当選しちゃいました」です。

    フジテレビの公式サイトでは、「ヤングシナリオ大賞」という脚本家発掘コンテストの受賞作品が公開されています。第35回の大賞受賞作品の「高額当選しちゃいました」も、おそらく応募時のままの脚本がそこから見られるようになっています。
    放送前に運良く見つけることができたので、待ちきれずに脚本だけ読んでしまった…というのが本当のところです。せっかくだから、どんな風に印象が変わったのかを記録しておこう!ということで、しばしお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

    この先、当たり前にネタバレ尽くしなので、先に自分の感性のみで楽しみたい!という方は下のリンクからどうぞ。

    脚本のほうは、最新の受賞作しか読めないみたいですね。残念です。

※「高額当選しちゃいました」のTVer配信は4月6日までです。ギリギリのnote投稿になってしまい誠に申し訳ございません。



全体的な感想

    まずは、あらすじと登場人物のプロフィールを紹介します。

あらすじ
    同じ養護施設で育った仲良し4人組。養護施設を出た後もルームシェアをして一緒に暮らしながら貧乏ながらもそれぞれの夢に向かっている。年末の宝くじを毎年共同購入している彼らはなんと、一等の7億円を当てたが、その当たりくじは誰かが盗んでいた。

登場人物
🔴  新条彰(アキラ)🔴
    マジシャン志望。4人のまとめ役。
🟡  川上潤(ジュン)🟡
    歌手志望。お調子者。
🔵  今川優人(ユウト)🔵
    芸術家志望。穏やか。
🟢  春日司(ツカサ)🟢
    俳優志望。マイペースの一匹狼。

↓参考にさせていただきました

感想
    元々の脚本も、ドラマになった後も、少しの無理やり感もなく設定を生かし切れていることが本当にすごいと思いました。

    「仲良し4人組に裏切り者がいる!」という意外さは除いて、それぞれの性格と特技が生かされた  "度の過ぎた悪ふざけ"  で構成されており、短い時間で楽しめる工夫が施されています。
    おそらく、何話もあるドラマだと、視聴者に登場人物の性格が浸透してくるので、一人一人の意外性をもっと色濃く描写できるのでしょうが、1話完結の60ページ程度の脚本ではこれが最適解だったのでしょうね。脚本とかドラマ制作とかには明るくないので推測ですが。

    ドラマでの展開順にそれぞれの悪ふざけのおさらいをしてみます。

🔵ユウト🔵
    偽物の当たりくじを作る。ドラマではくじのデザインを一部変えて偽物だとわかるようにしている。すぐにネタ晴らしするつもりだった。

🟡ジュン🟡
    🔵ユウト🔵  が作った偽当たりくじを盗んでギターに隠す。お金持ちになりたかったみたい。

🟢ツカサ🟢
    毎年共同購入の10枚とは別に自分でも10枚の宝くじを買っている。共同購入の連番の10枚に1等があることを誰よりも先に知って、自分のバラの10枚とすり替える。他の3人と比べて成果が乏しく、夢を諦めかけていた。

🔴アキラ🔴
    🔵ユウト🔵  の部屋で失敗作の当たりくじを見つけて、混乱の元凶を察しつつ言い出せずにいた。終盤でけんかをする3人をなだめるために当たりくじを破る。得意の手品で元通り。

    🔵ユウト🔵  は、穏やかな性格から、あまり腹黒い感じはしませんよね。ちょっとしたいたずらのつもりだったのに拗れちゃった…のような可愛らしさが伺えます。芸術家志望ということで、デザインソフトのようなものを駆使して偽当たりくじを作っています。4人の中でこんな芸当ができるのはユウトだけですね。

    🟡ジュン🟡  は偽物を盗んでいました。しかもそれを、大事だと言って他の人に触らせなかったギターの中に隠していました。

    🟢ツカサ🟢  は、実は共同購入の連番のくじが本当に当たっていることを知っているのに、混乱に乗じて4人の仲をかき乱しています。序盤に4人で「当たった!」と騒いでいるときに、「あれ、俺が持っているはずなのにな」と思いながらも俳優志望の演技力を活かして一緒に喜んでいます。

    🟡ジュン🟡  と  🟢ツカサ🟢  は自我が強い印象でしたので、この2人が当たりくじを独り占めしようとしたのは腑に落ちてしまいます。ごめんなさい。

    🔴アキラ🔴  は、さすがリーダーという感じで、事情はだんだんとわかってくるけど拗れていってしまうので、ここは  🔵ユウト🔵  と似たものを感じます。4人のバランスがいいですね。
    そして、最後に当たりくじを破るが、元通り。いいですね。先に脚本を読んでいて展開がわかっていたはずなのに鳥肌でした。演出の力でしょうか。美しかったです。友情の輝きを取り戻したみたいで素敵でした。

ターゲット層の意識と明確性

    コロコロコミックあるいはジャンプのような少年が好きそうな美術や表現だなと思いました。おそらく、高額当選を最も大真面目に夢に見るのは男子小学生だという結論に達して、その子たちが楽しみやすいように工夫されているような気がします。

    まず、それぞれにイメージカラーがあること。洋服やそれぞれの部屋が、それぞれのイメージカラー尽くしです。登場人物の名前が出るたびにそれぞれのイメージカラーの丸で挟んでいたのはそういうことです。しつこく感じた方、すみませんでした。わかりやすさを体感してほしかったのです。
    戦隊モノやアイドルなど、ターゲットの年齢層が低い場合や応援しやすさが鍵になる場合などで、  ”わかりやすさ”  はキーワードになってくると思います。

    わかりやすさつながりで言及しておきたいところがあります。
    最初の登場人物紹介の時に、登場人物の名前が全て、  ”下の名前のカタカナ表記”  になっています。これもなんだか、少年向け漫画みたいですよね。      また、元脚本段階と名前が変わっている人物がいます。優人(ユウト)です。元々は  ”俊”  だったようです。シュンと読むと思われます。
    ここで気が付いた方いらっしゃいますか。そう、発音でもカタカナ表記でも似通ってしまう名前の人物がいます。ジュンです。
    気がついた時、プロってすごいと本気で思いました。すげー。ここまでわかりやすさにこだわるのか、と。

    元脚本でのこだわりは  ”名字漢字2文字+名前漢字1文字”  で揃えることのようですがカタカナ表記にしたことによって  ”名前カタカナ3文字”  で統一されました。

    2つ目です。あまり難しい言葉は使わずに友情の勝利を見事に描ききっています。元々の脚本では20代半ばの登場人物たちに相応なセリフになっていた印象です。言葉として微妙な違いなのですが、結構印象変わりますね。

    3つ目です。何よりも、感情や身振り手振りがはっきりしていました。舞台劇を見ている気分でした。展開の予想外さや喜怒哀楽に揺さぶられる感覚は、元の脚本でもひしひしと感じられて感嘆していたのに、映像化では、もう脱ぐし暴れるし壊しまくるしで、反抗期の子供を見ているようでした。混乱具合が嫌でも伝わって良いですね。

    ↓参考にさせていただきました


細かい気配り

    突然物語が展開する違和感を無くすのは本当に難しいです。事前に組み立てた順序の展開の中にいかに自然に流れ込めるか、というのは慣れと技術が必要だと思っています。

    個人的に「おお」と思ったのは、🔵ユウト🔵  が起こされた瞬間に「ごめんなさいっ」と言っているところです。
    元の脚本にはありませんでした。後で偽の当たりくじを作ったことを謝るつもりだったことが嘘ではなかったことを示しているので、「朝起きたら謝ろうと思ってた」という言葉に信ぴょう性が増します。丁寧だ。

プロの仕事は丁寧で大胆

    脚本では、比較的  🟡ジュン🟡  は途中から荒れてくる印象でしたが、ドラマでは最初からフルパワーで暴れていました。ギスギス感が強まりすぎて、展開がわかっているのにつらかったです。こんなに思いっきりやるんだな…とプロの大胆さを感じました。

    序盤の盗んだ犯人捜しのときに、身体検査をするシーンがあるのですが、元の脚本にはセリフだけだったのに、ドラマでは下着まで全部脱いでしまったのはさすがに驚きました。そこまでするか。

    今まで書き連ねてきた通り、細かい工夫もそこかしこに散りばめられていて何回見ても気づきがあるし面白いです。書き切れていない部分や拾えていない部分もあるので、もし、まだ配信されていたらぜひ見てみてください。少年心を思い出すことができます。

↓プロの分析(参考にさせていただきました)

 

    僕の趣味にお付き合いいただきありがとうございました。ドラマって奥が深いです。
    また会いましょうね。


    ほしかげ

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