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最新状況:コロナワクチン・治療薬の未来に暗雲?認可が遅れる可能性が指摘される。


バイオンテック $BNTX ・ファイザー $PFE のコロナワクチンのEUA(緊急使用承認)への申請が、11月3週頃になるとファイザーが先日発表しました。申請まであと1ヵ月ほどに迫ったコロナワクチンの命運についてですが、新たな懸念が出てきています。
参照: STATの記事

それはワクチンの治験に関する問題です。現在アメリカでは大手ワクチンメーカーがそれぞれ3〜6万人規模の治験を行っています。もし早期にバイオンテック・ファイザーのワクチンにEUAが認められると、どんなことが起きるでしょうか。先週10月22日のFDAミーティングで下記の点が議題になったようです。

プラセボ治験に関する懸念

ワクチンの治験に参加している人は、コロナにかかりたくないから副作用リスクを負って参加していると考えられます。かかっても良いという人は身を挺して治験に参加する理由がないので、治験に参加している人はコロナ高リスクの人、コロナにかかりたくない人のはずです。
ワクチンの治験は実際のワクチンを投与されるグループと、プラセボと言ってワクチンでない無害のものを接種されるグループの2つに分かれており、接種後コロナに罹患するかを2ヵ月観察することになっています。治験参加者の誰がどちらのグループなのかは一切知らされません。

ある日、自分の試している(試していた)ワクチンが正式に国から承認されたとします。治験参加者はどう思うでしょうか。
「やった!このワクチンは効果があると認められた。これでコロナからも安心だ。待てよ、でも自分がプラセボ側だったら意味ないじゃん!?」
ということになり、メーカーに問い合わせをするでしょう。ワクチンを摂取していると信じた治験参加者がリスクを軽視して行動したり、リスクを取った代償として早いワクチン接種を望むということもあります。倫理的な問題を避けるためファイザーは「もしEUAが認可された場合、プラセボグループには治験を切り上げてワクチンを摂取する」と回答しているようです。つまりプラセボを併用しての治験はEUAが認可された時点で終了です。

翻って、ジョンソンエンドジョンソンなど他のワクチンメーカーは、ひとたび先行企業のコロナワクチンが認可されてしまうと、確保している治験参加者が離脱すると訴えているようです。これは難しい問題です。現在のように正式なワクチンが無い状態では、他に方法が無いから治験に参加する意味があるかもしれません。しかし一旦有効なものが世の中に出てしまうと、リスクを取ってまで未承認のワクチンを試す意義が薄れます。治験など中止して有効なワクチンを打った方が良い。もし治験に参加するとプラセボグループとして2ヵ月無ワクチン状態にさらされるリスクがある訳ですから、コロナへの恐怖が深刻な人は治験を取り止めやすくなります

FDAに「なるべく幅広い人から長くデータを取って欲しい」という意向があっても、一旦特定のワクチンにEUAが出てしまうと、治験継続が困難になる可能性があると言っているようです。

私は医療関係者では無いのでこれがどの程度影響を与えるかはわかりません。STATの記事によると、EUAの早期承認は、ファイザー自身の「EUAから正式認可(フルライセンス)に進むプロセス」にも影響が出るとしています。ファイザーがもしプラセボを用いない治験しかできない場合、あるいは低リスク層の偏った治験参加者しか確保できない場合、FDAが基準とするデータに足りなくてその後正式認可を得られない可能性があるとのこと。これは後続のワクチンメーカーも同じです。

解決策として”Expanded access”の摘要を模索していると記事は書いています。(Expanded accessについてはこちらを参照)
つまりEUAの前段階でとどめて治験データの収集を引き続き図りつつ、ワクチンの必要な人には「未承認薬」として使用を限定許可するという玉虫色の?方法です。しかしこれはEUA認可とは異なるアプローチであるためそれで丸く収まるのかは私にはわかりません。おそらく販路に制限が出るでしょう。

株の投資家としては、もし記事の懸念が正しいと仮定すると、バイオンテック・ファイザーやモデルナのワクチンがEUA承認される時期が後ろ倒しになる可能性があります。良好な結果が出ても、治験に影響が出ないタイミングまで決定を引き延ばされるということです。

ワクチン認可までのシナリオ

しかし一方、イギリスでは”Human Challenge”として、治験参加者にコロナウイルスをなすりつける試験が来年早々にも始まるとしています。アメリカでの治験が「自然感染」を待つために時間がかかるのに対して、イギリスのヒューマンチャレンジは人為的にすぐコロナウイルスに感染しますので、効果を測定するまでの期間が一気に短縮されます。イギリスと言えばアストラゼネカの本拠地ですが、非難必至でこれを進めるにはそれだけの切羽詰まった事情がある訳です。
また中国は既に「年末までに6億回以上分のワクチンが生産可能」として、各国で治験を進めています。WHOも承諾し世界に販売する気満々です。ロシアも既に2つワクチンを認可しています。
つまりアメリカのFDAが安全性第一の治験を進めるのは良いですが、結果世界的なワクチンレースから遅れ、国内のコロナ被害も止められずという批判を受ける可能性は高いです。そして我々投資家が恐れるのもその「慎重すぎる」シナリオです

では、FDAは態度を硬化していく可能性が高いでしょうか。そうとも限らないと思います。10月16日、WHOは「レムデシビルは新型コロナに効果なし」とする研究結果を発表しました。ギリアドは反論しましたが、わずか6日後の10月22日、FDAはレムデシビルをEUAからフルライセンスに正式に承認しました。WHOが効果なしと言ったからすぐ承認したのか、承認が近いと見てWHOが先手を打ったのか、はたまた単なる偶然かはわかりません。しかし早すぎる認可に対して「効果があるという証拠が足りない」とする疑問の声もあるようです。つまりFDAがレムデシビルにお墨付きを与えているタイミングは、世界のコロナ治療薬レースに忖度したタイミングであるかもしれません。

特に治療薬については、以前ヒドロキシクロロキンをEUA認可してコケて、血漿プラズマも効果が疑わしいとなっている今、FDAの名誉回復をかけた認可プロセスになっていると思います。既に抗体療法をEUA申請したイーライリリー社を製造工場での品質管理に問題があると撥ね付け、強硬姿勢を出している中でのレムデシビル認可ですから、ある程度アメとムチで進めている印象を受けます。

ワクチンについては、治験停止をしていたアストラゼネカとジョンソンエンドジョンソンの治験再開を認めました。これは早く治験を進めないと先に書いたような問題が出てくると認識したことも影響したでしょうか。

これらの情報を総合すると、FDAがやみくもにEUA認可を引き延ばすとは考えづらいです。しかし同時に、ファイザーやモデルナが申請を出してすぐに認可される可能性も微妙です。
ファウチ所長が「安全で効果的なワクチンを見つけるのは12月初旬、そして人々に広く行き渡るには来年まで数か月待たないといけない。世の中に効果が見えるようになるのは第2-3四半期頃」とコメントしていますので、その辺りの時間軸が現実的だろうと思います。

アメリカと世界を取り巻く環境の変化

ただしもう1つ大事な要因があります。それは現在コロナ感染者が欧米で加速度的に増えているということです。私はヨーロッパに住んでいますが、10月中旬からいきなり感染者数がギアアップしています。国境は各国開けてませんので、冬で感染力が上がったのか検査数の問題か、それともウイルス変異か、よくわかりません。マスクをしていないとか手を洗っていないのが原因などと日本では言われることが多いですが、「元々感染者数が多い理由としては考えられるが、ある時を境に加速度的に増える理由としては弱い」というのが私の印象です。おそらく感染スピードに民族的な違いの何かがあると思います。10月26日現時点では、
マスク義務→複数集会禁止・学校登校禁止→夜間外出禁止→店舗営業時間短縮→ロックダウン
という感じで各国が規制を随時上げて行っている状況です。政情不安にも繋がっており予断を許しません。

こちらでは感染のピークが12月に来ると、9月から言われています。よって12月の北半球は3月を超えるコロナピークになる可能性が高いのです。死亡率が以前より下がっているのは確かですが、一部では死者も増えており、医療崩壊が懸念されています。ワクチンと治療薬に関するニーズは12月に極限まで高まっていることが予想されます。

そんな中で今からFDAの認可スケジュールについて想像するのは無意味かもしれません。しかし1つ言えることは、12月の段階では政治関係なく「ワクチン待ったなし」の状態に突入している可能性が高いです。ここで対処が遅れるとFDAの存在意義にもかかってきますので、状況によっては先に書いたような懸念は杞憂に終わり、EUAを早めに出していく気もします。以前も記事に書いたのですが、株主としては「世間がワクチンを心待ちにする状況」が一番株としてホットになります。夏から秋にかけてコロナの恐怖が減ると同時にワクチン株が下がっていたのは記憶に新しいところです。

同時に、開発遅れているコロナワクチン企業はますます厳しいです。銘柄で言うとノババックス $NVAX (治験スケジュールギリギリ、海外治験重視)・メルク $MRK (周回遅れ)、および弱小企業であるイノヴィオ $INO ・バクサート $VXRT ・ソレント $SRNE など(申請まで続けられる資金的見通し不透明)の企業は厳しくなると予想しています。これらはFDAがワクチンをどんどん保留または非承認にすることに賭けるしかないでしょう。しかしワクチンが1つも承認されないというシナリオ、またはワクチン反対運動などで先行ワクチンが潰されるシナリオもまだ残っているので、その場合は変わってきます。
ただしもし本当にワクチンの希望が絶たれると、アメリカの社会は大混乱になると思います。

以上が現在の状況です。感想があればよろしくお願いします!

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