発達障害の未成年の人に精神障害者手帳を勧めるとき

今回は知的障害は無~ごく軽度の発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD など)の未成年の人に精神障害者手帳を説明し進めるときに作成した資料である。

軽度以上の知的障害のある未成年の人は精神障害者手帳ではなく療育手帳を取得することになり、基本的には小学生以下のときに作成するので、本人への説明や意志確認はほとんどされていない。

知的障害がほぼない発達障害の場合は、中学生~高校生で精神障害者手帳を取得する・しないという話になり、本人への説明が不可欠であるものの、説明するためにいいものがないので作成してみた。




精神障害者手帳を取得するメリットとデメリット

【生まれ持った特性がある】

自分の考えを上手く表現できない、ミスが多い、他の人のペースについていくのが難しい、他のことを考えたり思い出したりして他の人の話が聞けなくなる、同時にいろいろなことをこなすのが難しい、疲れているときに思考が停止したり他の人の話が頭に入らなかったりすることがある、などの特性がある。

これは努力不足ややる気がないではなく生まれ持った特性。

【周囲にはわかりづらい特性】

目が見えないなどの特性は誰でも一目で分かり大変さが容易に想像できるが、あなたの特性は他の人にはわかりにくい。

手帳を取得し認定してもらうことで、周囲の人に理解してもらいやすくする。
必要に応じてサポートを受けながら少しずつ自立に向けて練習をしていく。

【メリット】

.学校でのサポートが受けやすくなる
先生からの指示を紙に書いてもらったり、確認を何度かしてもらうなど、自分に合ったサポートを受けやすくなる。
・医療費の負担が減る
・交通費・施設利用料が安くなることがある
・将来の安心
大人になってからも困難に直面したときにすぐにサポートを受けることができ、年金をもらうこともできるので安心して生活ができる。大人になってから取得するのは手続きが大変。また手帳を持っていても将来の職業選択には影響はない。
・周囲の理解が深まる
周囲の人が特性を理解しやすくなり、困ったときに助けてもらいやすくなる。

【デメリット】

・数年に1回手帳の更新手続きが必要で時々病院受診が必要。
・なんとなく嫌な気持ちになる。

【私たちの思い】

・手帳を取得し、1)周囲の人に特性を理解しサポートしてもらいながら少しずつ一人でできることを増やしていく、2)将来安心して生活できる準備をしておく、のが良いと思っている。
・意志を尊重するので、今回は取得しないでおき今後 苦労することが増えた時点で申請するという方法もある。


補足

精神障害者手帳は療育手帳と比べると持っていることのメリットは相当少ない。

細かく知りたい人は「精神障害者手帳 メリット」などで検索してみてください。

特に障害福祉サービスを受ける予定ではない人にとっては「とって何の意味があるんだろう?」と感じることが多いかもしれない。

しかしできるだけ取得しておくほうが良いと私は思っている。

すぐにサポートを受けることができる

困ったときにサポートを受けようと思ってもすぐには受けれない。

手帳がないと利用できない、書類・診断書が必要、と言われ、書類を提出しても準備が整うまでに数か月かかる。

サポートが必要なのは今なのに、数か月何もない状態で乗り越えるのは難しい。

正しい診断をしてくれやすい

困ってから病院に行くと適応障害やうつ病や身体表現性障害などの診断がつくことがほとんどで、いきなり発達障害の診断がつくことはあまりない。

もちろん病名が違っても適切なサポートなどが受けれたら良いものの、難しいことが多い。

必要なのは環境調整と特性に合ったサポートなのに、休養と薬を出されて終わりとなりかねない。

手帳を持っていれば発達障害をベースにしたストレスに対する反応という適切な診断と対応を受けることができる可能性が高くなる。

今 主治医が発達障害として診察をしてくれているから安心と思うかもしれないが油断してはいけない。

主治医が転勤し発達障害への理解の低い医師が主治医になるかもしれない、今のクリニックが閉院になりカルテがすべてなくなってしまうかもしれない。

そうなると大人になってから発達障害の診断を受けようと思っても、難しくなることは良くある。

発達障害の特性や症状は年を取るごとに軽減したり、個性の影響を受けて変化していくことが多く、大人になると典型的な症状でなくなり過去に発達障害と診断された確たる情報がないと診断しづらいことが良くある。

年金受給しやすい

例外はあるものの適応障害は障害者年金の対象外である。

うつ病も長期にわたり障害が持続していることを確認できないと年金対象外とされることが多い。

また年金をもらうには病状だけでなく、初診日の段階で国民年金や厚生年金をある程度以上払っていたかという厳しい条件がある。

この条件は20歳までに精神科・心療内科受診歴があれば免除される。

障害者手帳で発達障害の手帳を20歳になる前に取得しておくことで、必要になったときに年金を受給しやすくなる。

いい病院の使い方が身につく

診断書をもらいにだけ外来に来る人は、病院や主治医に対しよい距離感を保つことができるようになる。

困ったときに薬を飲むではなく、周りの人に協力してもらいながら自分でも工夫して乗り越えるように努力し、上手くいっても上手くできなくても結果を受け入れる。

外来で「こんなことがあったんですよ」と笑って報告をしてくれる。

その人たちは私のことを「主治医」とは思っていないかもしれない。

「書類を書いてくれる人」「見守ってくれている人」という認識なのかもしれない。

しかしそういった病院の利用の仕方はいいと思う。


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