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hidekのエンジニアと長話 第7-2回【全文書き起こし】~ゲスト:Supership exCTO 山崎大輔氏~

stand.fmで配信中の「hidekのエンジニアと長話」7人目のゲストは、Supership exCTOの山崎大輔さんです。

「hidekのエンジニアと長話」は、メルペイVPoEのhidek(木村秀夫)さんをメインパーソナリティにお招きし、ゲストエンジニアとともに作っていくスペシャルトーク番組です。

第7-2回の今回は、Supership exCTOの山崎大輔さんをお招きして、広告配信システムに使用した技術やEXITを選んだ理由、ストックオプションなどについて語りました。

※本記事は、2021年6月18日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。


ゲスト
山崎大輔(@yamaz)氏
Supership exCTO

メインパーソナリティ
hidek(木村秀夫)氏 @hidek
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)

パーソナリティアシスタント
gami(池上)氏 @jumpei_ikegami
株式会社プレイド エンジニア

ひとりで起業した話

hidekさん(以下、敬称略):でも、リストラされる側からリストラする側になったわけじゃないですか?(笑)

山崎さん(以下、敬称略):あー、そうですね。

hidek:事業を立ち上げて「うまくいかないリスク」も当然あると思ってて。それはそれで結構チャレンジングだな、と思ったんですけど。その辺には勝算とかあったんですか?

山崎:で、ちょっといやらしい話なんですけど、一応ちょっと初期に入ったので、いくばくかのストックオプションを持っていたんですよ。

hidek:あー、なるほどね。うんうん。

山崎:そんなバカみたいな金額は持ってなかったんですけど、2〜3年くらいは贅沢しなければいい感じに生活できるかなー、みたいな金額はちょっともらっていて。

hidek:はいはい。

山崎:で、だからその間にうまいことやって、「鍛え直したらまた復活しよう」と思ってたんですよ。だから、本当は起業とか全然なくて、ちょっと英語とかプログラミングをガッツリ書けるとか、そういうのを勉強して、「またYahoo!に戻ろう」とか思ってたんですけど。ちょっとそのとき、いろいろなあやで、あるメディア企業の社長から呼び出しをくらって、「山崎くん、ちょっと広告システムのこと結構詳しいらしいじゃん?」みたいな話をされて。

hidek:うんうん。

山崎:で、「うち上場したばかりで広告システムがほしいから、いいのできたら採用してあげるから作って持ってきてよ」って言われたんですよ。

hidek:へー。

山崎:で、「あー、なるほどなるほど」と思って。で、僕、当時、勉強とかしたかったから、「おー、これはちょうどいい話だな」と思って。ちょっとこもってプログラムを書いて、半年くらいで「Yahoo!の広告システムのなんちゃって版」みたいなのができたので持って行ったんですよ。

hidek:はい。

山崎:そしたら、「もうほかのシステム入れたからちょっと無理だ」って言われて。

hidek:(笑)。

山崎:ひどいひどい(笑)。そう。でも、せっかくできたし。で、僕、そのときに考えたのは、「採用されなくても、このシステムを名刺代わりにして転職活動すれば、どこかに引っかかるな」って思ったんですよ。だから、僕ね、どこにも引っかかれなかったら楽天に持っていこうと思ったんですよ。

hidek:はい(笑)。

山崎:絶対にほしがると思ったので、当時。そう。だから、その辺りの心配はなく。で、そのあと、システム的にちょっとダサかったから、もうちょっとブラッシュアップするか、と思って3ヶ月くらいブラッシュアップしたのちに、もう一回ちゃんと営業し直したんですよ。あっちこっちに。

hidek:はい。

山崎:そうしたら「使ってもいいよ」って話になって。で、当時、広告システムって、年間ライセンスで6,000万円くらいで売れた時代だったんですよ。

hidek:はいはい。

山崎:だから、一回それを売ると、毎年6,000万円入ってくる、っていう話なんですけど。

hidek:はい。

山崎:で、ひとりで6,000万円もらうのはだいぶ勇気がいったので、ちょっと声を震えながら「さ、3,0000万円で……」みたいな話をしたらギリギリ通ったので起業した、っていうそんな感じです。

hidek:(笑)。あ、そうなんですね! じゃあ、別に「起業しよう」って辞めたってよりは、辞めて、勉強がてらというかニーズもありつつ作ったものが完全に売りものになった、と。じゃあ、起業って言っても完全にひとりなんですね。

山崎:そうです。最初はひとりでした。

hidek:えー、すごい。めっちゃコスパいいじゃないですか。

山崎:そうなんですよ。

hidek:えー、すごいですねー。

山崎:すごいかどうかはわからないですけど。よかったです。

広告配信システムに使用した当時の技術

hidek:ちなみにそのときに作った広告システムって、技術的にどういうものなんですか?

山崎:スタック的には、管理システムはRailsで、配信システムはCで、当時、Hadoopとかなかったので、集計システムもRailsで頑張って書いた、って感じです。

hidek:えー。

山崎:分散システムみたいなのを書いて、簡易分散システムみたいなのを作って、っていう感じでした。

hidek:僕、広告配信システムって、そこを通ってきていないのであまり詳しくないんですけど、大規模に配信しようとしたら並列度を上げていって、かつ、スケジューリングを結構しっかりやらなきゃいけないのかな、ってイメージなんですけど。

山崎:ええ、ええ。

hidek:じゃあ、その辺も完全に、今だったら結構ミドルウェアあると思うんですけど、それも自前で作ってったってことですか?

山崎:そうですそうです。ただね、ちょっとこれ裏話になるんですけど、裏話って大した話じゃないですけど、当時、広告システムを作ろうっていうプレイヤーっていなかったんですよ。

hidek:はいはい。

山崎:で、なぜかというと、Googleとか、DoubleClickですよね、DoubleClickとかYahoo!とかいくつかの会社があるだけで、だいぶシステムがややこしかったので、自分で作るのがだいぶしんどいシステムだったんですよ。だから、業界的にエンジニアも含めて「広告システムって自前で作るもんじゃないな」っていうのが10年くらい続いてた時代だったんですよ。

hidek:うんうん。

山崎:2006年? そうなると何が起きるかというと、10年間「システムは作るもんではないな」って話になるんですけど、ミドルウェアって進化するじゃないですか?

hidek:はい。

山崎:昔はC++で頑張って、管理画面も全部C++で頑張って書く、みたいな感じだったんですけど。だから、O/Rマッパーとかもなくて、頑張ってSQLを生で書いて、みたいなそんなノリだったんですけど。2006年時代では、たまたまRailsとかがあって、OSSの力をフル活用できたんですよ、10年分の。

hidek:うんうん。

山崎:そうすると、昔は10人くらいで書かなきゃいけなかったソフトウェアが、一応、根性出せば、なんちゃってでよければ、ひとりで書けるくらいのレベルに落ちたんですよね。

hidek:なるほどね。

山崎:だから、それを利用した、って感じです。

hidek:なるほどなるほど。当時、何年くらいですか?

山崎:2006年です。

hidek:2006年? 2006年にRailsに突っ込んでくって、結構勇気いるイメージあるんですけど(笑)。

山崎:あのね、その話もします?(笑)

hidek:(笑)。

山崎:僕、もともとPerlerだったんです。

hidek:あ、そうなんですね!

山崎:そう。で、一応、PerlとJavaがちょっとできる、って感じだったんですけど。僕、Cが一番詳しくて。

hidek:はい。

山崎:Cとか配信周りが結構得意で。Yahoo!のイメージサーバーとか交換システムはCで書かれていたので、そっちの方が得意だったんですよ。

hidek:はい。

山崎:「管理画面作らなきゃいけない」って話になったときに、「じゃあ、どのフレームワークで作るか」っていう話を検討しなきゃいけないじゃないですか?

hidek:あー。はい。

山崎:で、そのときに、フレームワークは置いておいて、O/Rマッパーがすごく大事で。

hidek:はいはい。

山崎:で、そのときに、いろいろ候補にあがったんですよ。PHPとかJavaとかPerlとかがあったときに。で、Perlで当時一番強かったフレームワークがCatalystで。

hidek:はい(笑)。

山崎:ちょっと今、hidekさん、半笑いしましたけど。

hidek:いやいや、違う違う。私はどっちかというと、Catalyst、結構、コミュニティに参加してたので(笑)。

山崎:で、FreeBSDでCatalyst動かすの超大変で。

hidek:あ、そうでしたっけ?

山崎:あのね、全然インストールできないんですよ。

hidek:あー、そうでしたっけ?

山崎:そう。全然できなくて。インストールするだけでめっちゃ大変で。「これ、どういうことよ?」とか思って、ダメだと思って。で、ちょうどRubyが出てきたとこだったので。

hidek:はい。

山崎:Rubyで試しに入れてみたらgem一発で入って。しかも、ActiveRecordって本当に素晴らしいO/Rマッパーで。「こんなラクにSQLを気にせずに書けるんだ」って話になって、「Rails万歳!」みたいな、そんな感じです。

hidek:なるほどですね。たしかに当時、CPANモジュールのインストールって厄介は厄介……。

山崎:本当にね、「CPAN地獄」っていう単語があったと思うんですけど。もう、ひどい。

hidek:(笑)。今でこそ、というか今はあんまり使われてないのか、そういうのを経て、一回、CPANモジュールのパッケージングって、意外と整理されたんですけど。たしかに当時はCatalystが出たころのときは、CPANのインストールは結構四苦八苦っていうのはあったかもしれないですね。

山崎:そうなんですよね。で、そのとき、たまたまFreeBSDだったんです。Linuxだったら、たぶんCatalystはサッと入ったはずなんですよ。

hidek:はいはい。

山崎:だから、FreeBSDがゆえにCPANが上手に入れられなくて、たまたま逃げ込んだRubyが超よかった、っていう話は結構よくて、すごくラッキーだったんですよね。

hidek:なるほどね。Catalystもそもそも、Railsが出てきて、いわゆるコマンド一発でサイトのスケルトンみたいなのができるという。はい。売りだったので。まあ、その筋としてRailsっていうのはアリですよね。なるほどですねー。そのころ、ミドルウェアってあまりないですかね?

山崎:ないですよ。

hidek:MySQL……、そんなにあれですし。キューイングのシステムとかもないですよね?

山崎:ないですね。MQ的なやつはないですね。

hidek:ないですよね。デファクトスタンダードなかったですよね。なるほどなるほど。そういうのはもちろん自前で作って。でも、そのあと結構、それこそフリークアウトだとか、いろいろな会社が、いわゆる広告配信というところにビジネスとして突っ込んできて。だいぶその辺は、ミドルウェアというかOSSの貢献が大きいんですかね?

山崎:やっぱり大きいですね。そうですね。その辺りが大きくて。僕、フリークアウトとか、いろいろな会社よりも全然前なんですよ。会社作ったのが。で、もうちょっとのんびりやってたんですけど、「そういうのが作れる」ってことが途中でわかったときに、フリークアウトの本田さんとか、あと、ちょっと前だとアトランティスとか、いろいろな会社の方が「あ、広告システムって作れるんだ」っていうのがわかって、それから参入してきた、って感じでしたね。

hidek:なるほどねー。でも、そのころって何人くらいでやってたんですか?

山崎:3人です。

hidek:おー、それはめっちゃコスパいいですね。全員エンジニア?

山崎:そうです。僕とyuguiさんと……。

hidek:あ、yuguiさん! なるほどなるほど。

山崎:yuguiさん、うちの会社の一番最初の社員なので。

hidek:あ、そうなんですね!

山崎:あ、あとmaiha。nishiっていう。maihaってご存知ですかね? maihaっていうエンジニアがいたんですけど。

EXITを選んだ理由

hidek:はいはい。なるほどですね。で、最終的に売却してM&Aされていったと思うんですけど、そのときも3人くらいでやってたんですか?

山崎:いや、そのときは15人くらいいて。そのときはVCからお金も入れていたので。

hidek:なるほどね。

山崎:15人くらいでやってましたね。最終的に売却したときは15人だったのかな?

hidek:うんうん。で、そこは、M&AっていうEXITを選んだのは、何かあったんですか?

山崎:いろいろ文脈はあるんですけど、僕、もともと、さっき言ったとおり、最初から黒だったんですよ、ビジネス自体が。

hidek:うん。

山崎:だから、あまりVCからお金入れてなんとかする、っていう文脈ではなかったんですけど、会社としては。

hidek:はいはい。

山崎:なんですけど、あとからフリークアウトとか、いろいろな会社が、ごぼう抜きされていって、「これちょっとヤバいな」って思ったんですよね。だから、ちゃんとVCからお金入れて戦わないと「これちょっと食われちゃうな」と思って。

hidek:うん。

山崎:で、VCからお金入れたんですよ。で、ちょろちょろやってたんですけど。だから、EXITを目指してもともと作られてなかったんですよ、システム自体が。ただ、VCからお金を入れるまでに7年くらい時間があったので、その間に、yuguiさんとかいろいろな人にお願いして、システムだけはすごくピカピカになっていたんですよ。

hidek:うん。

山崎:ソフトウェアをずっと研鑽していたので。

hidek:はい。

山崎:で、VCからお金入れてやったときに、「ここからどうするか」って話になったときに、フリークアウトさんみたいに上場する、っていう話はあったにはあったんですけど、それよりもEXITというか「MAされてデカい会社と組んだ方がいいね」って話になったんですよ。で、広告配信プラットフォームを作ったんですけど、やっぱりプラットフォームって、デカいプレイヤーと組めば組むほど、小さいプレイヤーたくさんと組むよりも、デカいプレイヤー1個と組んだ方がデカい、っていう問題があったので、そこの話があって。

hidek:うんうん。

山崎:もともと僕自身が、EXITを目指して会社を作っていなくて、「デカい会社と広告ビジネスでできればいいな」と思ったので、MAのオファーを受けてEXITをした、っていうそんな流れです。

hidek:へー。お話を聞いていると、「エンジニアがものを作って、そのまま会社にして、で、そのシステムをピカピカに磨いて売る」って、CEOっていうよりはCTOっぽいんですよね、振る舞いが。

山崎:あ、でも、そんな感じですよ。CEOはやってたんですけど、ビジネスをやってたというよりは。最初は黒でやってたんですけど、VCから入れたときには当然振らなきゃいけないんであれなんですけど、流れとしてはプロダクトマネージャーみたいな流れになりますよね。どうしても。

hidek:うんうん。でも、キャリアとしてもエンジニア・プログラマーみたいなところから、プロダクトマネジメントしながら、こう……。

山崎:CTOもCEOもやった、っていうそんな感じですね。

hidek:へー。あんまり僕の周りで……。あ、唯一似たようなキャリアしているのはkihiraさん。

山崎:あー、Tomboのね。

hidek:はい。

山崎:超仲良しです。

hidek:彼もいわゆる……。

山崎:あ、DeNAだからね。そうかそうか。

hidek:そうですそうです。

山崎:いやー、kihiraさん大好きですね。

hidek:いわゆるFlashを動くようなものを自分で作って、それを売って。いまだにHTML5大好きですけど。

山崎:そうですよね。ゲームとか作ってますもんね(笑)。

hidek:ずっとやってますよね。たぶん彼、Webというものにロマンを抱いている。なんならプラットフォーム大嫌いですし(笑)。いわゆるApple、Googleも嫌いなので。でも、そこはそこで一本芯が通ってて。で、それをエンジニアとして形にしてプロダクトを売っていく、っていうのはすごくかっこいいですけどね。

山崎:でも、例えばなんですけど、DeNAだとKazuho Okuさんとかもプロダクト、ブラウザ作って……。

hidek:あ、そうですね。Palmのブラウザ。

山崎:そういうのに近い感じですよね、ノリとしては。

hidek:そうですね。たしかに、kazuhoさんも2000年最初の方ですかね、Palmのブラウザ作って、それで起業一回してますもんね。そうですね。意外とそういうの聞いてるとちょっと夢ありますね、エンジニアとして(笑)。

山崎:夢、全然ありますよ! そうそう。

ストックオプションという餌

hidek:なるほどね。で、M&Aを経て、SupershipでCTOをなさって。

山崎:はい。

hidek:意外と組織がたぶん、見るメンバーが大きくなっていくと思うんですけど。

山崎:ええ。

hidek:なんかそこで、「マネジメントって大変じゃないですか?」っていう、すごくあれなんですけど(笑)。

山崎:そうですね。広告ビジネス、僕、すごく大好きだったんですよね。

hidek:うんうん。

山崎:「広告ビジネスをやるためにテクノロジーを提供した」っていう側面がデカくて。そういう点で言うと、広告ビジネス単体で言うとそんなに大変じゃなかったんですけど、Supership自体が今もそうなんですけど、いろいろなビジネスの集合体なので、そこを合わせるのは結構やっぱり大変でしたね。

hidek:うん。結構モチベーションを維持するのも大変なんじゃないかな、と思いつつ、しかも人数の多い中で、その辺って工夫というか、どこかでマインドチェンジみたいなものはあったんですかね?

山崎:僕、広告ビジネスがすごく大好きだったので、広告ビジネスが伸びている限りは、モチベーションが、テンションがなくなる、とかはなかったんですよね。

hidek:あー、なるほどね。そこによりどころを求めて。

山崎:そうです。だから、広告ビジネスが大好きで、そこにいられるだけですごくよかったんですよ。だから、普通のEXITする会社さんとかだと、ちょっと言葉が悪いんですけど、EXITの途中で会社をバイアウトするということは「自分のビジネスを諦めた」ってことじゃないですか?

hidek:うーん、まあ、はい。

山崎:雑に言うと。自分でやりきれなかったから。だけど僕、そのとき、VCからお金入れるのがすげーあとだったので、そういう文法をよくわかってなかったんですよ。

hidek:なるほどね。

山崎:だから、もともと「会社をEXITしてうまいことやる」っていう腹はあまりなく会社が作られたので、その辺りのモチベーションは結構薄くて。

hidek:うんうん。

山崎:人を集めるときも、「うちの会社、EXITプランとかないから」っていう話をしてから来てもらったんですよ。

hidek:はい(笑)。

山崎:ただ、皆さん、たぶん違うと思うんですよ。皆さん、EXITプランとかちゃんと聞いてから入ったと思うんですけど。ストックオプションの仕組みって、あんまり僕好きじゃなくて。

hidek:なるほど。

山崎:で、「ストックオプションって、これこれこういう理由で、あんまり得なシステムじゃないから。そもそも給料を上乗せして、普通の会社よりも全然高い給料とかも出すからそっちで来てのんびりやった方が得だよ」っていうコミュニケーションをして。

hidek:ふーん。

山崎:うちはEXITプランがない代わりに、ほかのDeNAとか高い給料出す会社あるじゃないですか? 「あそこに張るくらいの給料を今後出していくような努力をして、最初から少なくとも前職よりも出すから、だからうちに来てくれ」っていうコミュニケーションを全員にしてたんですよ。

hidek:はい。

山崎:だから、僕も含めて、EXITプランを期待して入ってきたやつっていなくて。

hidek:うんうん。

山崎:だから、EXITしたときには……。もちろん還元しましたよ、EXITしたときには。そんな感じだったので、辞める人もあまりいなくて、EXITしたあとも。

hidek:あー。

山崎:そういうモチベーションで入ってきてないから。

hidek:なるほどね。結構、ストックオプションで雇うって、それなりの夢があったりだとか、それなりに優秀な人を集める餌って言ったらあれだけど。

山崎:餌です(笑)。

hidek:(笑)。今、結構、みんなそうやってると思うんですよね、スタートアップって。それによって、「今はちょっと現金出せないんだけど、夢を一緒に追い求めよう」みたいなことであって。ただ、おっしゃるとおり、そうなんですよね。そういうところって、IPOした人を……、ロック期間がおわるとみんな辞めてしまうというか。

山崎:そうですよね。

hidek:その辺はたしかに、長い目線で見るとなかなかありますよね、そういうのは。

山崎:そうなんですよね。IPOって、ストックオプションって、一発しか使えないじゃないですか? IPOって、イベントとして。

hidek:そうですね。

山崎:だから、そのあともちゃんといてもらうための仕組みを作らないといけないと思うと、ストックオプションって、システムとしては瞬間的な……。なんて言うんですかね。「傭兵部隊を雇う」みたいな話にどうしてもならざるを得ないんですよ。

hidek:うーん。そうなんですよね。その働き方が本当に幸せかどうかわからないですけど、「人生を賭けて一緒にいいものを作っていこう」みたいな感じにはならないですよね。

山崎:で、ちょっとリスナーの方にもちゃんと理解してほしいんですけど、1,000億とか2,000億くらいの会社が作れれば、ちょっとは足しになる……。ちょっと雑な話なんですけど、1,000億の会社を作って、普通のメンバーだと0.1%くらいしかもらえないじゃないですか?

hidek:ですね。うんうん。

山崎:だと、ざっくり1億円しかもらえないんですよ。で、「1億円の上場できた会社がいくつあるんですか?」って話ですよ。

hidek:まあ、そうですよね。うん。

山崎:ちょっと、hidekさん、苦笑いしてますけど。

hidek:いやいや(笑)。

山崎:ちょっと、皆さん、声だけだからわからないと思うんですけど、hidekさん、苦笑いしています(笑)。

hidek:いえいえ、そんなことないですよ(笑)。

山崎:で、メルカリくらいうまくいけばいいですよ。6,000億でしたっけ? そんな感じでうまくいけばいいんですけど、大抵、200億とか300億とかそんな感じじゃないですか、上手くいっても。

hidek:うん。

山崎:で、それで0.1%仮にもらったとして、2,000万とか3,000万ですね、ってなったときに、仮に10年かかったとするじゃないですか?

hidek:はい。

山崎:10年かかったら、だったら、「年収200万円上乗せして10年やった方がアベレージとしてはよくないですか?」っていうコミュニケーションをしたんですよ。

hidek:なるほどね。

山崎:hidekさん、めっちゃ苦笑いしてますね。

hidek:いやいや、違うんですよ。これ、ちゃんとあれがあって。前回、尾藤さんと話したときに、尾藤さんはどちらかというと、ストックオプションをもらうのはよしなんだけど、そこの交渉だとか、そこに対してエンジニア側もファイナンスの知識を持って交渉して……。

山崎:そうです。おっしゃるとおりです。そういう戦略でやっている会社に入るんだったら、尾藤さんのノリでいいと思うんです。ただ、そうじゃないのが最近ちょっと流行りとは言いませんけど、そうじゃない戦略でとってる会社もいらっしゃって。

hidek:うーん。

IPOで人生が狂う人もいる

山崎:必ずしもIPOとか、VCからお金入れてやるやり方が正しいとは僕はちょっと思ってなくて。そのコミュニケーションをやって、ちゃんと返した、ってそんな感じです。

hidek:なるほどですね。その辺が、起業家によって全然マインドが違うというか、っていうのは結構面白いですね、聞いてて(笑)。

山崎:そうですね。これ、ちょっと変な話なんですけど、僕、87番に入ったって言ったじゃないですか?

hidek:はいはい。

山崎:これ、結構、話としてきいてくるんですけど。当時、Yahoo!って69番までに入っていると1株もらえたんですよ。

hidek:あー、なるほどですね。へー。

山崎:で、上場前に入ってた人は1株ずつもらえたんですよ。それは役職問わず。もちろん、2株とか3株とか5株とかもらえた人もいたんですけど。

hidek:うんうん。

山崎:で、その株はどうなったかご存知ですかね? 1株1億円になったって話があったと思うんですけど。

hidek:はい。

山崎:最大4億円くらいになったんですよ、1株が。

hidek:わお!

山崎:わーお! そう(笑)。で、僕が入ったのが87番じゃないですか? 何が起きるかというと、「69人が億持ってて、20人がお金持っていない」っていう、そういう謎な状況になるわけですよ。

hidek:あー、もう、ストックオプションのありがちですよね、それ。

山崎:でも、メルカリとかだとたぶんそうなってなくて。もうちょい金持ちの人が少なくて、あんまりもらってない人が多いはずなんですよ。だけど、Yahoo!って、あまりにも株が上がり過ぎたので、そういう謎な状況が起きたんですよ。

hidek:当時、インターネットバブルとかがあって、やっぱり。

山崎:あー、そうですそうです。

hidek:そうですよね。GMOも同じでした(笑)。

山崎:で、さっき言ったとおり、Yahoo!って、あんまり、当時の人をディスるわけではないんですけど、今みたいな超優秀な人が入ってきた、っていうよりも、普通の人が入ってきた、というのがあるので、普通の人が億とか持っちゃうと、やっぱり狂うんですよね。

hidek:なるほど。うーん。

山崎:ちょっと、車とか3台とか買っちゃったり。

hidek:あらら(笑)。

山崎:女の子に入れ上げちゃったりとか。そういうのが起きちゃうんですよ。なので、そういうのを見ちゃったので、「ストックオプションでドカッとお金が入ること自体が必ずしも幸せとは限らないな」という経験をそのときにして。

hidek:うんうん。

山崎:っていう、そういうちょっとバカバカしい話なんですけど(笑)。

hidek:いやいや。起業家によって、バックグラウンドによって、いろいろ大事にするものが違うんだなー、っていうのは聞いてて面白いですね。

山崎:あー、そうそう。すみません(笑)。

hidek:いえいえ。で、そうですね。なるほどなるほど。で、経緯の話はこの辺にしておいて。

山崎:そうですね。なんかもう1時間くらい経っちゃいましたね。

hidek:いやいや(笑)。でも、これはこれで、やっぱり起業したい人からするといろいろ、いいと思うんですけど。

山崎:あー、そうですね。




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