見出し画像

脳画像の見方(嚥下障害)

今回は脳画像の読影方法を嚥下障害に絞って解説します。
私が思う、嚥下における脳画像を見るメリットは次の3つです。

・「麻痺と廃用のどちらの影響で可動域制限や飲み込みづらさがあるのか」を把握できる。
・廃用と分かれば、食べることでの改善が容易に可能のため、攻めの嚥下訓練の立案ができる。
・病巣把握により、不顕性誤嚥の発生確率を知ることができる。

脳画像をみれば、上記のようなことが分かるようになります。それでは、具体的に説明していきますね。


簡単なまとめ①

◆大脳よりも脳幹の病変のほうが、嚥下障害が起こりやすい。


◆「中脳、橋、延髄」のどこでも嚥下障害は起こりやすい。延髄は最も起こりやすい。
(中脳5% 橋40% 延髄50%嚥下障害あり)


◆大脳では、錐体路周辺の病変が多いと嚥下障害は起こりえる。
錐体路周辺では①両側病変がないか、②病変は多くないか(広くないか)
の二つの見極めが重要。


延髄の嚥下障害

病変が疑核(のあたり)を含むと嚥下障害は重くなる。疑核から外側へ向かってでている運動神経が傷つけば嚥下障害になる。

延髄病変で起きる嚥下障害の頻度は、外側梗塞で57%、内側梗塞で29%という日本人データがある。一方で、VFでの誤嚥は外側梗塞35%、内側梗塞78%という報告がある。つまり、延髄内側梗塞では不顕性誤嚥が多い。


▶️はっきりわかるような誤嚥がなくとも、延髄病変があったら、嚥下造影なりの精査をしたほうがよい。


下に延髄の画像を付けているので、確認していただきたい。
脳画像にて疑核は見えない。そのため、運動神経路の下あたりと、あたりを付けて確認をするしかない。

画像1

延髄での、疑核の位置


画像2

疑核の位置、どのへんかわかるかな?


なお、脳画像の確認ではFLAIRが多く用いられるが、延髄の確認では、T1かT2強調画像の方が形の同定がしやすい。

画像3

T2とFLAIRの比較



中脳・橋の嚥下障害

中脳・橋での嚥下障害は、錐体路病変が多い。この部位の嚥下障害の評価には、片麻痺があるかどうかが目安となる。

中脳・橋レベルでは原則的に片麻痺のない嚥下障害はみないと思ってよい。もし片麻痺がないのに嚥下障害になっていたら、老嚥の可能性あり。



テント上の嚥下障害の病変(基底核レベル)

この内側の赤実践と点線で囲んだ領域に大量の病変があったら、嚥下が危ないと思ってよい。この部分には錐体路を含むからである
また、慣習的にはこの部位の両側損傷にて仮性球麻痺と呼ぶ場合もある。

画像4

基底核レベルでの嚥下障害出現部位



テント上の嚥下障害の病変(放線冠レベルより上)

側脳室の外側がだいたい放線冠である。ただし、四肢の運動神経とは異なり、嚥下に関わる運動神経路は側脳室の外側でもかなり前方であるため注意が必要。

また、この放線冠レベルでは、認知機能に関わる上縦束、FATなどが通っている。ここに病変があったら、高次脳機能の障害の疑いもある。

赤丸で囲んだ部分が、嚥下に関わる運動神経路の部分である。

画像5

放線冠レベルでの嚥下障害出現部位


まとめ②

 中枢性の麻痺や球麻痺による嚥下障害の確認のためには、

① 延髄を確認(特に疑核は必須)
② 中脳・橋病変であれば片麻痺の確認
③ テント上であれば、基底核レベル、放線冠レベルの確認

が重要です。
ただし、上記以外に、古い病変が影響して小さな脳卒中にて、大きな嚥下障害が出現することがあります。注意をお願いします。

参考文献
○国家試験にも臨床にも役立つ!リハビリPT・OT・ST・Dr.のための脳画像の新しい勉強本
著  粳間 剛

いただいたサポートは、書籍の購入費用にさせていただきます。より多くの人に、より良い情報発信ができるよう、今後も頑張ります。