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【行政書士試験失敗記】19話 5つの選択肢の中で正解は1つ。確率は20%。

行政書士試験で5割正解することはすぐにできる。そこからが長いのだと思う。

 

 行政書士試験は大半の問題が5つの選択肢から1つの正しいもの及び誤ったものを選ぶ「五肢択一式」の形式を取る。

 問題によっては合っている文章又は間違っている文章を2つ以上抜き出している選択肢を選ぶといったちょっとややこしい問題もあるが、基本はそのような形式で進んでいく。

 小学校のテストのように、答えを直接書き出しなさいといった形式の問題は記述問題以外は無い。

 極論を言ってしまえば、問題の意味が分からなくても、5分の1の確率、約20%で正解できてしまうということだ。

 行政書士試験に必要な知識があろうが無かろうが、20%の確率で正解できる。

 これは一見すると簡単な試験のようにも見える。

 全く勉強しない人間でも五肢択一式の問題がある、54問=216点分の20%である、約44点分は取れてしまうという計算になる。

 もちろん、これだけでは合格することはできない。
 しかし、わからなくても20%の確率で正解を出せてしまうという事実がある。

 これはどういうことか。

 私のようなお調子者にとっては、自分の本当の実力が分かりづらいということだ。

 先ほど出た、小学校のテスト、代表的なのは算数のテストだろうか。そういうテストであれば、全くわからなければ0点確定である。存分に落ち込めるし、次はこんな点数取らないぞと必死に勉強する気にもなれる。

 しかし、こういう選択式のテストの場合、20点は取れてしまうのだ。

 じゃあちょっと勉強すればどうなるか。

 20点は確率論で取れたとして、その上でちゃんと勉強してきた+αが乗っかる。そうなると50点、60点と取れていく。

 そんな結果を持つと私のようなお調子者はこう思う。

 「あ、俺って勉強できるじゃん」

 しかし、その後は悲惨だ。簡単に取れていた50点から合格点まで点数が中々伸びない、ということに当然なってくる。

 なんでか。合格点を取るための知識量が圧倒的に足りない。当然だ。50点のうちの何点かは自分の実力じゃない。

 選択式の試験においては、自分の本当の実力が見えにくくなっているということだ。

 行政書士試験においては150点、5割を取ることはそこまで難しくは無いと私は思う。
 なぜならば、自分が本来できる実力に+αで今言った確率論における「たまたま」の選択肢が乗っかってくるからだ。

 しかし、それは所詮、運要素でしかない。

 本番で確実に6割取るとなってくると話が違ってくる。

 行政書士試験の体験記を見ると

 合格点である180点を目標に勉強しても、合格はできない。
 200点以上取る気で勉強しなければ合格することはできない。

 という言葉を目にする。

 これは真理であると私も思う。

 5割を取る勉強法と6割を取る勉強法はまるで違う。

 6割を取る勉強法と7割を取る勉強法もやはり違う。

 本番で確実に合格点を取るためには何かのアクシデントがあったとしても対応できるように7割を取る勉強法を実践するべきだと私も思う。

 では、6割取る勉強法と7割を取る勉強法とは何が違うのか。

 まず、捨て科目を設定することは極めて難しくなる。

 法令科目40問中28問正解するということになるわけなので、会社法丸々5問捨てるのは厳しい。同じように基礎法学の2問も捨てるわけにはいかない。民法を諦めるのなんて以ての外だ。

 行政法は高い水準で正答した上で、どの科目もまんべんなく取るという戦術が求められる。

 一般知識についても10問程度の正解が求められる。足切り点数を気にしている場合ではない。全体的な知識が必要だ。

 記述問題についても3問中2問の完答が求められる。それか3問をまんべんなく答えるかのどちらかしかない。

 以上が行政書士試験において7割を取るということになる。

 記述の問題を見て、全く答えが浮かばなかった時点でゲームオーバーが確定。なんともシビアな世界だと思わないだろうか。

 行政書士試験は全く勉強しなくても確率的に2割の点数は取れる。
 ちょっと勉強すれば5割程度は取れる。
 ここまでは運が味方してくれる。

 しかし、6割以上を取ろうとすると途端に運は敵になる。

 どうして苦手な部分ばっかり出てくるんだ?
 あの判例、見たことあるけど思い出せない!
 記述のキーワードが全く出てこない!

 私も勉強してすぐに模試で150点~160点は取れるようになっていた。

 「まぁ、この分だったら180点超えも簡単だろ」

 結論から言うと、それから1年以上、模試の結果が180点を超えることは無かった。
 私の記憶では模試で初めて180点を超えたのは2年目の後半だったと記憶している。

 それまではずっと150点~160点を行ったり来たり、酷い時は100点台を取ることもあった。

 自分にちゃんとした実力がついていなければこのようなことになるということも、今になって見れば分かるのだが、当時の私は

 「あと20点~30点! 記述1問分がどうして取れない!? そうだ、記述の対策をしっかりやればいいんだ!」

 なんて迷走していた。もちろんこれは失敗である。

 ちゃんと基礎知識が備わっていないときに記述の対策をしても、結局できる対策と言えば、市販の記述対策本の暗記か、怪しい情報商材に大金を突っ込むかの2択を選ぶしかない(私は両方選んで痛い目を見た)。

 選択式の試験の怖いところ、それは

 自分の実力を正確に測れないまま、自分の実力の無さを認めることができず、安易な対策にすがり、時間と金を無駄にすることにある。


 そういった意味で、試験センターはこの試験を上手いように作っているのだろう。私はまんまと騙されたわけである。

 おのれ! 試験センターめ!

 ただその一方で、直前期になると急激に点数を伸ばす受験生が多いのも事実だ。それは、真面目に地道に勉強してきた結果、6割を取る知識が全て身についた状態になった時に、急激な点数の伸びが発生するのだと私は思う。

 ちなみに私の場合は点数は、乱高下を繰り返し、3回目の挑戦時にようやく、それも緩やかに安定して点数が伸びていった。

 つまり、これらのことを総合してまとめるのであれば、私はちゃんとした勉強量が足りていなかったと結論付けなければならないということだ。

 3回目の受験前に

 「今までの俺、ちゃんと勉強してなかったのか」

 なんて気が付いた私は、あまりの恥ずかしさに悶絶したものだ。

 勉強時間だけ確保して、その実、ちゃんと勉強できてなかったのかよ。なんて恥ずかしすぎる。

 資格試験は難しい。

 たとえどんなに長時間勉強しても、点数に繋がらないこともあると認めなければいけないからだ。

 私は中々認められなかった。こんなに頑張っている自分が合格できないなんておかしいとさえ思っていた。
 一時期、試験センターに対して答案用紙の開示請求してやろうかと思ったりもした。

 しなくてよかった。

 ただ単にお前の勉強が足りてなかったのだと恥の上塗りをするところだった。

 点数が伸び悩んだ時こそ、一度全部の知識を総ざらいしてみるといいかもしれない。

 きっとどこかが抜けているはずなのだ。

 大事なのは自分が抜けているところがあると納得すること。当然のことながら、決して「問題が悪い!」などと八つ当たりをしてはいけない。

 私は自分の点数に納得しなかった。だから失敗したのだと思う。

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