【行政書士試験FIRST STEP】行政不服審査法の全体像を把握する 執行停止編②
皆さま、お疲れ様です。事務所(自室)に40㎏の可変式ダンベルが2個置いてある系行政書士の鈴木です。
ありがとうブラックフライデー。安く購入できました。
さて、今回は前回に引き続き、行政不服審査法における重要テーマ「執行停止」について解説していきます。
解説に入る前に、もう一度行政不服審査法の執行停止に関する条文を確認してみましょう。
……はい、改めて見ても訳が分かりませんね。
大丈夫です、安心してください、いずれ慣れます。
今回は特に2項から5項について詳しく解説していきます!
執行停止は審査庁の違いで2種類に分かれる
執行停止を進めていくにあたり、着目しておきたいのが「審査庁」です。
請求人が不服申立をし、実際に審理する際に担当する審査庁。この審査庁がどういった行政庁なのかで執行停止でできることが変わっていきます。
①審査庁が処分庁の上級行政庁または処分庁である場合
審査庁が処分庁の上級行政庁、つまり処分庁の上司にあたる行政庁です。それと審査庁が処分庁自身である場合は以下の図の通りになります。
執行停止は原則、行政庁が執行停止をする必要があると認めなければなりません。
このまま放っておくのは流石にかわいそうだな、という状況じゃなければできないという感じでしょうか。
不服申立があった際、処分庁は「執行停止をするべきか否か」について考えなければならないわけです。
ここで重要なのは審査庁が処分庁自身か、処分庁の上司に当たる場合、「請求人の申立て」か「職権」で執行停止ができるという点です。
自分自身又は自分の部下が行った処分であれば、審査庁は自分の権限で執行停止することもできるわけです。
請求人が執行停止について申立て無くても、「結果が出るまでこうしてなさいよ」と言えるということです。これは処分庁の身内だからこそできる行為ですね。
②審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁の場合
長々と書きましたが、要は処分庁とは直接関係の無い行政庁が審査庁になった場合、ということです。
この場合のイメージは「処分庁を無視して勝手なことをしてはいけない」です。
処分庁が必要だと思って行った処分に対して、関係の無い審査庁が審査するわけですから、重要な行為である執行停止はもちろん意見を聞いた上、行わなければなりませんし、①の場合にはできた「その他の措置」についても行うことができません。
第三者の立場から行うという観点から、この場合の審査庁が職権で執行停止をすることも、当然できないという訳です。
そんな権利持ってませんよということですね。
職権で執行停止できるのは①の時だけ
職権で執行停止できるのは①のパターンの時だけです。
なぜなら、①の場合は処分を行ったのは、自分自身もしくは自分の部下であるからです。
内情を知っているからこそ、自分の権限で職権停止をすることができるのです。
ということはつまり、内情を知らなければ職権停止できないということになりますね。
②の場合は職権では執行停止することはできません。
さらに、審査を担当するのが裁判所である行政事件訴訟法の場合も、職権で執行停止することはできません。
職権で執行停止できるか否か?
については試験では頻繁に問われます。混乱しがちではありますが、そういう問題が出たときはこうイメージしてみましょう。
お前にこの処分の何が分かるんだよ?
身内であれば、執行停止できます。
反対に第三者であれば執行停止はできませんので覚えておきましょう。
裁量的執行停止と義務的執行停止
裁量とは「その人の考えによって処理すること」と辞書にはあります。
裁量的執行停止とは、執行停止をするかどうかについての判断は自由だよということです。
今まで解説してきた執行停止は裁量的執行停止のことでした。
逆に義務的執行停止は「この場合は絶対に執行停止しなければならない!」ということです。
ではどんな時がそうなるのか。行政不服審査法25条4項にはこんなことが書かれています。
重要な部分は太字にしておきました。
要約すると
このままの状態が続いたら、審査請求人がとんでもないことになるから絶対に何とかしなきゃいけないから絶対に執行停止して!
という内容が前段であり、後段からは
(前段の状況を踏まえて)でも、周りの人にすっごい迷惑をかけちゃう場合か、審査請求人が悪いってことがはっきりとわかる場合は、執行停止しなくてもいいよ!
という意味になっています。
重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときとは?
義務的執行停止が行われるためには「重大な損害を避けるために緊急の必要」が無ければなりません。
重大な損害を避けるために緊急の必要があると認める場合、という単語は、絶対に暗記をする必要があるため、ここで何度でも出しておきます。
では、具体的に「重大な損害を避けるために緊急の必要」とはなんでしょうか?
これについては行政不服審査法25条5項に規定があります。
例えば運転免許取消処分を受けた場合、車を運転できないことで生活が不便……程度では重大な損害とは言えないのではないでしょうか。
しかし、一方で運転免許保有者がタクシーの運転手であった場合、免許が無ければ仕事ができなくなり、生活できなくなってしまいます。これは重大な損害であると言えるのではないでしょうか。
生活が不便程度ではなく、「このままじゃ生きていけない!」というのが重大な損害が存在するというイメージです。
本案について理由がないとみえるときとは?
行政不服審査法25条4項に出てくる「本案について理由がないとみえるとき」と聞いたとき頭の中が混乱しませんか。
分解していくと
本案=審査請求人の主張
理由がないとみえる=主張が認められる見込みがない
ということになります。
つまり、審査請求人の主張が認められる見込みがないときとなります。
たとえ、処分によって審査請求人が「生活できない!」という状態になったとしてしまっても、そもそも審査請求人が明らかに法律違反している場合は救う必要は無いということになるわけですね。
そういう人には執行停止をするまでもない、という結論になるわけです。
次回予告
次回は行政不服審査法に関連する判例「主婦連ジュース事件」について解説していきたいと思います。
それではまた次回!
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