世界最古の水洗トイレから最新の水洗トイレ事情
海内無双(かいだいむそう)
→ 世の中に並ぶものがないほどすぐれていること。
私はそこそこ海外へ行っている方だと思う。
2011年3月からの2年と少しの間は上海にいたし、それ以外にも単発でアジアが中心だが海外へは行っている。
そして、海外へ出ると日本のいいところが見えてくる。
ありがちではあるが、本当に素晴らしいと思っているのは、飲食店のレベルの高さである。
クオリティとサービスが高いのはもちろん、先進国で500円以内で食事ができるのは日本くらいではないだろうか。
それからもう1つ。
トイレのクオリティの高さは世界に誇れると思う。
これもよくいわれるが、ウォシュレットはまだまだ世界に浸透しているとは言い切れない。
そんな日本発のトイレのポテンシャルは非常に高いと思っている。
ということで、今回はトイレについて書いていこう。
水洗トイレの歴史
今の時代、誰もが当たり前のように使っている水洗トイレだが、実は歴史は古い。
現在のイラク東部の遺跡から4200年前ごろのものである水洗トイレが発掘された。
その形状は、レンガを椅子のような形に組んで造られた水洗式で、排泄物はレンガでつくられた水路を通して川に流すというものだ。
ちなみに、日本で初めて水洗式トイレが登場したのは奈良時代の藤原京だとされている。
その水洗式トイレは、水の流れる細い溝をまたいで用を足すタイプとのことである。
そこから現代の水洗は、下水道や浄化槽が伴うものに変遷した。
その背景には、感染症の流行からの学びということで発達したという見解が強い。
中世のヨーロッパでは都市人口が増加するにつれて、排泄物が街路に捨てられるようになり、衛生状態が悪化した。
1350年頃にヨーロッパでペストが流行すると、1370年頃にパリに下水道がつくられた。
そして、18世紀に産業革命が起こると、人口はさらに都市部に集中し衛生状態は悪化の一途をたどる。
19世紀になると、ヨーロッパ各地でコレラなどの感染症が大流行し、近代的な下水道が建設された。
とはいえ、排泄物が流れつく先に処理施設のある下水道を使っている地域は少なく、現在の世界人口の5%程度といわれている。
処理施設がない場合にはそうするのかというと、ほとんどの場合が排泄物は川や海へ流れていたり、穴を掘って埋められたりするのである。
水洗トイレにかかる水コスト
では、先進国と呼ばれる国の多くに当然のようにある水洗トイレには、一体どのくらいのコストがかかっているのだろうか。
東京都水道局の生活用水実態調査によると、2019年(令和元年度)の家庭で1人が1日に使う水の量は平均214リットルということだ。
平成27年度の同じ調査によると、そのうちのトイレで使うのが約21%ということだ。
ということは、トイレの洗浄に約45リットルの水を使っていることになる。
わかりやすくイメージするには、2リットルのペットボトル22.5本分ということになる。
実はトイレだけでこれだけの水を当たり前のように使っていることに気づく。
ただ、トイレで使われる水の量は年々減っているという。
トイレの絶対的なブランドである、TOTOによると、1975年以前は1回で使うトイレの水量が20リットルだったそうだ。
その後の企業努力で、1976年には13リットル、1993年に8リットル、そして2021年現在の主流は4.8リットルになっている。
1975年以前と比べると、1回に15.2リットルの節水が可能になったと考えると、この進歩は素晴らしいといえる。
その節水を実現できた理由は、形が平らな和式便器から傾斜のある洋式便器に変わったからというものだ。
平らな場所に置かれた物に水をかけて流すより、傾斜のある場所に置かれた物に水をかけて流す方が、使う水の量は少なくていい。
さらに水が渦を巻きながら流れる工夫、水を貯めるタンクの改良などが行われ、洗浄水をかつての約4分の1に減らすことができた。
水以外にかかるコスト
水以外にもかかるコストがある。
用を足すことを考えればすぐに出てくると思うが、トイレットペーパーだ。
一般社団法人日本トイレ協会の調査によると、男性が1回のトイレ(大便)で使うトイレットペーパーの長さは平均3.15m、女性の大便では平均3.52m、小便では平均1.45mだった。
実はこの紙を使うという文化は、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、そしてアジアの一部だということは知っておいた方がいいだろう。
それ以外の地域では、水を使うことが多い。
例えば、アラブ諸国や熱帯地方のトイレには水道のホースが設置されていて、片手にホースをもち尻に水をかけ汚れを落とすのが一般的だ。
それから、水を使うといえば、温水洗浄便座も広く使われている。
温水洗浄便座と書いたのには理由があるが、冒頭に書いたウォシュレットのことだといえば誰でもピンとくるだろう。
なぜ、ウォシュレットと記載しなかったかといえば、ウォシュレットはTOTOの登録商標であるからだ。
ほとんどの人が使っているウォシュレットというワードは、TOTOに権利があることも知っておくといいだろう。
また、この温水洗浄便座は、そもそもアメリカの会社が痔の患者用に開発した医療用具だった。
ところが、水温が定まらなかったり、発射される水の方向が不安定といった課題がたくさんあった。
それを日本のメーカーが、使う人が気持ちいいと感じる水温の研究や正確に肛門に水を当てる方法の研究開発に力を入れた。
その結果、TOTOウォシュレットのような素晴らしいテクノロジーが生まれたのである。
まとめ
今や1台数百万円もするような高級トイレも登場している。
勝手に掃除してくれたり、健康状態を記録してくれたりと至れり尽くせりのトイレだが、ヘルスケアテックの領域での活躍が期待されている。
1年に1回の健康診断を受けているという人は多いと思うが、日々の健康状態を記録し、なにか病気の予兆があれば知らせてくれる方がいい。
家族の健康状態がわかれば、誰かが気にかけてくれるし、予防医療に繋がる。
そう、トイレにもテクノロジーが加わることで、さらなる文明の利器と化す可能性が非常に高いのである。
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植田 振一郎 Twitter
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。