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hidekのエンジニアと長話 第8-4回【全文書き起こし】~ゲスト:紀平拓男さん(@tkihira)~

stand.fmで配信中の「hidekのエンジニアと長話」8人目のゲストは、スマートニュース株式会社の紀平拓男さんです。

「hidekのエンジニアと長話」は、メルペイVPoEのhidek(木村秀夫)さんをメインパーソナリティにお招きし、ゲストエンジニアとともに 作っていくスペシャルトーク番組です。

第8-4回の今回は、スマートニュース株式会社の紀平拓男さんをお招きして、WebAssemblyやWebのエコシステムの弱さ、Webの明るい話などについて語りました。

※本記事は、2021年8月13日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。

ゲスト
紀平拓男 氏 @tkihira
スマートニュース株式会社 ソフトウェアエンジニア

メインパーソナリティ
hidek(木村秀夫)氏 @hidek
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)

パーソナリティアシスタント
gami(池上)氏 @jumpei_ikegami
株式会社プレイド エンジニア

WebAssemblyの話

hidekさん(以下、敬称略):で、せっかく紀平さんと話せる、というところで、やっぱり、Webの技術の話をしたいなー、と思っているんですけど。

紀平さん(以下、敬称略):したいですねー。やっぱりhidekさんも、技術ベースはWebですもんね。

hidek:そうですね。僕もそう。フロントエンドというか、僕の場合はサーバーサイドの方なんですけど。でも、やっぱりWebっていうプラットフォームは大好きで。自由度とかそういうのを考えるとすごく好きなんですけど。最近、何か注目しているWeb周りの技術ってあります?

紀平:それ、嫌な質問だな。あんまりないんですよね、あんまり(笑)。

hidek:(笑)。

紀平:一応、私の立ち位置的にですね、WebAssemblyがやっぱり大好きなんですよね。

hidek:ですよね。

紀平:はい。そこは外せなくて。ゲームとかが特に影響を受けるところだとは思うんですけれども。なかなかWebAssemblyの未来もそんなに明るくないな、という風にちょっと……。

hidek:あ、そうなんですか?

紀平:はい。個人的な感覚なんですけれども。WebAssemblyを使って、すごく大きな利益をあげる、いわゆる「具体的な使用例」みたいなものはないんじゃないかな、と。

hidek:今、WebAssemblyで提供されている有名なWebアプリケーションって何があるんですかね?

紀平:「中で使われている」という観点で言うと、例えばね、Google Meetなんて……。そこら辺とか。あと、一部で使われてるのでFigmaとかでも使っていることをブログですごく出していたりとかするんですけれども。しかし、そうですね、Google Meetくらい、エンコーダ・デコーダくらいになってくると、結構、WebAssemblyの効果も高いんですけども。実はですね……。WebAssemblyってどんな印象持たれてます、hidekさん。

hidek:やっぱり、ネイティブアプリケーション並みの速度が出せて、ライトウェイトで、高品質なアプリケーションが提供できるプラットフォーム、というイメージですけど。

紀平:そうなんです。僕も、最初、そういう夢を見てたんですけど。最初の速度からして結構怪しくて。

hidek:(笑)。

紀平:いや、これはね、JavaScriptがすごいんですよ。やっぱり早いんですよ。

hidek:あー。

紀平:技術が集まりまくってるんで。普通にWebAssembly並みの速度が出ちゃうんですよね、JITされたあとだと。

hidek:でも、「WebAssemblyもまだ過渡期かな」と思っていて。何を言っているかというと、Meetとかって、WebAssemblyになってからまあまあよく落ちるな、って気はしていて(笑)。

紀平:(笑)。

Webのエコシステムの弱さ

hidek:あれなんですよね。コンパイラがもうちょっと成熟すればいい、って感じなんですかね?

紀平:そうですね。コンパイラもありますし、いろいろな細かい仕様なんかもどんどん定まってくるといいな、と思うんですけど。問題は、そこに投資するモチベーションがもうあんまりないんですよね。

hidek:あー。

紀平:というのも、お金を生まないから。

hidek:うーん。でも、それこそ、ゲームとかだと、Webでゲームやるモチベーションってなかなか。それは、PCであれ、もしくはスマートフォンであれ、そこはちょっとわからないんですけど。より、例えば、投げ銭の動画のコンテンツだとか、ああいうのってヌルヌル感みたいなの求められているし、なんかあるんじゃないですかね?

紀平:そうですね。そういう意味で言うと「Webのエコシステムの弱さ」みたいなものが出ちゃうんですけれども。やっぱり、アプリとかの方が課金とかめちゃくちゃやりやすいじゃないですか。

hidek:あー、なるほどね。

紀平:お金投げるのだって全然やりやすいし。

hidek:うん。

紀平:そういう意味で言うと、「何もそんなにWebで立ち上げずとも、アプリダウンロードしてやればいいよね」と、スマートフォンに限っては、そういう話にどうしてもなっちゃうのかな、と。

hidek:なるほど。

紀平:頑張らなくてもヌルヌルですからね、アプリだったら。

hidek:でも、プラットフォームビジネスの観点で言うと、中抜きをされないので、AppleやGoogleに。より安くとか、もしくはコンテンツ提供者によりインセンティブを高くみたいな、そういうことできそうですけどね。

紀平:そうですけれども、やはり、入口をアプリにしてしまうとアプリで止まっちゃうんですよね。アプリ、規約的に許さないじゃないですか、Webの方に誘導することを。

hidek:はい。

紀平:なので、Webから入ってきてWebに留まってくれる人か、すごくリテラシーが高くてちゃんと自分でWebの方を見つけてそっちから入ってくれる人、みたいなレアな人しか集まらないので、そこに投資する、っていうのは相当大きくならないと厳しいんじゃないですかね。

hidek:うーん。なるほど。

紀平:はい。

hidek:すごく暗い話になっちゃってあれですね。

紀平:そうなんですよー。だから、Webでね、注目している技術っていうのはね、結構、僕、Web大好きなんですけど、ちょっと希望が持ててないんですよねー。

hidek:でも、我々こんだけPCの前に座ってて、普通にブラウザでしか最近は仕事しないじゃないですか?

紀平:そうですね。

hidek:なんかもうちょっと、ここのプラットフォームを使っていろいろなことが提供できそうな気はするんですけどね。

紀平:PCに関しては、僕は、結構やっぱり、さっきもちょっと話しましたけども、ブラウザっていうのは素晴らしいプラットフォームになっていると思っていて。なんでもかんでもPCでできる時代になったと思っていますけど。

hidek:はい。

紀平:それがスマートフォンに来るには、結構厚い壁があるなぁ、という風には感じていますねぇ。

hidek:うーん。なるほどねー。たしかにスマートフォンだと「Webを立ち上げて」っていう機会もやっぱりだいぶ減りましたよね。

紀平:そうですね。あと、アプリ内で普通にね、アプリ内ブラウザみたいなものをポンポンと出されちゃったりして、そうするとCookieなんかも全然共有されないし。

hidek:はい。

紀平:とか、いろいろあって、なんか、Webが使いづらいんですよね。意図的かどうかは別として。

hidek:うーん。なるほど。でも、技術的にはずっと、WebGLもそうですし、WebAssemblyもそうだし、技術基盤はあるのに技術は生まれない、ってなんかすごく悔しいですね。

紀平:そうですね。本当に。それこそやはり鶏と卵で、なんらかのブレイクスルーになるキラーアプリケーションが生まれてくると、結構、一気に変わってくるかもしれなくて。いやー、そこをがんばりたいですね(笑)。何かいいアイデアがあればいいんですけど。

hidek:でも結局、ユーザーがアプリを使うかWebを使うかって、ユーザー行動の話なので、おっしゃるとおり、キラーコンテンツが一旦変えてしまえば、「スマホを立ち上げてブラウザを立ち上げる」っていうユーザー行動がデフォルトになっていけば、PCと同じようにね、一気に風向き変わるような気はしているんですよね。

紀平:でも、いろいろ足りていないものがあってですね。例えば、広告ネットワークですか、アドネットワークみたいなものをひとつとっても、やっぱり断然アプリの方が収益率が高いんですよ。で、Webブラウザでアプリ並みの広告の利益をあげるのは、結構厳しいものが現状あって。そういったものが整備されていくのが、なんらかの金になるということを証明する誰かが生まれてこないと難しいな、とは思っていますが。

hidek:うんうん。

Webの明るい話

紀平:すみませんね。鶏と卵的なことしか言っていなくて(笑)。ただ、明るいニュース、明るいわけではないんですけど、いくつか注目していることもあって。例えば、そうですね、最近すごく広告費を出している『ビビットアーミー』ってゲームあるじゃないですか?

hidek:はい。

紀平:あれなんか、あんだけ広告を出しているということは相当儲かっているんだろうなぁ、と思って見ているんですけれども。完全Webで、App Storeとかに一切出さずにやっている、と。

hidek:はい。

紀平:そういうものでも、ちゃんとビジネスとして、しかも、結構うまく回っている気がするので。そういったものみたいなものが、また今出つつある、と。しかも、それも携帯ブラウザで動くし、広告をタップしたら3秒ですぐにゲームが遊べるみたいな。そういう世界が提供されていて。ちょっと僕の期待しているものに近づいてるなぁ、みたいな。近づいているというか、そういう方向にちゃんと目を向けている人もいるな、というのがちょっと僕はうれしく思っていますね。

hidek:あと、これもずっと紀平さんとDeNA時代によく話していたのは、やっぱりWebのよさって、URLのポータビリティ。

紀平:そうですねー。

hidek:SNSとの相性ってめっちゃいいと思うんですよ。TwitterでURLを拡散して、ポチッとなと押したら、もうすぐ遊べる、もしくは使える、みたいな。

紀平:うんうん。

hidek:そういうのをフックにした何か。ゲームである必要はないと思うんですけど。あの「インストールレス」というのが一番の強みだと思っていて。あとは、いわゆるポータビリティみたいなところ。

紀平:そうですね。本当に。そういう意味で言うと、たぶん、すごいヒットタイトルがあるんですよ、過去に。ずーっと昔からあるんですけども。『診断メーカー』ってやつなんですけど。

hidek:あー、ですよね。はいはい。まさにそういうことなんですよ。

紀平:本当に、あれもバカにしたもんじゃないですね。あんだけ、やっぱり、1ヶ月に1回くらいTwitterのトレンドに載ってますもんね。

hidek:ですよね。「SNSの拡散力×Webのポータビリティ」みたいなところでいうとと、結構、全然僕は捨てたもんじゃないなぁ、とは思っていて。たしかに、おっしゃるとおり、そこにね、収益エンジンみたいなものがやっぱり必要になってくるんでしょうけど。

紀平:そういう意味で言うと、自分の個人的な実験プロジェクトとしてゲームを作っているんですね、私。

hidek:あー、なるほどなるほど。

紀平:はい。特にzigorouさんなんかが、すごくハマって。Kazuhoさんなんかもすごくハマっていただいている、『Block Pong』ってやつなんですけど。

hidek:はいはい。

紀平:あれ、まさに、URLでシェアして、URLをタップするとリプレイがすぐ見られて、そこから収益のためにアプリに誘導するんですけど、マーケティング費がすごく抑えられる、というようなものを目的にやっていて。そこそこよい結果出してくれてますね。うん。

hidek:やっぱ、ビジネスプラットフォームとしてはね、まだまだ捨てたもんじゃないなぁ、と思うし、それを支える技術というのもすごく揃っている。昔と違ってね。そもそも「Androidのブラウザが死ぬほど落ちる」みたいな時代があったのに比べると、だいぶその辺の品質の安定も図られているので。

紀平:そうですねー。僕は、そういうのをこの5年くらい、もっとかもしれないですね、ずーっと「そろそろ来るんじゃないか」というのを思い続けて今に至っているので、結構、絶望深いですよ(笑)。

hidek:(笑)。でも、それでも諦めてない紀平さんはかっこいいじゃないですか。

紀平:ありがとうございます。ものは言いようですね(笑)。ただ、そうですね。諦めてはいなくて、今でも普通に何か新しい、シェアっていうのはすごく昔から、これがWebのね、ひとつの大きなアプリにはできない新しい価値の作り方だとは思っているので。そこに絡めて何かできないかなぁ、というのはずっと考えているんですけどね。

Webの世界が花開くとき

hidek:うん。僕は、個人的にもWeb大好きですし、紀平さんのWebに対する熱意というのも好きなんで、ぜひ、諦めないでいただいて、何か花開くといいなぁ、と(笑)。

紀平:(笑)。いやー、本当に。自分にに花開かなくも、その世界が来てくれるだけでも、僕は、結構「報われた感」が強いんですけれども。そこに少しでもね、協力したいな、とは思っていますね。

hidek:めっちゃいい話ですね。泣いちゃいそうです(笑)。

紀平:あれですよ。その世界が来たら一緒に泣きましょう(笑)。

hidek:そうですね。いいですね。一緒にまたお酒を飲みながらそういう話がしたいですね(笑)。

紀平:(笑)。そうですね。もう随分ね、状況もよく、ワクチンなんかもなってきたんで、いずれまたリアルで会えるといいですね。

hidek:そうですね。ぜひぜひ。会社も近いことですし(笑)。

紀平:そうでしたっけ? 家から出ないんでよくわかんなくなってきました(笑)。

hidek:(笑)。はい。ありがとうございます。池上さん、こんな感じで録れ高どうでしょう?

gamiさん(以下、敬称略):はい。時間的には十分かな、と思います。

hidek:ありがとうございます。どうでしたか? 聴いてみて。

gami:すごく、Webっていう技術を通じて、ずーっと、「業界をWebっていう軸で見る」っていうことがあまりなかったので、そういう意味で面白かったですね。Flashとかから始まって、アプリの中のWebViewの話から、アプリ・Webの違いだったりとか、どっち、「Webの復興があるのか?」みたいな話から。僕もすごくWebが好きなので、Webが今後どうなっていくのか、すごく楽しみになりましたね、聞いていて。

hidek:よかった、暗い話にならないで(笑)。

gami:そうですね(笑)。収録前に「暗い話になるかも」みたいな話があったので、ドキドキしながら聞いていたんですけど。

紀平:(笑)。そうですね。まだ、未来に希望はまだあるかな、という感じではありますね。ただ、現状はなかなかキツいなぁ、というのが正直なところかなと思っています。

gami:うんうん。

hidek:でも、技術的な品質面が安定したのが、僕はすごく大きいと思いますよ。

紀平:そうですね。それは間違いないですね。

hidek:昔だとね、やっぱりブラウザの差異だとか、そもそもVMの不安定さだとか、いろいろなものがあったのが、だいぶ解消されてきているんで。

紀平:とは言ってもね、まだね、ブラウザの気持ちを汲まなきゃいけないことは結構多いですけどね。

hidek:(笑)。

紀平:どうしてもね、間にエミュレータが入っているようなもんなんでね。もう、こればっかりはしょうがないですね。

hidek:だから、そこがもうちょっとクリアされると、いわゆるWebのよさのポータビリティみたいなものもより活きてくるのかな、とは思うので。はい。まだまだ期待できると思います。

紀平:はい。そうですね。また今後、近いうちに、そういう話が表に出てくるといいな、と思います。

hidek:そうですね。はい。

gami:はい。じゃあ、もし、お聞きの方でも、Webに対して一家言ある方がいらっしゃいましたら、ぜひ、stand.fmのコメント機能とかTwitterのハッシュタグ、#hidekのエンジニアと長話、までいただければと思います。最近は、そんなに感想が来ていない気がするので、これを聞いて思ったことがある人は、どしどし書いてもらえるとうれしいかな、と思っております。

hidek:お待ちしてまーす。

gami:お待ちしてまーす。はい。じゃあ、こんな感じですかね。話し足りないことなどなければ。

hidek:はい。そうですね。

gami:じゃあ、本日、紀平拓男さんをお迎えしてお送りしました。紀平さん、ありがとうございました!

紀平:ありがとうございました!

hidek:ありがとうございました!


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