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蟹を食べたい

 今年もなんとか終わりそう。最近は寒さが厳しくて、朝早くに目ざめても足の指先をあたためていたくて、必ず二度寝してしまう。風の冷たさで頭が痛くなる。自転車のハンドルを握る指の感覚が途切れそうになる。それでも、なんとか年を越せそうだから安心です。お元気ですか。

 この頃は、カネコアヤノさんのことばかり考えている。来年の2月にあるライブに当選したので、予習とばかりにカネコアヤノさんの曲を集中して聴いている。ただそれだけじゃなくて、ライブに行くときのために新しい服を買おうかなとか、もし居酒屋とかでカネコアヤノ御一行に遭遇したらどんな感じで話しかけようとか、余計なことまで想像して楽しんでいる。少し高いクラッチバッグを買ってしまった。いいものを身につけて町を歩いていると、自分のことをそんなに嫌だと思わなくなるから不思議だ。

 今年読んだ本で印象に残っているのは、真造圭伍さんの『ひらやすみ』という漫画だ。旅行中に立ち寄った本屋さんでふと気になって買ったのがきっかけなのだけど、何回も読み返してしまうぐらいどのエピソードも愛おしい。生田ヒロトという29歳のフリーターが、不思議な縁で近所のおばあちゃんから平家を譲り受け、そこで18歳のいとこと一緒に暮らすというお話で、読んでいると自分もこうやって生活してみたいなあと羨んでしまう。

 僕は、ヒロトや彼が住む平家の「風通しの良さ」をまぶしく感じている。最初はおばあちゃんが暮らしていた平家がヒロトのものになり、そこにいとこのなつみちゃんがやって来て、ときどき友達のヒデキも現れ、さらにはなつみちゃんの友達のあかりちゃんも…という風に、平家がゆるやかであたたかなコミュニティになっているのがとてもいい。きっと、ヒロトという人物が心の玄関をずっと開けっ放しにしているから、いろんな人が集まってくるのだろうな。うまくまとめられないけど、もし僕が家を建てる機会があるのなら、窮屈で緊張する場所じゃなくて、ずいぶん風通しのいいゆるめの空間にしてみたい。

 話は変わるけど、先月、少しの間ツイッターのアカウントを消していたら、友だちが心配してラインをくれた。そのときは小さく「ありがとう」と言ったのだけど、今頃になってそれが大きなボディーブローに変わってきた。僕は節目節目で、いつも君に救われているような気がする。こちらばかりいろんなものを貰っているけれど、ありがとう。いつの日か、僕のお家で上海蟹をはふはふ言いながら食べましょう。では、また来年。