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精神科でも身体的チェックは重要である

精神科でも身体的チェックは重要である

【疑問】
精神科・心療内科で血液検査や身体的チェックを勧められました。本当に必要なのでしょうか?

【回答】絶対に必要です。
身体疾患から来る精神的不調は頻度が高く、治療方針が全く異なってきます。また治療開始後も肝機能障害や腎機能障害などの薬の副作用が出ていないか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病になっていないかなどの確認も定期的に必要です。身体的チェックをしようとしない(勧めてこない)精神科医・心療内科医を信頼するべきではありません。

 訴えの多い人の身体疾患は見逃されやすい

神経質で訴えが多い人や、精神科や心療内科で治療を受けている人は本当に身体的な問題があっても「気のせい」「気にしすぎ」と、全て精神的な問題とされて十分な検査も行われずに、身体的な異常を見逃されてしまうことが良くある。

内科からうつ病や身体表現性障害として紹介された人で、膵臓癌や胃癌が見つかった人や不整脈が見つかった人も多く経験している。内科医の「身体的に異常ありません」は、時々信頼できないことがあるという事実は十分に注意が必要である。どこまで検査をしたかをしっかりと確認する必要がある。

検査で異状ないといわれていたものの、通常の血液検査だけしかしていないときから、胃カメラ・大腸カメラ・CTやMRI・胸部腹部エコー・ホルター心電図などまでしっかり検査しているときまで差が大きい。前者であれば「身体的に異常なし」は到底信頼できないし、後者であれば「ちょっとやりすぎじゃない・・・」と思ってしまう。

ある程度経験を積んだ精神科医は、必ずとはいわないものの身体疾患から来る身体的不調と精神疾患から来る身体的不調の違いに気が付くことができる。表情、話し方、仕草、醸し出す雰囲気、それらすべてから判断していく従来からの診断技術を習得した精神科医にはそれほど難しいことではないものの、近年の現在の症状からのみ診断するDSM5でトレーニングを受けた精神科医にはほとんど不可能である。

ちなみにDSM5では「その障害は、物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない」などの一文が記載されていることが多いものの、経験の浅い精神科医にとっては流し読みされるだけの項目となっている。多くのネットで紹介されている診断基準でも省略されていることが多い。

精神科の診断と治療において、身体疾患の有無の確認と治療が絶対に必要である。

 身体と精神はつながっている

うつ状態を起こす身体疾患として、

・甲状腺機能低下症、アジソン病などのホルモンの異常
・心筋梗塞や糖尿病
・脳梗塞・脳出血
・パーキンソン病
・悪性腫瘍
などがあげられる(他にもたくさんある)。

前立腺肥大→頻尿→浅眠→不安状態やうつ状態というコースをたどるときもある。

厳密に言えば身体疾患によって引き起こされるうつ状態は、うつ病とは別に診断されるものの、そんなにきれいに区別できないことも多い。身体的な不調が精神的な不調を起こし、精神的な不調が身体的な不調を起こす。お互いがどんどんと悪影響をし続ける。

訴えの多い人をすぐ精神科・心療内科に回す内科医が増え、身体的な精査をほとんどしないまま抗うつ薬を始める精神科医・心療内科医が増えている。その結果、一向に良くならず泥沼に入ってしまう人が後を絶たない。

精神科の診断は身体的精査をしっかりと行い、身体疾患はほぼ完全に否定されたうえで成立するものであり、身体的チェックを全くしない精神科医・心療内科医を信頼してはいけない。そして身体的と精神的両方からしっかりとチェックしていき、両方の面から治療を行なっていくことが絶対に必要である。

定期的な身体的チェックも重要

医師の重要な仕事の一つとして、「安全に治療をする」ということがある。頻度はそれほど高くはないものの、薬を服用していると肝機能障害、腎機能障害などの身体的な悪影響が出ることがある。また高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病になってしまうこともある。

定期的に採血をしたり、自分のクリニックでは難しい時には検診や内科での定期的なチェックを勧めることは精神科医にとって極めて重要であるにも関わらず、していない精神科医があまりにも多い。

身体的チェックをしようとしない(勧めてこない)精神科医・心療内科医を信頼するべきではない。そして自分で自分のことを守るためにも、特に自覚症状がなくても定期的に身体的なチェックを受けてください。


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