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hidekのエンジニアと長話 第1-1回【全文書き起こし】

2020年10月より、メルペイVPoEのhidekさんこと木村秀夫さんをメインパーソナリティにお招きした番組がはじまりました!
毎回登場する様々なゲストエンジニアとともに作っていくスペシャルトーク番組で、番組のアシスタント役にはプレイドのエンジニアである池上(gami)さんもお招きしています。
技術的な内容だけではなく、プロダクト、事業、マネジメント、業界で話題のニュースについて、さらには趣味やライフスタイルなど、木村さんとゲストが「今」興味のあるトピックを幅広く語る番組です。 リスナーから寄せられるレターにもお答えしながら、時には真面目に、時にはゆるくトークします。

第1-1回の今回は、LINE株式会社の上級執行役員である池邉智洋さんをお招きして、LINE執行役員のお仕事やOSSに対する考えなどをお聞きしました。

※本記事は、2020年10月9日にstand.fmにて配信を開始した番組を書き起こしたものです。

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Profile
<ゲスト>
池邉智洋 氏
LINE株式会社 上級執行役員

<「hidekのエンジニアと長話」メインパーソナリティ>
hidek(木村秀夫)氏
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)

<「hidekのエンジニアと長話」アシスタント役>
gami(池上)氏
株式会社プレイド エンジニア

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・はじめに
・ふたりの関係について
・エンジニアとしての経歴
・LINEの執行役員としての仕事
・OSSは自己表現のための"ライブ"だった

はじめに

gamiさん(以下、敬称略):皆さんこんにちは、gamiと申します。この番組は、stand.fmというプラットフォームで配信されているエンジニア向けのポッドキャストです。まだタイトルは決まってないのですが(後日「hidekのエンジニアと長話」に決定しました)、stand.fmさんに直々にお声がけいただいて、「エンジニア向けのポッドキャストをやってくれないか」ということで新たにはじめることになりました。
僕は進行役なのですが、メインパーソナリティには別の方をお呼びしてお送りしていきます。hidekさんです。よろしくお願いします!

hidekさん(以下、敬称略):どもども。よろしくお願いします!

gami:軽く自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。

hidek:はい、hidekと言います。今、メルカリのフィンテックの子会社であるメルペイで、VP of Engineeringという役割をやっています。僕らのCTOに曾川さんという人がいるのですが、曾川さんはどちらかというと技術だとかプロダクトビジョンみたいなところを示す担当です。僕はエンジニアの組織設計だとか、もしくはプロジェクトマネジメントみたいなところで役割分担してやっています。よろしくお願いします!

gami:よろしくお願いします! メルカリさんやメルペイさんのメディアで、hidekさんがいろいろな社員の方にインタビューしている記事とかを見たりしていて、「ぜひ、ラジオのパーソナリティにどうですか?」とお願いしました。

hidek:ありがとうございます。客寄せパンダをやっていますけれど(笑)。ぜひうまく使ってください。

gami:いえいえ(笑)。そして一応、僕の自己紹介も軽くしておくと、進行役のgamiこと池上と言います。普段はプレイドという会社で働いていて、趣味で「しがないラジオ」というエンジニア向けのポッドキャストを3年くらい続けています。そういう経緯もあって、「ポッドキャストをある程度やっている人」ということで、stand.fmから企画と進行役でお声がけいただいたという感じです。この2人で基本的には運営をやっていこうかなと思っています。
この番組では、毎回ゲストの方をお呼びしてお話を聞いていく形になります。本日もゲストの方をお呼びしています。今日のゲストは池邉智洋さんです。よろしくお願いします! パチパチパチパチ。

池邉さん(以下、敬称略):はい、こんにちは。池邉と申します。私はLINE株式会社で上級執行役員をしています。LINEファミリーサービスという、皆さんがよくご存知なところだとLINE NEWSだとかLINE LIVEだとか、いろいろなサービスをLINEという会社はやっているのですが、そういったところを中心に開発のマネジメントをしております。本日はよろしくお願いします。

hidek:よろしくお願いします!

gami:よろしくお願いします! 基本的には、hidekさんとゲストの方が楽しく話すような内容にしたいと思っていますので、ここからはhidekさんにバトンタッチして、池邉さんのいろいろなことを深掘りしていただけると嬉しいなと思いますので、よろしくお願いします。

hidek:はい、了解しました。どもども池邉さん、こういう場で話すのはちょっと照れくさいですね。

池邉:そうですね、はい(笑)。

ふたりの関係について

hidek:もともと、僕も池邉さんもPerlという言語、だいぶ古いのですが(笑)OSSのコミュニティなどにちょこちょこ入っていました。そこでお互い知ってたんですよね、たぶん2005年とか2006年とか、そのくらいのころ。でも積極的に話す機会というのはあまりなくて、一番のきっかけはお互いにAKB48が好きで、あのころIRCだっけ、まだ?

池邉:そうです。界隈のエンジニアがいっぱい入っているIRCですね。

hidek:そうだ。それで僕がAKBのチャンネルを作ったら、たぶん最初に入ってきたのが池邉さんだよね?

池邉:そうですね。「チャンネル作った」みたいなものを見て、そっと入りました。

hidek:(笑)。それで、「あ、池邉さん、どうも」みたいなのが最初に深く付き合うようになったきっかけですよね。あれは、たぶん2010年とかですよね?「ポニーテールとシュシュ」のころ(笑)。

池邉:音楽はいいですよね。こういう時にパッと思い出せるので。「あのころはあの曲」というので。

hidek:そこから結構もう深いつながりで、一時期、週8くらいで一緒に飲んでた(笑)。

gami:週8はすごいですね。計算がおかしい(笑)。

hidek:否定しないよね、これ?

池邉:そうですね。ほぼ毎日会ってた時期はありました。

hidek:ありましたよね、土日も含めて。一緒に遠征行ったりとか。名古屋で遠征してベロベロに酔っ払ったりとか。

池邉:たしかに。そうですね。

hidek:だからそこから付き合いはじめて10年以上?

池邉:そうですね、10年以上だと思います。

hidek:ありがとうございます。

エンジニアとしての経歴

hidek:ということで今回、こういうお話をいただいて、「一番最初のゲストは誰がいい?」というところで、お声がけさせていただいたので、ぜひお付き合いよろしくお願いいたします。
池邉さんって、もともとはオン・ザ・エッヂ、ライブドアじゃないですか。その時はサーバーサイドエンジニア? その時はもうPerl?

池邉:はい、その時はPerlですね。オン・ザ・エッヂはほとんどのものをPerlで書いてましたね。

hidek:その時って、Perl5? 4?

池邉:5です。5の最初のころというか、5です。

hidek:CGIではなかった?

池邉:えっと、CGIもありました。CGIもあったけど、mod_perlをよく使ってたかな。

hidek:mod_perl、懐かしいね。Apacheのあれね。

池邉:そうそうそうそう。Apacheモジュールで動くmod_perlが流行ってて、Apacheも1.3系なので、mod_perl 1系というやつですね。

hidek:はいはいはいはい。めっちゃ難解なやつね。

池邉:そうですね(笑)。

hidek:それでそこから時を経て、執行役員になったのがライブドアの時の2007年?

池邉:そうですね、はい。いろいろあった後ですね。

hidek:はいはいはいはい、いろいろあった時ね。あの時って、それまで普通のプログラマーというかプレイヤーで、早いうちにマネジャーになったんですか?

池邉:そうですね。オン・ザ・エッヂってもともと受託の会社だったんですよ。最初は営業の人と組んで案件を受けて。当時の営業で一緒に行動していたのが、今、弊社の社長をやっている出澤とかも営業だったので、その出澤さんと一緒に客先に行っていました。あとは客先に行って要件聞いて仕様化して、それでチームのメンバーと一緒にやっていくという感じでした。割と早い時期からマネジャーというか、当時、テクニカルディレクターという肩書きを使っていました。何をするかと言うと、客前に出てちゃんとお話をしてくるのと、あとは会社に戻ってきたら、チームをまとめてそのチームに仕事を割り振って最終的な納品物を作る、みたいなことを最初はやっていましたね、オン・ザ・エッヂという会社は。

hidek:たぶんこの時期って、今でこそエンジニアリングマネジャーとかVP of Engineeringとか、組織にコミットする人っていうのが存在するけど、当時ってあんまりそういう考え方ってなかったよね?

池邉:そうですね。たぶん作るものも、今と比べるとだいぶ小さいというか、割とよくあったのがキャンペーンのサイトとか。今もよくあるけど、「飲み物を買ってシリアルを入れると何か当たる」みたいなものとか、そういう企業の割と広告に近い案件みたいなものが多かったですね。期間も短いしそんなに大きなものではないので、マネジャーというよりは、「一番手を動かしつつ、一番仕様も理解していて、かつ、他の人にも仕事を振る」みたいな役割ですね。

hidek:なるほどね。その延長線上でこの時期に執行役員CTOという形で経営に入っていく感じかな?

池邉:いや、執行役員CTOになったのは、本当に事件の後です。当時はたぶん、テクニカルディレクターのシニアがついたとかそういう感じでした。その後、受託はあまりスケールしない、人の頭数以上には伸びていかない、というかそういう事業なので、「自社サービスをやった方がいいね」ということで、当時の社長がライブドアという会社を買ってきました。そこを足掛かりに自社サービスをやるので、「開発の中で誰かそこの担当をやらない?」と言われて、僕はその時すごく自社サービスがやりたかったので、「じゃあ僕がやります」という感じで移りました。
当時、僕は10年以上、明示的な転職をしていないんです。そしてその時が一番「会社を辞めよう」と思っていて。

hidek:あ、そんなことあったんだ!

池邉:そうですね。受託事業って結構疲弊する割に、あまり残らないというか。「この○○会社のこのキャンペーンサイトを俺が作った」と言っても何も残らないので、もう少し自社サービス・自社プロダクトの会社とかに行きたいなと思っていました。ですが、ちょうどそのころ、当時の社長の堀江さんが「自社サービスをちゃんとやりたい」ということでそういう話が来たので、そこでやるのであれば、出来上がったものに途中から参加するよりも最初からやった方が面白いのかな、ということで残りました。自社サービスをやれるのであれば全然今の会社に残ろうとなりました。それ以外には特に不満はなかったので、周りともすごく仲良くやれていましたし。という感じで、最近あまり言わないですが、同じ会社のまま、いわゆるポータルサイトを開発というところに業務内容は移ったという感じです。

hidek:なるほどね。今もおっしゃってくれたけれど、池邉さんはずっと同じ会社じゃないですか、社名は変わっても。転職というものをどう考えていたのかな、と思ったり。そういう時期もあったんですね!

池邉:そうですね。一応、ありますよ。

hidek:そうなんだ! これだけ長い付き合いだけど初めて聞いた(笑)。

LINEの執行役員としての仕事

hidek:そして、紆余曲折を経て、今はLINE。今の役割、上級執行役員という役職ですが、どういう仕事、具体的にどういう立ち位置なんですか?

池邉:CTOはパク・イビンさんという人がいます。私はどちらかというと、そこでいうとプロダクトで分かれている感じですね。LINE本体というよりは、LINEのプラットフォームを使ったプロダクトの開発のマネジメントと、日本にいくつかある別の開発拠点、京都と福岡なのですが、私が担当役員として見ています。あとは、ウェブサービスってゼロイチの立ち上げと、そこから1を10にする、10を100にするというのはフェーズが違うと思っています。それで言うと10から100とか、そのくらいのところを担当する組織というのは別にあった方がいいのではないかということで、Growth Technologyというそういった組織も持っているという感じですね。

hidek:僕は今メルペイで働いているんだけど、メルペイもメルカリというひとつのプロダクトの中で2つの会社が役割・機能分担して開発してるんだよね。結構難しいなと最近感じていて、「プロダクトとしての統一性」みたいなところはどこが持っているんですか?

池邉:プロダクトとしての統一性……。そこはLINEのプラットフォームを持っているところというか。LINEのプラットフォームのプロダクトマネジャーが「これはLINEとしてやっていいこと・悪いこと」というのは明確にあるというか。ただ、あまりそこで揉めるではないですが、完全に違う方向に各サービスが進むというこはあまりないのかなと思います。「こういうことをLINEはやらない」みたいなことや「こういうことはLINEっぽいね」みたいなことは、言語化されていたりされていなかったりですが、割と会社全体としてコンセンサスは取れている方だと思います。

hidek:そういうことの浸透で何か工夫していることはありますか?

池邉:ウェブにも載っていますが、LINE STYLEとか、よくある「クレド」みたいな、そういうものはちゃんと冊子にして配られています。あとは、全社集会だとかで折に触れて話されますし、部署ごとのワークショップでもそのあたりを題材にしたりしています。行動指針には力を入れてやっている方かと思います。

hidek:そういうことを推進するチームもあったりしますか?

池邉:そうですね。その辺りは専門でやってくれているチームがありますね。

hidek:そういうところにも経営としてコストをかけてやっているんだ?

池邉:そうですね。やっぱり、プロダクトが立ち上がってLINEもすごく長いので、9年目なので。最初のころは設計思想みたいなものを伝えられる範囲が狭いので、人も少ないので、あえてそういうものを作らなくても伝わると思います。ですが、やっぱりある程度時間が経ってくると、新しく入ってくるメンバーも多いので、「LINEというのはこういう思想の上に成り立っているんだよ」というのは明示的に言わないとわからないので、というところに来たというのはあると思います。

hidek:特にLINEとかだとそうですよね。海外のエンジニアとか海外拠点とかもあるから、そういうのがより重要になっていますよね。

池邉:そうですね。組織自体の多様性も大きいですし、新しい人・社歴が短い人も多いので、そうすると、そういうのは丁寧にやって、やり過ぎるということはないのかなと思いますね。

hidek:ここをもうちょっと聞いてみたいんだけど、僕も最近悩んでいるところではあるので(笑)。グループ全体で注力したいものができる時ってあるじゃないですか。例えば、LINEだと、一時期CLOVAというAIのところや最近だとフィンテックも力を入れていると思うんだけど、子会社間でリソースを寄せるみたいなことってしますか?

池邉:子会社間でリソースを寄せる……。「エンジニアをこっちからあっちに急に持っていくぞ」みたいなことですか? そこを明示的に「他の事業から剥がして」というのはなかなか難しいとは思うんですよ。制度的には、社内公募みたいなものはやっていて、それで新しい新進気鋭の「これから力を入れていくぞ」というようなプロダクトはそこでプレゼンテーションをして、「じゃあこの新しい船に乗りたいな」という人からはじめるくらいですかね。

hidek:なるほどね。とはいえ、経営としては「この時期までにこういうプロダクトを世の中に出したい」という計画だったりとかがあるじゃないですか。そうするとやっぱり人は必要なのかなと思うのですが、そこはボランティアベースで進める感じなんですかね?

池邉:ただ、コアのメンバーは明示的な異動もあります。

hidek:結構その辺のエンジニアのウィルとかとのバランスがすごく難しいなと最近、今更ながら思うようになっていたので勉強になりますね。
あと、僕も2013年かな、前職DeNAという会社なんですけど、そこで執行役員という形で経営に入るようになって、たぶん今、近しい立場だと思うんですよ。だけど、なかなかそういう人って周りにあまりいなくて、経営に近いところだとそれこそ取締役社長もやっているよね。具体的にやっている仕事というか、営業の数字や財務指標などの数字はどこまで気にしたりどこまでコミットしていますか?

池邉:数字で言うと、あまり売り上げみたいな数字に私の立場でコミットするということはないですね。予算策定とかはもちろんやりますし、コストの方はそれなりに見ます。「各プロダクトの調子がどうなんだ」とかそういうことは把握していますけど、そこに対して明確にコミットメントが私に持たされているという感じではないですね。基本的にはお客さんというか取引相手がLINE社なので、あまりそこですごく利益を出さなければならないというわけではなく、むしろ開発組織としてちゃんとやっていってちゃんと成立せるということの方が大事ですね。

hidek:でも取締役社長の立場だと、それこそPLやBSをしっかり見ないといけないとかないんですか?

池邉:そこはでも財務担当とかがちゃんとついてくれているので、そこで私が頭を悩ますという感じではないですね。

hidek:なるほどね。最低限のところを見て、あとは任せるということか。経営の中の役割分担はちゃんとできているということなのかな。わかりました。

OSSは自己表現のための"ライブ"だった

hidek:あと話したいのは、お互い古参じゃないですか(笑)。で、池邉さんがいわゆるプロのエンジニアになったのって2001年?

池邉:2001年ですね。

hidek:2001年って、ネットバブルはもう弾けてる?

池邉:弾けているんだと思います、世の中的な認識だと。

hidek:そっか。そこからお互いだいぶいい古参なんだけど。ここ10年くらい? 僕らは、いまだにウェブサービスって言っちゃうんだけど、いわゆるインターネット業界ですよね。環境変化みたいなものでエンジニアの働き方や世の中への影響みたいなところをちょっと話してみたいんだよね。たぶん僕らの一番の交差点って、2006年ころにブログブームって来たじゃないですか。Movable Typeがめっちゃ流行って。あれでたぶん、それこそmiyagawaさんとか伊藤さんとか、あの辺が本を書いて、Perlがめっちゃ盛り上がった時期、ちょうどモダンPerlに移り変わった時。あの辺が結構僕ら、近しい交差点なのかなと思うんですけど。池邉さんが一番最初に触れたプログラミング言語ってなんですか?

池邉:なんだろう。あ、MSX-BASICとかだ。そういう意味ですよね? 仕事としてとかじゃなくて。仕事としてはウェブのアプリを書いていたのでPerlじゃないかな。

hidek:僕が一番最初に触れたのはN88-BASICなんだけど、一世代前だね(笑)。最初にプロとして書いたのはCかな。あの時ってさ、めっちゃPerlブームが来たじゃないですか。でも、もともとPerlのエンジニアたくさん欲しかったからありがたかった?

池邉:ブームが来てですか? うーん、そうですね。でも、あのころに「Perlの書き方が揃ったな」とは思いましたね。それまではPerlは自由度が高すぎて、「Perl書けます」って言った時の「書けます」の幅がえらく広いなみたいなことがあって、他の言語にはない特徴というか。いいことだとは思うんですよね、簡単にはじめられて。特に昔って、プログラミングをはじめるのにお金がかかったじゃないですか(笑)。今だとVS Codeとかもあって、普通の環境を作るのに多額が不要で。Perlとかって簡単にはじめやすかったというのはひとつすごく良かったのかなと思います。だけどその結果、「書ける」のレベルが「use strict もしていない」みたいな。「それは書けているとは言わない!」みたいなことが起きていたので、それが「綺麗なコードというのはこういうのだよ」というのが広がった。そういう意味では、その時に、結構Perlを採用している会社さんって多かったじゃないですか、mixiさんとかも。そういうところにとっては、ある一定の基準ができたんじゃないかなとは思いますね。

hidek:OSSへの貢献というか関わりみたいなことって、この時期にライブドアってやっていましたか? 推奨するじゃないけど。

池邉:オープンソース…。そうですね。やっていたというか、普通にCPANモジュールとかあげている人とかはポロポロいたと思いますし、たぶん僕もApacheモジュールみたいなものを普通にポロっと置いていた気はします。「オープンソースに貢献」みたいな大それたことではなく、「作ったし便利そうだから使えるように置いておくか」みたいな気分で置いていた。当時ってそれくらい牧歌的だったじゃないですか(笑)。

hidek:そうですね。でもね、DeNAに僕が入ったのが2009年で、DeNAの会社の文化だったのかもしれないけど、結構Perlを使っていたじゃないですか。僕が入った時で、まだOSSコミッターみたいなやつってなかったし、CPANにあげるということもあまりなかった。そもそも、YAPCでの登壇とか。やっぱりその辺ライブドアという会社はめっちゃ先駆けというか、そういう目で僕は見てたけどね。

池邉:それはなんなんですかね、ライブドアのその感じは。でも昔からなんじゃないですか? miyagawaさんとか弾さんとかもいたし。

hidek:そういう人たちがいたのも重要だったのかなぁ。

池邉:そうですね。そこに対して疑問みたいなものとかもあまりなく。当時は、割とプロジェクトにベタっとしたコードを書くより汎用性の高いコードを書く方が難しいし、綺麗に書けるじゃないですか。それでメンテナンス性も高いし。なので、「これはいい感じに切り出せそう」になったらクラウドサービスかのようにCPANにアップしてたんだと思います。クラウドストレージのように(笑)。そうしておくとインストールとかも楽になるじゃないですか。当時で言うと、SubversionとかCVSとかからチェックアウトしてビルドしてとかよりは、CPANのエコシステムに乗っておいた方が楽だし、バグ見つけてくれて適度に圧もかけてくれるので、ちゃんとコードの質も高まるし、という。割とそのくらいの気持ちでやっていたような気がしますけどね。

hidek:その話って今でこそ当たり前と言えば当たり前じゃないですか。PerlのCPANというよりはGitHubになったりだとか。その辺の、エンジニアのもともとの性質というか、そういうのがうまく活きていて、傍目から見ていいなとお手本にしていました(笑)。

池邉:はい、そうですね。当時、僕が誰かと話していたのは、エンジニアはすごく楽器をやる人が多かった気がしていて、hideさんもそうだけど。ギターとかベースとかドラムとか。割とプログラムを書く人はそういうことをやっている人が多くて、そういう延長で活動しているのかなと僕は思っていました。

hidek:どういうこと(笑)?

池邉:家でコードを書くのって、個人練なんですよ。でも、ギターとか弾いていてずっと個人練で終わる人ってあまりいなくて、大体ライブハウスで箱借りてライブやったり文化祭に出たくなったりするじゃないですか。それがCPANアップロードなんです。やっぱり、世に打って出たいんですよ、きっと。

hidek:なんかそれわかるわ(笑)。承認欲求なのかな。なんなんだろう?

池邉:うん、承認欲求なのかもしれないですね。

hidek:自分の作品と言うとおこがましいけれど、腕前とかを世に出したいというのはたしかに近いかもね。池邉さんもやるもんね、ギター。

池邉:そうですね、多少。

hidek:そっかそっか、結構たしかに多いね、楽器やる人。個人名出していいのかわからないけど、御社のYappoとかもピアノとかやるでしょ?

池邉:そうね、やるね。nipotanとかもめっちゃギター弾くね。

hidek:miyagawaさんもやるの?

池邉:miyagawaさんはベース弾くんじゃない?

hidek:そうなんだ! 音楽好きだよね。そうだよね。へー。たしかzigorouさんも何かやってたな。

池邉:なので、割と自己表現のひとつみたいになっていた時期があったような気がしますね。

hidek:なるほどね。

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第1回~第3回までが、初回ゲスト池邉智洋さんをお招きしてのトークとなっています。今後もさまざまなゲストをお招きして放送を重ねていく予定ですので、ぜひ番組フォローよろしくお願いします!


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