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最終稽古

虎本です。
クロス×シーン、最後の通し稽古でした。

殺陣もない
ダンスもない
派手さもない
しかしステージタイガーらしい、真っ直ぐで熱い作品に仕上がったのではないかと思います。


絵は初演時のもの


と言いつつ。
この作品は実験作です。
劇中の時間(シーン)がゴソッと飛ぶ…という仕掛けもその1つなのですが、主人公の成立条件に最大のチャレンジをしています。

通常、ドラマの主人公には何を置いてでも成し遂げたい目標(劇的欲求)があり、それに向かってブレずに貫通行動を取るものとされます。
つまりONE PIECEならば、主人公ルフィは「海賊王になる」という目標に向かって、葛藤を重ねながら、ブレずに頑張り続けるわけです。
鬼滅の刃でいうなら、竈門炭治郎は「妹を人間に戻す」という目的達成のために次々と強敵と戦い成長していきます。
それがドラマ作りの王道であると教わりました。

しかし僕はずっと疑問に思っていたのです。
大きな目標がない人間、強い信念のない人間は、主人公になれないのか?
平凡で大きな浮き沈みのない人生にはドラマたる価値はないのか?

その命題に対し挑んだのがクロス×シーンという作品です。
本作の主人公・保坂優輔には大きな行動の欲求はなく、打倒したい敵もなく、日々平穏に過ごすことを願って目の前で起きる様々な出来事に受け身的な対応をとります。
しかしそんな彼にも人生があって、大きな葛藤があるはず。
つまらない人生などないはず。

高校生時代の僕は、受験勉強以外に頑張らない人間でした。
一生懸命に何かに打ち込んだ記憶がなく、そんな退屈な生き方をする自分が嫌で嫌で仕方なかった。人生を失敗したと考え、そんな自分を親のせいにして、環境のせいにして、やり直したいとそこから出ていくことばかり考えていました。
当時の僕に言ってやりたいです。
そんな自分もいずれ愛しいと思える時があるのだよ、と。
そのつまづきや回り道に意味があったと大切にできる瞬間は来るのだよ、と。

観てくれる高校生達には、自分自身と向き合うためのエネルギーをこの作品から感じ取ってもらいたいと願います。

さあ、今日は荷造りして。
行ってきます。

虎本剛

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