見出し画像

家では困らない子が園から指摘されるの、なんで?

こんにちは、フリーランス言語聴覚士の三輪桃子です。私は、言葉やコミュニケーションの発達に支援が必要なお子さまの成長を助ける仕事をしています。療育や保育園の巡回相談に携わっています。

この記事は、小児科医の石川道子先生と行っている「発達障がいの集団あるある」と題したInstagramライブをまとめているものです。

ライブリンクはこちら⇩

今日のテーマは、「家庭では困っていないのに、園からお子さんの行動面について指摘されるのは、なぜ?」です。これは、恐らく少なくない話で、健診などでも特に問題なく、家庭で対応に困っていないにも関わらず、保育園や幼稚園に通い始めるとお子さんの行動を先生から指摘されたり、「こんな行動お家でもありますか?」と尋ねられた行動が家では全く見られなかったり…ということがあります。これは、一体どういうことなのか、考えていきたいと思います。

家庭と集団生活でギャップがある子は存在する

子どもが落ち着いて行動を取れない時は、時期やクラスの環境や先生との相性など、どちらかというと子ども側の理由というよりも、環境面の影響が原因なことがあります。これは、私(三輪)の所感ですが、環境面の影響が強い時は、クラスの中で1人だけ目立つ行動をするというよりも、多くの子が力を発揮できず落ち着かないように見えます。

また、同じ子どもの状態でも、園の先生によって捉え方が異なる場合があるので、担任によって指摘される/されない、の違いはあると思います。

しかしながら、周囲が落ち着いてきていたり、それなりに流れに沿って行動できるにも関わらず、家庭よりも園の方が極端に落ち着かない子がいる、というのも事実です。そのような子は、園としては「気になる子」「援助を手厚くしたい子」となりますし、「親に子どもの状態を共有した方が良い」と判断されることがあります。

例えば、入園時に親からは「トイレ動作は1人で完璧にできます」と聞いていたにも関わらず、入園するとうまくできずに漏らしてしまい、お家と園での様子にギャップがあることがあります。

この場合、考えられることの1つは、家庭では条件が限定されてたので出来ていたのではないか?ということです。園はトイレと部屋の距離が遠かったり、トイレ以外でパンツを脱ぐことはありません。もし、家庭で、いつもトイレに駆け込む形でギリギリで間に合っていたり、パンツを廊下に脱ぎ捨ててトイレにいく習慣がある子は、園では間に合わずに漏らすことがあります。それから、家庭のトイレで順番待ちをすることはほとんどないと思いますが、園のトイレでは順番待ちが起こることがあります。直前にスリッパを履き替えるなど、家ではない手順がある園もあるのです。

新しい環境といつもの環境の違いに戸惑い、新しい環境にスムーズに適応できない子がいるということです。

手がかりの量に左右される

家庭に比べ、園で行動するための手がかりが少ないと、途端に動けなくなる子もいます。

例えば、家庭での食事は、親御さんが「ご飯だよ。」と声をかけてくれて子どもが知らん顔してても、誘導して座らせてくれたりします。また、環境的に、すぐ見える場所にご飯が並んでいるので、見た目やいい匂いの手掛かりで、「今は食事の時間なのだ」ということが分かりやすいです。

一方、園生活では、年齢にもよりますが、「ご飯の準備をするよ。」と一人一人に声をかけるのではなく、みんなに対して一斉に声をかけられます。生活の流れを把握している子や声かけの理解がすぐにできる子は、パッと動き始めます。一方で、声かけだけでは十分に理解できない子は、皆が動いた行動を見て真似して動き始めるか(言葉以外の見る手がかりを参考に動く)、時にはぽつんと取り残されたりします。

3歳児クラス以降は、「生活周りのレギュラーな活動は、言葉での声かけで動ける」という想定で運営されていることが多いので、実は言葉の理解力が弱い子は、苦労するのです。

近年では、家庭の構成メンバーがどんなに多くても2桁はいかない家庭がほとんどだと思います。人数が少ない環境だと、自然と大人が子どもに合わせて動きやすいです。兄姉がいる環境であれば、その行動を真似をしたらうまく動けます。しかし、集団になると、家庭のように待ってもらえない、見本にする程動ける子が周囲にいない、ということで途端に手がかりが減り混乱する子がいます。

3歳児クラスから、行動が目立つ子が増える理由

保育園の巡回相談をしていると、3歳児クラスでの相談が最も多いことに気づきます。先生としても、0〜2歳はなんとか過ごせていたけど、3歳になり、行動が気になる子が増えるのです。

これは、保育園の環境や学年の事情にも関係しています。0〜2歳クラスは、先生の人手が多く、子どもが大人数だとクラスを2つに分けている場合もあります。それが、3歳児クラスになると、担任が1人で2桁の人数の子どもをみることになるので、フォローや手がかりが減ることが痛手になるタイプの子は、周囲に比べ行動が目立ってきます。

また、3歳からは「いつもの流れではない活動」や「みんなで何かに取り組む活動」が増える傾向にあるので、イレギュラーな活動や集団活動が苦手なタイプの子は、周囲に比べ行動が目立ってくることがあります。

幼稚園で初めて集団に入る3歳児だけでなく、0歳から保育園に通っている子にとっても、3歳児クラスは戸惑いが多い時期なのです。

家庭でも発見できる園で困りそうな兆候


保護者の方が、入園した途端、子どもの行動指摘されてびっくり!ということにならないために、「いつもと違う状況でも、いつものように行動が取れるか」という点は、入園前に確認しておけると良いと思います。

例えば、祖父母の家に行った時や、親と離れて預けられた時にどういう行動していた、ということは大事な情報です。

1番子どもを見ている時間の長い親以外の人に預けることで、親のサポートで出来ている状態なのか、相手が慣れていない大人でも行動できるのかを図ることができます。この時に、丁寧な事前準備はせずに引き渡してみることで、子どもの状態が分かりやすくなると思います。

乳児期は、いつもお母さんがみているのであれば、お父さんがうまく対応できないこともありますが、一般的に3歳くらいのお子さんであれば、対応者が変わっても、それほど困り度合いに差が出ないはずなのです。

もし、困り度にあまりに差が出ているのであれば、お父さんの対応がまずいというよりも、子どもが慣れない環境に適応するのが苦手という可能性もあるのです。

ご家庭でも、事前に慣れない環境の苦手さをキャッチできていれば、入園前に園に伝えておくと良いと思います。そうすることで、入園当日も手厚くフォローしてもらえる可能性があり、子どもも楽しく過ごしやすくなるのではないでしょうか。

検診などの、イレギュラーで人数の多い場所の姿も参考になります。1歳半検診、3歳検診で、見たことのないくらいの大泣きになったという姿は、初めての場所や大人数の場所の苦手さが現れている場合があります。それは、初めて園にいく時の姿と通じるものがあるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?