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ごあいさつ -私がカンゲキ大賞をつくるまで-

はじめまして、カンゲキ大賞の仲瑞枝(なかみずえ)です。

私は元来、裏方の気質で表に立つことが絶望的に苦手なのですが、その割にいろいろやってるじゃん?と言われてしまうと、それもごもっとも…なので、遅ればせながらですが簡単に自己紹介をさせていただきます。


本業はアートディレクター

まず、演劇とは畑ちがいの人間です。

本業は広告業界?のアートディレクターです。グラフィックデザイナーと言うとイメージが湧きやすいでしょうか。
駅貼りの広告、ブランドのロゴ、webサイト、パッケージ、キャラクター、ありとあらゆるものをデザインします。以下実績の一例です。

CI,VI/イベント・店舗/化粧品・食品パッケージ/OOH/コンセプトムービーなどなど

この職種が世間に持たれがちなイメージと違う点がいくつかあります。
ひとつは「好きなようにつくる人」、もうひとつは「ただ言われたものをつくる人」。
前者は「アーティスト」、後者は昔にはあった職業「オペレーター」とイメージが混同されています。

アートディレクターはどちらとも違い、もう少し「ちゃんと話をしながらつくる人」ってイメージです。「何に困っていて、どう変えたいのか」。月並みな用語で言えば「課題解決のためのクリエイティブ」をつくる人、またその責任を持つ人です。

これは一般的にではなく、わたし個人の特徴ですが、ブランディング領域を得意としているので、案件の流れの中でも最初(川上と呼びます)から携わることが多く、企画を考えて提案する機会がよくあります。
その中で、この企画をやったら本気でちょっと世の中良くなるんじゃない?と思うような案はなかなか通らず、それではない案を採用されることが多くあります。
実現されない理由はさまざまで、社内リソースが裂けない、今年度予算では無理。などなど。
そうして、自分としては良作の企画が実現されずに山のように溜まっていく日々でした。


まずはじめにステージチャンネル

そんな日々で、だんだんと「誰か(クライアント)のお金と名前を使って企画を実現させるってちょっとおこがましいかも。」という気分になってきて、「もうやれることからやってみるか!」と2020年1月、夫と始めたのがステージチャンネルでした。

なんで「小劇場演劇」の界隈でやってみようと思ったのか?は、こちらのインタビュー記事に語っていますので割愛します。
https://theatertainment.jp/japanese-play/53921/

シアターテイメントNEWS


「演劇の世界って完売しても赤字ってことがあるんだって」「それってどゆこと?仕組みおかしくない?」という感じで、
売上の天井を取り払うためにライブ配信したらどうだろう、とサービス化してみました。

しかしその頃は、「配信」文化はなく、どこの誰かもわからぬ人から「映像で演劇の良さが伝わるものか!」とお叱りDMが届くこともあり、こわい思いをしたことも少なくありません。

一方で、「配信めっちゃいいじゃん。これもう劇場が常設の設備にしてほしいよ」と賛同してくださる劇団主宰の方もいたり、選択肢を提案してるだけだし、悪じゃないよね?、と諦めずにいました。

そんな日々が変わったのがコロナ禍でした。
公演中止が相次ぐなかで、「ステージチャンネルってところなら配信で公演できるぞ」と誰かが拡散してくれ、あっという間に他の会社にも配信サービスが組み込まれ、当たり前の選択肢に定着していきました。

私たち自身も「だーれも知らない」状態から「知っている人は知っている」レベルくらいになりました。


夢をみていたかのような 小劇場エイド

2020年5月、どの業界も長く苦しんだコロナ禍で、私たちにできることはないかと劇場へ寄付金を還元するクラウドファンディングを実施しました。

寄付金額:22,001,899円
寄付してくれた人:2909人

そもそも門外漢の自分たち2人で始めることにもかなり躊躇しました。
「これやった方がいいけど、自分達みたいのがやって負の前例作っちゃったら逆効果だよね(誰か著名人やってほしい…)」と、何日も悩みましたが、

ENGEKI HEROESのキービジュアル
  • 小劇場支援プロジェクト【ENGEKI HEROES】(※小劇場エイドの前身の名前)というクラファンをやろうと思う

  • 賛同者が100名集まらなかったら取り下げる

と、声明を出した結果、賛同者も集まり、小劇場エイドを一緒に運営することとなる黒澤世莉さんが協力してくださることになり、動き出しました。

この3ヶ月くらいに関わりができた、役者さんをはじめとする演劇人や劇場主の方達の肝の座り方や懐の深さが、本当にかっこよく、アベンジャーズのように見えました。私は、彼らのことを心から尊敬しているしおそらくずっと忘れない、この先もできる限りのことをしたいとずっと考えています。


どうなる、カンゲキ大賞

さて、小劇場エイドの活動を通して、学んだことは多くありました。

コロナ禍でのクラファンの寄付金平均額は他の業界よりも低いそうで、小劇場演劇の業界全体の経済規模を否応なく教えられました。
また、劇場同士にはグループ同士の境界線があることを知り、だからコロナ禍という不測の事態への迅速な対応がむずかしいとわかりました。

そもそも、創作者たちは客演や同じイベントに参加するなどで連携することはあれど、基本は切磋琢磨するものだと思います。

そうなると、一枚岩になれるのは小劇場演劇のファン「観客」?と考え、ファンのコミュニティを基点とした仕組みづくりができないかと考え始めました。
そのアイディアの種をどんぐりマミーさんに聞いてもらい、良さそうと盛り上がったので、やってみようと動き始めたのが「カンゲキ大賞」です。
2021年初夏、下北沢でアイスコーヒーを飲みながら、でした。


ローンチ時のキービジュアル


カンゲキ大賞は「“観客主体の賞”をやりませんか?」とオープンに呼びかけ、集まってくれた有志の方々で運営をしています。本当にいろんな人がいます。
大きな軸は共通しているものの、参加の動機や背景、仕事やスキル、捻出できる時間、演劇の好みやディープさ、本当にさまざまです。

それをこんな若輩者がまとめられるわけもなく、運営メンバーの出入りもありました。
個人的にはそれ自体は悪いことだと思っておらず、現在の運営メンバーは感覚値の足並みが揃っているなと感じます。おだやかに誠実に、自分達にできることを自発的に考え、実行しています。「おとなの部活」という感じです。
「これどうかな?」と各自がやりたいことを持ち寄る場でもあります。ちょっとでも興味がある人、私たちはいつでもウェルカムです!

第1回 カンゲキ大賞
一般投票には1658名から総数3921票もの投票をいただき、予想をはるか上回る反響をいただきました。

しかし、小劇場演劇界の特性として、「想い」「旗揚げ」「ムーブメント」には好意的で共感性が高いけれど、それが体制化すると一気に保守的になる傾向があるように思います。
Xでも「ここを変えたらいいんじゃないか?(提案)」よりも「演劇やりたい(想い)」とぽつん…と言う方がエンゲージメントが高い印象があります。

なので、1回目に注目を集めるよりも、2回目以降が継続できるか、今後この仕組みをこの業界に残すことができるか、ということの方がむずかしく、まだまだチャレンジの途中。

カンゲキ大賞は -小劇場演劇が好きな- みなさんの賞です。
私たち運営は投票結果になにも関与できません。また、誰でも会員・運営になれるので開かれたコミュニティです。
「カンゲキ大賞は必要とされるのか?」 できることは全力でやりながらも、みなさんに望まれていないのに続けるのはエゴになってしまうので、ずっとそれを注視している感覚でいます。

また、こうやって新しい仕組みが定着すると、人・モノ・お金の流れが変わるので、一過性のにぎわいを作るよりも仕組みを残すことに個人的にはこだわっています。

場は作ったので遊びにくる人が増えてほしい。
そして劇場に足を運ぶ人が増えてほしい!

長すぎるご挨拶になってしまいましたが、
第2回 カンゲキ大賞 よろしくお願いします!