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二次障害になる前の、子どもなりの適応行動を見逃してない?

こんにちは。子どもの発達を支える言語聴覚士の三輪桃子です。

近年、発達障害の子どもの「二次障害」という言葉、「二次障害にならないことが大切だ」といった考えが広まってきているように感じます。しかし、その言葉だけを聞いてもピンとこない人もいるのではないでしょうか。そこで、今回は、二次障害とは何か、なぜ起こるのか、どうすれば予防できるのか、といった点をまとめていきたいと思います。

※この記事は、石川先生と言語聴覚士三輪との発達凸凹インスタグラムライブを部分抜粋したものです。

ライブリンクはこちら⇩

https://www.instagram.com/hattatsu.hoiku.gakkou/

二次障害とは?

一般的に、「発達障がい」という人が生まれながらに持っている一次的な性質から、鬱や適応障害など精神科疾患や、暴力などの行為障害という社会に害をなすような行為につながった場合に「二次障害」と呼びます。

これを私(石川)なりに言い換えると、その子が持っている本来の性質を周りが理解しない状態で、本人が頑張ってることも評価されずに「どうしてできないの?」と責められ続けて、本人が社会に対してどのように自分を表現するかが分からなくなった時に、二次障害につながると思っています。

二次障害の表現の仕方として、自分を分かってくれない場所には行きたくない(内性化)となるか、外に対して戦っていく形(外性化)になるか、という違いがあります。大切なのは、その表現方法が定まるまでの経過で、子どもが試行錯誤しているかもしれない、という視点です。

二次障害に至るまでに、どんな過程をたどったか

二次障害に至るまでに、子どもなりに、自分が適応していくため、与えられた環境で自分が生き抜くために、自分なりに良いと思った方法をとるという過程があります。

だから、あまりに簡単に「二次障害だよね。」と大人が決めつけたり、「元々障がいがあったから二次障害が起こるよね」と単純に捉える風潮は、子どもに申し訳ない気がするのです。

もちろん、鬱など医療的に診断した場合は、その状態から行動適応ができるように薬剤などを使いながら治療を進めていきますが、二次障害になるまでの過程に何が起こったのかを考え直さなければ、根本的な改善にはつながらないと思います。

例えば学校の中で二次障害が起こった時には、これまでの教え方や伝え方では子どもが分からないことが多く、困りを抱きやすかったということなので、やり方を変えていかないと問題は解決しないのです。

学齢期での困りの発見の難しさ

幼児期は、目立つ行動がある子どもや、対応を手厚くした方がいい子どもは、園全体で様子が把握され、園ぐるみで対応されることが多いです。

学校は、園に比べると規模が大きく、一人一人の子どもの困り感を把握することは難しい場合があるのだと思います。先生も入れ替わりがあるので、前の学年までの状態が分からないこともあります。また、学齢期になると、誰がその問題に絡んでいて、どこから調整したらいいのかが、とても分かりにくくなります。

そういった状況もあり、子どもがどうも手詰まりだと感じる状況は、学齢期に起こりやすいと考えられます。

「わざとやってるよね?」という色眼鏡

もう1つ幼児期と学齢期の違いがあります。それは、学齢期になると、「子どもが、わざと行動しているのではないか」という色眼鏡が、大人側にかかることが多くなることです。

幼児期は、お友達を叩くことがあっても、「本人は人を攻撃しようと思ってやってるのではなく、分からなかったり、それしかとれる手段がなかったのだね」といった見方をされやすいです。一方、学齢期に入ると「わざと叩いた」とか「わざと反抗的な態度とっている」とみられることが増えていきます。

中には、本人としては「この行動なら良いのではないか」と思って行動していることもあると思います。それを、ことごとく「こんな行動はダメだ」「こうしなさい」と言われつづけると、子どもとしても頑張ってやろうという姿勢はなくなります。そうすると、自分を否定したり、攻撃したりという極端なかたちで表現がでてくる可能性があるのです。

本人は、出来ていないことはよくわかっていて、出来ていないことを嫌だと感じていることが多いです。だから、みんなは上手くやっているのに、自分だけが出来て無いと感じると、「よし、みんながやってなければいい」と極端な発想に至ってしまうことがあります。そうすると、みんなが一生懸命勉強してるのを邪魔しに行くとか、大きな声で歌を歌って先生の声が聞こえないようにするとか、意図的にみんなができない環境を作ろうとすることがああります。

周りから見ると困った行動で、確かに「わざとやっている」とも取れますが、子どもとしては「この行動しか思いつかなかった」ということがあるのです。

行動をひも解くことが、二次障害予防の鍵

大人は、子どもがなにを考えていて、何を狙って行動しているのだろう、ということを想像することが大切です。小学校低学年ごろまでに、違っていてもいいので、とにかく本人の意図を推測する姿勢で、本人の願いを叶える妥当な方法を提示してあげることで、巷で言われてる二次障害は減るのではないかと思います。

今の世の中の風潮をみて、少し心配に思うのは、「これをやれば上手くいく」といった本の中には、あまり本人の意図をあれこれ想像するといったアセスメントの重要性ついて書かれていないことです。

ひとえに発達障がいといっても、一人一人その様相はさまざまです。しかも、それぞれ生活背景も経験も違います。だからこそ、必ず効果がでる技やHOWTOにばかり飛びつくのではなく、正解は1つとは限らないことを前提にアセスメントをすることが大切なのです。

できる/できない場面を比べるアセスメント

学校や園に訪問にいくと「いつも同年代の子と違うことをしてるんです」と、先生方から訴えられることがあります。しかし、よくみてみると、ものすごく短い時間だとしても、同級生と変わりない行動をとれてる場面があったりします。例えば、給食の始まる前の一瞬だけ座っている、などです。

実は、そういった上手く行動で来ていてる場面は、本人がどう動けば良いかを分かっている場面です。そこで、「どうやって、この場面の動き方を覚えたのだろう?」というのが、アセスメントの指標になります。目で見て分かりやすいシーンは割と動けてる、ということが分かれば、他の場面でも目で見てわかる様に指示を出せば、動ける可能性が高まるということです。

子どもはそういった視点でみられることで安心できるし、人のことも信頼して動けるので、二次障害といわれる極端な自己批判には繋がりにくい気がします。

今の世の中の知識は、簡潔で分かりやすいほうが好まれるのですが、子どもを理解するのはそんなに簡単なことではないと思います。私たちが知ってる知識は、子どもの発達のほんに1部しかすぎないと思って、アセスメントを大切にしていきたいです。

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