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CP換算値の意味 クロルプロマジン

【疑問】CP換算値(クロルプロマジン換算値)は何ですか?

【回答】

抗精神病薬の比較をしやすいように、クロルプロマジンという昔からある抗精神病薬に換算するとどれくらいになるかを示したものです。

本人や家族にとってはあまり意味はありません。抗精神病薬は原則的に1種類、多くても2種類までになるように主治医と相談しながら調整をしていくだけで十分です。

 

CP換算値

CP換算値(クロルプロマジン換算値)と言うものがある。

リスペリドン6mgを飲んでいる人とクエチアピン400mg飲んでいる人がいたとき、6mgと400mgという数字だけを見ると圧倒的にクエチアピンの方が強い薬を飲んでいるように感じてしまうかもしれない。しかしこのmgは薬の成分の重さであって効果とは関係が無い。

経験的にリスペリドン6mgとクエチアピン400~600mgは大体同じ程度の効果があるものの、多数ある抗精神病薬の比較をしやすいように、クロルプロマジンという昔からある抗精神病薬に換算するとどれくらいになるかを示したものがCP換算値である。


上記で計算するとCP換算値はリスペリドン6mgは600mg、クエチアピン400mgは606mgとほぼ同じになる。


CP換算値は本人にはあまり意味がない

CP換算値はある程度の意味はあるもののそれほど深い意味は無い。COMHBOでは『CP換算値は抗精神病薬の量が適正かどうか、おおよその目安を知るためのものです』と説明されている。

しかしCP換算値の算出方法はかなりいい加減なものである。臨床的な経験、研究で効果が概ね同じとなった量、ドーパミンD2受容体への作用などを参考に計算をしており、化学的に同等と判断された量ではなく、「効果的に同じくらいかなー」という程度の意味しかない。

CP換算量が同じでも、効果が同じにならないことが多く、副作用は異なることが多い。

 そして根本的な問題として抗精神病薬は1種類で治療を行うべきである。どうしても必要で一時的に2種類飲むことがあったとしても3種類以上は使うべきではない。

3種類以上飲んでいるのであれば2種類に減らすように努力をするべきであって、CP換算値を計算する必要は無い。2種類飲んでいるときも、CP換算値を計算する必要はなく1種類になるように努力をするべきである。1種類飲んでいる時には、用法・用量を守り実際に副作用がないのであればCP換算値を計算する必要性はほとんどない。逆にCP換算値が適正の範囲内でも副作用が強いのであればその量は不適切である。

結局 本人や家族にとってはCP換算値を計算するメリットはほとんどない。

 

CP換算値が少ないことを自慢する医師

たまに「私はこんなに少ない量で治療しています」という形でCP換算値を”自慢している”医師を見かけるものの、CP換算値が低い=診療レベルが高い と考えるのは間違いである。

平均CP換算値が1000を超えるような医師はレベルが低いのは間違いない(反社会的な行動を取ってしまう人たちばかりを担当している医師は例外である)。

 薬が減る、少ない量で治療するということは、本人や家族にとっては「病気が良くなった」と理解し喜ぶことが多い。しかし薬の量が少ないのは、病気が良くなったということを必ずしも意味せず、再発のリスクは確実に高まる、という事実を本人と家族、そして治療者が十分に理解した上で行っているのか疑問に感じることが良くある。

医師にとって最も大事なことは、本人の状態が安定し、副作用が無いあるいは限りなく少なくし、再発のリスクを最小限に抑えるということである。この難しいバランスを保つことが要求されている。

 抗精神病薬は、原則的に1種類、多くても2種類までになるように主治医と相談しながら調整をしていく。薬の量は添付文書上の最大量以下とする。本人と家族にとってはそれで十分である。


医師にとってのCP換算値

CP換算値は本人や家族にとってはそれほど意味がない。しかし医師にとってはある程度の意味がある。

・別の薬の変更するときに参考にする
ただしその薬の使用経験が浅い時のみで、すぐに経験的にわかるようになる。

・薬の量をできるだけ減らすように意識させる
一生懸命治療しようとすればするほど、「何とか少しでも良くなって欲しい」「もう少し安定してほしい」「本人の苦しみを和らげたい」と思うようになり、つい薬の量が増えてしまいやすくなる。それを食い止める一つの有力な指標となる。

個人的にはCP換算値600mg以下を基本とし、1200mg(リスペリドン12mg)は絶対に超えないようにする、600mgを超えるときには3ヵ月という期間で効果がない時には600mg以下にする、という一つのルールを持っている。

結果としてほとんどの人は600mg以下ながら、800mgで非常に効果があり副作用もないため続けている人も一部いる。

 「薬は少量しか使いません。400mg(リスペリドン4mg)までしか使いません。それで十分治療ができます」といい、本当に全員CP換算値400mg以下という医師もいる。しかし現実的には、上手くいかない人たちが多数存在し、状態が悪くなり助けを求めても「これ以上は増やせません」と言われるのみで、どうにもならず医師や病院を変えていく。その量で治療が可能な人たちだけが残り、どうしても多くの量が必要な人たちはその医師の前から姿を消していく。

治療中断になった人たちを気に掛け、自分の治療を常に検証している医師であれば、この現実に気がつくことができるものの、自分の治療の仕方に疑問を抱かない医師は気がつかず、全ての患者は少ない薬の量で十分、多く使っている医師は能力が低いと信じ続ける。

 少量で治療を心掛け、どうしても必要な人には副作用に気を付けながら、効果を見ながらある程度の量を使うというのがバランスが取れた使い方だと思う。


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