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クロザピンと言う選択肢の与える影響

クロザピン(クロザリル)は難治性の統合失調症の治療として極めて有効な選択肢である。

とはいえ難治性の統合失調症は薬だけではどうしても改善しないことも多くクロザピンでも改善しない人も多い。しかしクロザピンと言う選択肢があると言う事は、多くの人にとって良い効果を与える。


治療に対して希望が持てる

効果がないまま抗精神病薬の変更3種類目になると、使っている医師の方も「効かないかもしれない」「回復までまだまだ時間がかかりそうだ」という半ばあきらめの気持ちが出てくる。

プラセボ効果は治療にとって非常に大きな影響を与える。クロザピンという特別な治療で良くなるかもしれないと期待を抱くことで、その効果は非常に高まる。


多剤併用や大量投与を避けることができる

抗精神病薬での治療がうまくいかないときに多剤併用や大量投与をする誘惑にかられる。多剤併用や大量投与をすることで、改善するというエビデンスはほとんどない。しかし経験的に多剤併用や大量投与をすることで少し状態が改善する人たちが出てくる。

多剤併用や大量投与による改善なのか、時間の経過による改善なのか、プラセボ効果なのかはっきりしないことが多いものの、多剤併用や大量投与をすることで改善することを何回も経験すると、多剤併用や大量投与をしてしまいたくなる。

医師は好きで多剤併用や大量投与をするのではない。どうしても治りづらい人、衝動行為など危険な行動が激しい人に対して、何とかしてなくてはいけないと考えて結果的になってしまう。

順番に3種類の精神病薬を最高用量まで使用し、効果がないときには多剤併用や大量投与ではなくクロザピンの治療を勧めることができる。基準的には2種類の効果がないときにはクロザピンを適応してよいものの、クロザピンが自分の病院では使えないため、3種類目も使ってみて何とかよくならないか努力している。

本人や家族がクロザピンによる治療を希望しないときには、そこまでの治療を希望しないということであり、副作用が増加するリスクを冒してまで多剤併用や大量投与をするべきではないということを意味する。


クロザピンによって恩恵を受けることができる

当たり前ではあるものの、クロザピンという優秀な薬の恩恵を受けることができる。世界的にはごく当たり前に使うことができている薬を日本ではなかなか使用できていない、まだ必要とする人の多くが使用できていないというのは大問題である。


クロザピンという選択肢の与える影響

クロザピンと言う選択肢があることで、精神科医は治療に対して悲観的にならず、多剤併用・大量投与を避けることができる。

クロザピンの治療を受けるために転院した人も増えつつある。今のところ2割程度の人は効果がないということでクロザピンの治療は中止し戻ってきているものの、残りの人はクロザピンによる治療を続けている。

なかなか良い治療効果であることは間違いない。

自分の病院でも採用したいという希望をしているものの、経営者はそのつもりはないようで、対象になる人は積極的に送り出すようにしている。

医師の仕事は抱え込み最後まで面倒を見ることではない。自分が治せる人はしっかり治す。治せない人は、治すことができる可能性があるところへつないでいく。それが医師の仕事だと思っている。


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