「探しものは、夏ですか。」のユーザ動向や収益について
こんにちは。
スタジオワンダーフォーゲル代表のアサカワです。
先日「探しものは、夏ですか。」の累計ダウンロード数が4万を超えまして、とても嬉しく思っております。
夏が近づいたからでしょうか、ありがたい!笑
今回の記事ではスマホアプリ「探しものは、夏ですか。」のユーザ動向などについて、まとめてみたいと思います。
ですので、サガナツを楽しんでいただいているプレイヤの皆様というより、ゲーム開発をしている同業(?)の方などに向けた内容になります。
ゲーム開発をしている方々に向けて、ちょっとしたヒントや話のネタにでもなればいいかなと思い公開しようと考えました。
私たちは分からないことだらけの中あれこれ苦戦しておりますので、この記事を読んだアプリデベロッパの皆様からのご意見・ご感想をいただけるととても嬉しいです。
また、この記事はiOSリリース日の2020年8月14日から2021年5月31日までの期間の集計を元に記載しています。
各ストアのアナリティクスとアプリに設定しているFirebaseのアナリティクスの情報を合わせてまとめてみます。
「探しものは、夏ですか。」の構造
この記事の前提事項として、「探しものは、夏ですか。」について簡単に説明しておきます。
【基本的な情報】
タイトル:探しものは、夏ですか。
プラットフォーム:iOS / Android
価格:無料
ジャンル:ノベルゲーム
利用している広告:UnityAds
最低限の選択肢しかない純ノベルゲームで、4つのエンディングがあります。
エンディング①がいわゆる「真エンディング」となっており、エンディング①までの平均プレイ時間は3〜4時間ではないかと思います。
フラグ管理により、あるルートをクリアしないとエンディング①には辿り着かない仕様となっています。
また、動画広告は、作中での1日が経過するタイミングで動画広告(UnityAds。5秒でスキップ可)の視聴をお願いしています。
2021年5月31日の時点で、iOS / Android累計43,287ダウンロードをしていただいております。
離脱率
以下の表がユーザ離脱率をまとめたものになります。
サガナツは毎日遊ぶようなゲームではないので、ユーザ進捗に対しての離脱率を計測しています。
※初回起動以降の項目はFirebaseのアナリティクスでのユーザ数です。そのため、ゲームをオフラインでプレイされている場合など稀に計測できていないケースがあり得ます。
ダウンロードはそのまんまダウンロード数です。正確には、ストアで「入手」ボタンを押下された回数です。
まず、ダウンロード数に対して、初回起動が82.4%となってしまっているのは、当アプリの容量が300MBを超えていることが原因のひとつだと考えています。「入手」ボタンを押下したときに、容量が大きいことに気付きWifi環境下でないためダウンロードされなかったりするのかな、と考えます。(AppStoreでは容量の大きいアプリは「入手」した後、ダウンロードを問うダイアログが出る)
昔に比べてアプリ容量の問題は少なくなったとはいえ、アプリ容量は小さい方が良さそうです。
初回起動時にリソースをダウンロードする方式であれば、ここでの離脱はもう少し抑えられそうですね。
次の最初のシナリオを読了というのは、作中の1日目のシナリオ(プレイ時間にして10分程度)を読み終えたユーザ数です。ここが最初の動画広告を挿入しているポイントです。
ここがもっとも離脱しているポイントとなっており、初回起動したユーザの半数近くが離脱していることがわかります。
少し触って「合わない」と感じたユーザが早々にプレイを切り上げているのだと思います。
43,287ダウンロードに対して、最初のシナリオを読了したユーザ数は20,140と46.5%まで減ってしまっています。
しかし、ありがたいことに、最初のシナリオを読了したユーザのうち、約半数はいずれかのルートをクリアしており、約27%は真エンドであるエンディング①までプレイしてくれています。
短編ということもあるとは思いますが、リリース前はクリアまでにもっと離脱してしまうと考えていたため、とても嬉しい点のひとつです。
以上のことから、サガナツは序盤で「このゲームできそうだ」と思えたユーザにとっては比較的最後までお楽しみいただけるアプリになっている、と考えていいんじゃないかと考えています。
シナリオ(章)ごとの離脱率
サガナツは作中8月12日までは各ルート共通のシナリオになっています。
そこでシナリオ(章)ごとにどれくらい離脱しているかをまとめたものが以下になります。
各シナリオ(章)はいずれも10分〜15分程度で読める程度のボリュームになっています。
(※前項で最初のシナリオを読了としたものが8月7日です)
当たり前といえば当たり前ですが、シナリオが進むほどに離脱は少なくなっていきます。
共通部の最終日である8月12日のシナリオを読了したユーザ数が10,887となっており、いずれかのルートをクリアしたユーザ(10008)と比べても、879の差しかありません。
大半の離脱者がこの共通部で離脱していることがわかります。
また、8月7日と8月8日の間にはユーザにとって初めての動画広告が入るので、それによりここでの離脱が目立つようになっているのではないかと考えています。
物語の序盤、いわゆる「掴み」はやはり大事だということを改めて感じました。
これより先はシナリオ分岐によって複雑になるため記載は省略しますが、次の項で初回クリアルートの分布を示します。
初回クリアルートの内訳
離脱率の項で記載した「いずれかのルートをクリア」したユーザが、最初にどのルートをクリアしたかの内訳となっています。
この項は、サガナツの内容を知らないとよくわからないかもしれません。笑
開発時にエンディング②を一番最初に見て欲しいと考えて設計していた為、約62%がエンディング②を最初に見るという結果には満足しています。
予想に反した部分としては、② > ③ > ④の順で多くなると考えていたのですが、実際は③よりも④が多くなる結果となりました。
真琴よりもアルバム探した人が多いことに驚きです(笑)
この手の動向は意外と蓋を開けるまで分からないものですね。
広告視聴数と収益性
サガナツの1ダウンロードあたりの広告視聴数は5.2回となっています。
本作は全てのルートをクリアしても合計で20回程度しか広告視聴は入らない作りになっているので、この数字は妥当だと思います。
時期により上下しますがUnityAdsのeCPM(1000impあたりの収益)は3ドルくらいなので、ざっくり計算で1ダウンロードあたり1.7円程度の収益しかないんですよね(涙)
今作は移植作ということもあり、スマホアプリ市場での反応を感じたり、広告やストアのお勉強という実験的な意味合いも込めて開発をしていました。
そのため、もとよりマネタイズはあまり考慮していませんでしたが、思った以上に雀の涙的な収益です。
算数ができる人はここまでの情報でサガナツの累計売上が計算できるとは思いますが、悲しくなるので分かっても黙っててくださいね(笑)
リリース前からなんとなく分かってはいたものの、本作のようなストーリーを遊び切ったら終わってしまうようなタイプの作品と広告モデルの相性はあまりよくないでしょう。
現時点では、ストーリーのボリュームを増やし、継続率を強化したとしても、十分な売上を得るのは難しいと感じています。
このような作りのゲームは売り切りモデルや章ごとの課金モデル等を検討したり、広告モデルでもグノーシアのような周回プレイを前提としたゲームデザインを考えるのもいいかもしれません。
まとめ
今回はユーザ動向をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
ノベルゲームというスマホではニッチなジャンルのサンプルは珍しいかなと思い、公開してみた次第です。
我々としてはせっかく実験した結果なので、これがアンチパターンでも反面教師でもいいので開発者の方にとって何かの参考になればいいなと思っています。
初回起動時のリソースダウンロードはUnityならAsset Bundleで実装できるものの、今回はコスト見合いで見送ってしまったもののひとつです。
ダウンロード方式に変えるとここの数字が変わるのか、とか気になっちゃいますね。(時間とスケジュールに余裕があればアプデして試してみたいんですけど……)
ユーザの半数以上が10分以内(最初のシナリオを読了まで)に離脱しているというのは、普通の数値なんでしょうかね。
リリース前はダウンロード数の1〜5%くらいしか最後までプレイしないだろうと予想していたので、12.6%というクリア率はとても嬉しい数字でした。
今回の記事を読んで「ここの数字普通はもっと多いよ」とか「ウチのアプリはこんな感じです」とか、そういった情報交換をしてくださるデベロッパの方、ぜひご連絡ください!笑
さて、結構(主に収益のところで)ネガティブなことも書きましたが、我々としては実はあんまり気にしてはいません!笑
初めてのアプリリリースにして10ヶ月で4万ダウンロードを達成できただけで非常に嬉しく、次回作へのモチベーションが高まっています。
マネタイズは今後の課題としてさまざまな方法を検討しつつ、今回の勉強した点は次回に活かし、今後も面白い作品をリリースしていきます!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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