妊娠したいという人
ときどき「この薬飲んでいて妊娠できますか?」と聞いてくる人がいる。
ほとんどの向精神病薬は妊娠中に服用していることで奇形が生まれる確率がごくわずかに高くなる。
一部変わらないという報告が多い薬と確実に高まるであろうという薬がある。
特にリチウム(リーマス)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸(デパケン)は奇形が生まれる確率が確実に高まる。
奇形のリスク
教科書的には服用することのメリット・デメリットを説明し、本人たちと相談して決めていくとなっている。
添付文書では多くの場合、妊婦には使用しないこと、あるいは、使用上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされている。
危険性や有益性に関する記載はほとんどされておらず、使うとも使わないとも記載されていない。
奇形は薬を飲んでいない人でも1-3%程度の頻度で起き、服薬していると3-10%程度になることがある。
しかし薬をやめると再発する可能性が高く、再発したときには妊娠継続は困難であることから再発させないことを再優先させることになる。
睡眠薬や抗不安薬は可能な限り中止し中心となる抗精神病薬や抗うつ薬や気分安定薬は少しだけ減量することが多い。
妊娠を希望する人が忘れてはいけないこと
しかし妊娠を希望する人たちが考えないといけないことはもっとある。
厳しい言い方ながら、
妊娠して生んだあとあなたたちは20年間責任をもって育てることができますか? その覚悟がありますか?
奇形が生じる可能性よりはるかにあなたが再発する可能性の方が高い。そのときに子どもたちを支えることができますか?
奇形が生じる可能性よりはるかに子どもがあなたと同じ病気にかかる可能性の方が高い。それでもいいですか?
それらを理解したうえで子どもを作るということが必要になる。
個人的には精神障害者の人の結婚には大賛成ながら、出産に関しては極めて慎重な態度で臨む必要があると思っている。
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