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双極性障害の治療目標は気分の波と付き合いが出来るようになること

双極性障害(躁うつ病)の治療において薬物治療は重要である。
しかし心理療法や精神療法も同様に重要である。
双極性障害の治療ガイドラインでも、「エビデンスに乏しいとしても心理社会的療法は薬物療法と並んで重要な治療である」(p5)と明記されている

心理社会的療法はどうしてもエビデンスが低くなってしまう。
エビデンスはプラセボ(ニセの治療法)との比較を重視するものの、薬の場合はニセの治療法、形は同じだけど中身は偽物の「薬」を作ることは簡単でプラセボとの比較は比較的簡単にできる。

しかし心理社会的療法はニセの治療法というのが基本的にできない。そのため色々と研究や調査をすることが困難で、苦労して行ったとしたとしてもなかなか評価されない。結果的に心理社会的療法はエビデンスが低いと評価され、ガイドライン上もあまり記載できなくなってしまう。

それを理解した上でガイドラインを見ないと、双極性障害の治療は薬だけ出せばいい、薬だけを飲めばいいという誤解をする人たちが増えてしまう。

自分の病気と付き合うことができるようになる

双極性障害の治療において、自分の病気と付き合うことができる能力を身につけることが最も重要である。

軽躁状態~躁状態になったときに、生活や人間関係が破綻してしまう言動を我慢する。
うつ状態になったときに、焦らず、最低限のことだけをして「しばらくしたら治るだろう」と良い意味で諦めて待つことが出来れば、ゆっくりと確実に安定していく。

ただ軽躁状態~躁状態になったときに生活や人間関係が破綻してしまう言動を我慢することを要求するのは利用者には非常に評判が悪い。
「借金して買物をしてしまい借金が返せない」「何でも自分から進んで引き受けて、後で出来なくなる」という人に、我慢すること、少なくとも我慢できるよう努力をすることを求めると「病気のため我慢することができないのに、そんなことを言うのは私のつらさをわかってない」という不満が返ってくることがある。

病気のため我慢することができないのは確かである。
だからといって、何でもしてもいい、何も努力しなくてもいいのでは決してない。

躁状態になると借金をしてしまい買物をするという人は、
・カード類を一切持たない
・現金も必要最低限の額だけにする
・5000円以上のものは3日後に再度買うか決める
・お金の管理を他の人に依頼する
などの努力を一生懸命する必要がある。

それでも我慢することができない人は
・病気だから仕方がないと思う
・薬で押さえつけて動けないようにする
・他の人とずっと一緒にいて止めてもらう
・入院する
などの必要がある。

ただそこまで必要な人はそんなに多くはない。

少なくとも、
私は何もしません。
病気だから仕方ないんです。
みんな分かってください。
という態度では誰も理解してくれないということは理解しておくべきである。


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