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認知症は何科を受診するのがいいか

【質問】認知症は何科を受診したらいいでしょうか?

【答え】診断の正確さでは神経内科が良い。面倒見の良さでは精神科が良い。

認知症を専門的に見ることができるのは、精神科、神経内科、老年内科(老人内科)である。特に日本認知症学会の専門医 あるいは 老年精神医学会の専門医ということになる。

ちなみに私は老年精神医学会の専門医を持っており、認知症を専門的に見ることができる(と一応なっている)。

脳外科

認知症は脳の病気だからということで、脳外科を受診する人がいる。

しかし「認知症を見ます!」としっかりと宣言している脳外科以外には行かないほうが良い。

多くの脳外科医は、脳出血や脳腫瘍などの確認は出来ても、認知症を起こす初期の微妙な脳の萎縮は、加齢による正常範囲とみなしてしまう。

そのため初期のアルツハイマー型認知症や、初期には記憶力低下が目立たない認知症は高い確率で「異常ないですね」と見逃される。

ただし最近の器具をそろえ知識も十分にある脳外科では神経内科に匹敵する正確な診断が可能である。

精神科と神経内科の違い

認知症の診断・治療に関しては、神経内科と老年内科はそんなに差がないのでは?と勝手に思っている。

一言で言えば、診断の正確さでは神経内科、面倒見の良さでは精神科が良い。

神経内科では圧倒的にさまざまな検査が可能である。

MRIでは通常の検査だけではなく、VSRADという方法を使えば、極めてわずかな海馬周囲や脳の各部位の萎縮を見つけることができる(正確に言えば 計算することができる)。

またMRI以外にもPET・SPECTなどの脳血流検査、心筋シンチグラム MIBGなど、さまざまな検査を神経内科では当然のように受けることができる。

精神科で上記検査ができるところは極めて限られている。

更に神経内科医の高度な様々な疾患の知識からアルツハイマー型などの代表的なもの以外の疾患を正しく診断することができる。

もちろんこれらにも精通した優秀な精神科医は存在するが多くはない。

精神科医の多くがそうとまでは言わないものの、個人的には細かい診断にはあまり興味がない。

認知症で物忘れが中心で取りつくろう能力が高い人。
認知症で物忘れはあまりないけれど、こだわりが強くて、ものを上手に使うことができない人。
など「認知症で、こんな特徴がある人」で十分と思っている。

その上で、その人とその人を支える家族をどう支援していくかを中心に考えていく。

認知症がある人にとって検査は不安になったり、混乱したり、疲れる。

課題ができないことで、落ち込んだり自信を失ったりする。

診察で記憶力や思考力や判断力の低さが確認でき、家族からみて明らかに能力が低下し、明らかに生活のしづらさがあれば、検査をしなくても、認知症と診断していいと思っている。

もちろん、診断書を作成する上で検査が必要なことはある。

医療制度の違い

心療内科と精神科では医師の興味と知識以外に医療制度の違いもある。

神経内科など内科は検査をすることで報酬を得るため、定期的に検査をする必要がある。

精神科は5分程度話をすることで報酬を得る。

そういう診療報酬上のシステムのため、神経内科では診断が終わったら、定期的な検査以外は、診察は可能な限り短くしたい(短くしないと、外来が回らない)。

精神科では毎回5分程度話をしていきたいというスタンスになる。

ということで、診断をきっちりしたいという人は神経内科を受診するのが良い。

診断はちょっとあやしくてもいいから、長期にわたって本人と家族を支えて欲しいという人は、精神科を受診するのが良い。

ただし、精神科を受診する場合でも身体疾患を多く抱えている場合は、身体疾患をしっかり見れる精神科医はそれほど多くないので、精神科医と内科医の両方を受診しておいた方がいい。

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