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薬を飲みながら運転をしていいか?

「運転をしていいですか?」と聞かれることは良くある。

運転していいかどうかは、1)今の精神状態で運転をしていいか?、2)今の薬を飲みながら運転をしていいか?、という問題に分かれる。

精神状態

当然ながら精神状態が不安定のときには運転をしてはいけない。精神状態が悪いとき、体調が悪いときに運転をしないということは重要な運転能力の一つである。

精神状態が悪いことに気がつかずに運転する人、周りから今は運転しないように言われても従うことができない人は免許停止にするべきである。薬を飲んでいるから運転してはいけないという議論の前に、必要なのに服用しない人は運転してはいけない。

 薬の影響

難しいのが今の薬を飲みながら運転をしていいか?である。その場合に参考にせざるを得ないのは添付文書である。添付文書は製薬会社と厚労省を守るためのもので、極力 悪いように記載され、書かれていることをすべて説明すると、治療にならないことが多い。しかし最近の訴訟においては添付文書に従わない治療をしていた場合や添付文書に記載されていることを説明しなかった場合は、他の多くの専門医が行っている標準的な治療法だとしても訴訟に負けることが増えてきており、無視することはできなくなってきている。

以前の向精神病薬の添付文書は以下のような感じであった。

眠気、めまい等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を 伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
サインバルタ添付文書(改定前)

基本的に処方したときには「運転するな」と言わなければいけなかった。といっても日常生活で運転をしないと生活が成り立たない地域に住んでいる人にとっては、運転ができないことは大きな障害となり、それだけで薬をやめてしまう理由に十分なりえる。

精神状態が運転できる程度まで回復したら、「運転してはいけないことになっているけれど、あなたくらい安定したら普通に運転している人が多いよ」と伝えるという、やや苦しい対応になっていた。

現在は以下のように改定されている。

眠気、めまい等が起こることがあるので、自動車の運転等危険 を伴う機械を操作する際には十分注意させること。また患者にこれらの症状を自覚した場合は自動車の運転等危険を伴う 機械の操作に従事しないよう、指導すること。

 
この改定のおかげて、「眠気やめまいはない?」と聞き、家族が隣に乗ってもらい運転能力を評価してもらい問題なければ「少しだけ注意力が落ちるから気をつけて運転してね」と伝えることができるようになったのはありがたい。

まとめ

日常生活が普通に送れるようになるまでは運転してはいけません。

薬を飲んで眠気やめまいや注意力低下などの副作用を感じなければ十分に注意しながら運転をすることは可能です。

しかしうっかりミスによる小さい事故は起こしやすいため十分に気をつけてください。

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