7/11 2023

・近頃、トラウマについてよく考える。そのきっかけはおそらく、ceroの髙城晶平さんが出演しているポッドキャストを聴いたことだった。
 精神分析という分野に関心があるという髙城さんが、「人の個性が形成されることに幼少期の経験やトラウマが関係している」といった旨の話をしていて、妙に印象に残った。
 僕には父に躾けられたときのトラウマがあるけれど、それは果たしてどのように個性に転じているのだろうそれだけではない。明確に覚えている思い出や、すでに脳の海底で眠っている記憶が、僕をどう形作っているのか、ふと考えてしまった。

・NHK出版から刊行された「別冊100分de名著 フェミニズム」を読んでいる。上間陽子さんがハーマンの著書『心的外傷と回復』を取り上げている章が興味深くて、もはや読み進めるのがこわい。

 上間さんは、沖縄で暮らす若年女性に関する著作『裸足で逃げる-沖縄の夜の街の少女たち』『海をあげる』などで知られ(恥ずかしいことに読んだことがない。いずれ必ず読みたい)、近年は若年出産をした女性たちの調査を行なっている。2021年には、若年女性の出産や子育てをサポートするためのシェルター「おにわ」を共同代表として立ち上げ、自身も現場スタッフの一人として活動している。
 前述したように、この章では上間さんが『心的外傷と回復』を紹介している。この本では性暴力や性虐待が取り上げられ、それらから生き延びた女性や子供たちにどのような現象が起きるのか、そして彼女たちを治癒するためにはどのような関係性を築くべきなのかが記されている。
 性暴力の当事者の壮絶さは強烈だけど、その当事者を治癒する人たちの難しさにも心が揺さぶられる。相手に安心してもらうことはもちろんだが、性暴力のトラウマを語ってもらうときのバランス感覚(相手が絶望しないよう支えつつも、相手の人生を支配してしまわないように注意する)は非常に繊細だと思う。
 僕は身近な人たちを思い浮かべた。特に恋人。彼女もさまざまな痛みを経験しているが、その傷にどう触れるべきなのか(というより、僕が普段どう「触れている」のか?)考えた。正直、自信がなかった。ずっと彼女の苦しみに配慮できているわけではなく、ときどき無慈悲な言葉を彼女にぶつけたはずだ。定期的に自分の言動を省みて、緩んだ意識を締め直すしか方法はないように思った。

・髙城さんのことに話は戻る。髙城さんは自分の子育てについて語り、「ふとした出来事でも、これが自分の子供のトラウマになっちゃうかもしれないと考える」と述べた上で、「その個性をポジティブなものにできるかそうでないかは、もうその子のポテンシャル次第」と話した。それを聞いて「現実的だな〜」と感じたけど、小さな希望のようにも捉えられた。僕の中に眠る冷たい記憶が、優しさに変わるかもしれない。そうひそかに信じて、僕は今日も明日も、誰かと関わっていく。