精神科の診察の8割は雑談
【疑問】診察では何を話したらいいのでしょうか?
【回答】雑談でいいです。話す時間が長くなりすぎないように気を付けましょう。
ある診察場面
私「こんにちは」
Aさん「こんにちは」
私「どうですか?」
Aさん「変わりないですね。腰が痛くてしょうがないよ。」
私「困ったものですね。整形外科に行っているのでしたっけ。」
Aさん「そうなんだけど、一向に良くならないね。効きやしないよ。」
私「効かないですか」
Aさん「そうそう、金ばっかり取られるよ。まあ仕方ないよ。湿布冷たいの出しといてね。じゃよろしく。」
精神科(心療内科)の診察というと、どんなものをイメージするだろうか?
・悩みをじっくり話し少しずつ心のわだかまりを取って行く
・変な声が聞こえるとか、周りの人が嫌がらせをするとか不思議な話を聞く
・医師が心を読み取ろうと色々と質問してくる
などを想像するのかもしれない。
現実はほとんど雑談で終わる。
精神科の診察の8割は雑談である。
外来が終わると最近の話題、天気、ドラマのあらすじなどを知ることができる。一見 かなり気楽なものである。
治療を始めたばかりの患者の中に「1時間近く待たされて、世間話をして金払うなんて納得できない」と怒る方もごくまれにいる。
本当に世間話をしているだけ?
当然ながら精神科医は世間話をしているだけではない(もちろん好奇心から聞いているだけのときもある)。
呼んでから入室までの時間、歩くスピード、ノックの仕方、座る場所、一緒に来た人の様子、身だしなみ、表情、仕草、声のトーン、態度、話題で気になることはないか、以前と変わったところはないかを確認している。
変わりがなければ雑談で終了。
変わりがあれば、その原因は何か?、緊急性はどの程度か?(今回解決すべきか、数回に分けて解決すべきか)、どう聞いていくか?、どうしたら良いか?(薬の調整、アドバイス、指示、入院を勧めるなど)を考えていく。
そして診察室を出るときには少し気が楽になって「また次回の診察まで頑張ろう」という気持ちになれることを目指して接している。
もちろんほとんどの人は単なる雑談で終わる。
診察で何を話したらいいか分からない人へ
雑談で十分です。
前回の診察から今回までにあった楽しかったこと、うれしかったこと、悲しかったこと、腹がたったことなどの気持ちが動いたこと。
おもしろかったTV、友達や家族やペットとの出来事、買物などの外出。
そういった雑談をするだけで良く、実際ほとんどの人は雑談で終わる。
しかし雑談が長くなりすぎると、途中で主治医が話を遮らなくてはいけなくなるため、数分程度 長くても5分程度で切り上げるようにした方が良い。
もし気になることや聞きたいこともなく、雑談をする気にならなければ、「変わりないです」と不愛想にならないように答えるだけで良い。
主治医からみて気になる点がなければ1-2分で診察が終わることもあるものの、それは治療が順調に進んでいるということである。
受診しようか悩んでいる方へ
少なくなったとはいえ、精神科や心療内科を受診することに抵抗を感じ躊躇する人はまだ多い。
調子が悪いと感じたときに多くのクリニックがいうように「何でも気軽に相談しにきてください」とは私は思わない。
調子が悪いと感じたときには、直ぐ病院に行くのではなく、ほど良く休養を取る、負担を減らす、自分なりの対処方法(飲酒以外)をするなどの、自分なりの方法を試みるべきである。
それでも回復してこないときには、「なんだか怖いのでは・・」と恐れず精神科や心療内科を受診してみてください。
きっと「なんだこんなもんか」「これならもっと早く来れば良かった」と拍子抜けすることでしょう。
ただし現在 駅前に乱立しているメンタルクリニックは精神科のトレーニングを十分にしていない医師が気楽にどんどん開業している状態が続いているため、質の悪いメンタルクリニックが多数ある。
評判の良いところ、精神科としてのトレーニングをしっかりと受けていることがはっきりとわかるところを選ぶべきである。
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