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April 9, 2022


 まるで5月の様な晴天の朝、自宅のベランダにアウトドア用の折り畳み椅子を持ち出して、2日間溜まった新聞に目を通す。新聞は本来毎日読むものだが、近頃は読まない内に1日、2日と過ぎて行くことが多い。忙しいというほどのことはないが1週間分がたまっていることもあって、それに比べると今日はたかだか2日分で、たいしたことはない。

 2日分の新聞を読み、やりたい放題の現政権政治にうんざりする。どうしてこんな国になってしまったのか、と暗澹とした気分になる。昨日の一面は国会議員の文通費名称変更に伴う使途拡大で、今日の一面はウクライナでの戦争を背景に防衛費の倍増の話しだ。

 文通費に関しては、国会議員一人あたりに支払われる給与活動費の内訳が書いてある。歳費(給与)年2,200万円、政党交付金年4,500万円、立法事務費年780万円、文通費年1,200万円、そのほかに新幹線パスと航空券。議員報酬自体が、国際的な議員給与比較でトップレベル。ただ、アメリカの場合、立法のための研究調査費用や秘書給与などの経費を含めると議員一人当たり年間2億円の支出という調査報告(1)もあって、日本の国会議員に支払う年間費用総額は高すぎる、と無批判にはできないかも知れない。
 ただ、見逃せない制度上の相違点として、アメリカの場合、給与以外の経費は一律支給ではなく、使用実績に応じた実額支出になっていることだ。各種税金の使途を筆頭に日本のさまざまな制度の不透明性にはうんざりさせられるが、ここでも同じことが言える。実績ベースの支払いに応じようとしない国会議員たちの態度こそ不正流用をしている証左だ、と推察したくもなるのは当然なのではないだろうか。

 防衛費倍増計画は、ロシアのウクライナ侵攻の様に中国が台湾侵攻を図ったときに何もしていませんでしたとなる前に敵基地攻撃機能を含めた軍備増強を図ることが目的だという。そのために、三木政権で閣議決定されその後も踏襲されてきたGDP比1%以内の防衛予算枠を2%に倍増するという。
 ウクライナの情勢を鑑みると一見正当な議論にも思えるが、世界第3位の国防支出まで増やして軍備増強を行い、東アジアを含めた諸外国を威嚇する意味がどこにあるのだろうか。アフガニスタンで長年人道支援を行なっていた中村医師は「(この国)が親日的であった歴史的根拠の一つは、戦後日本が他国の紛争に軍事介入しなかったことにあった」と語っている。
 日本は戦争を放棄したのでは無かったのか。唯一の原爆被爆国では無かったのか。いま足元で起きている貧困人口の増加や地球温暖化による自然災害の巨大化や頻度増加、火山の爆発や河川の氾濫、人口減少や地方都市の衰退、青少年の学力低下や優秀人材の海外流出、国内産業の衰退など、多くの予算を必要としている国内のシリアスな課題は枚挙にいとまが無いほどある。どうして国防費に優先順位を付け、国際的にもトップクラスの予算を費やす必要があるのか。

 8日の紙面には、厚生労働省によるヤングケアラー調査の結果が掲載されていた。小学6年生の6.5%、約15人に1人が家族を世話している、という驚愕の内容だ。そのケアの対象者の多くは自分よりも幼い兄弟で、以下、母親、父親、祖父母の順に続く。母子家庭に育つ小学生が、母親の仕事中に幼い兄弟や年老いた祖父母の面倒を見ざるを得ない状況に面することがあるとしても想像がつく。ただ、やるせないのは子を持つ親の精神状態だ。自分が産んだ幼い子供に対して食事を与えない、暴行を振るうといった残虐な家庭内の虐待行為、それらを原因とした死亡事故などの内容は、以前に比べ凄惨さがエスカレートしている気もする。
 紙面にあった小学生の声は、社会の理不尽さ、不毛さ、世間の無関心さや不寛容さ、政治や行政への情けなさを曝け出し、正しい社会を導くべき大人の頬を思い切り引っ叩いているかの錯覚を覚えるのは、自分だけだろうか。 
 ひとりの小学生の声に、さらに暗澹とする・・・「親がユーチューブを見ている時間に、僕たちがやっていることを代わりにして欲しい。」どんな気持ちでこの親は子に接し、この子はいつもどんな気持ちで自分や他人の親を見ているのだろうか、と。

(1)
https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_Suzie_14462/

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