小走りがダサい男、歩き方を変えた -2-

小走りがダサいと自覚したショックから立ち直れたのはバスを降りたときだった。昔から落ち込むことが極端に少なく、感情の揺れも薄いのが幸いした。

バス停から職場まで約十分の徒歩で、ひたすら観察。
エロい目的ではないので女性の皆さんごめんなさい、と心中謝罪しながら観察。

足の細い女性がいてまた足の細い女性がいて太いと思ったら足の太い男性だった。その後は足の細い女性と足の細い男性、足の太い女性、足の太い男性、足の細い女性と続いている。

目の前に並んでは流れる色とりどりの足には、それぞれ個性があった。パーツで分けるとするとふくらはぎ、太もも、両方兼務の3タイプ。

ふくらはぎが細いタイプは主に女性。(太ももも細いかどうかは不規則)

ふくらはぎが太いタイプは総じて太もももデカイ。これは男性率が圧倒的に多い。

ふくらはぎから太ももまで細いタイプ。男女ともに存在しているが現れる確率は少ない。レアタイプ。

ここまでは想像通りの結果。

さらに分析した。
見るべきポイントは靴の裏面。足裏がどこまで見えるかである。

かかとまでしか見せてくれないタイプ
つま先裏までしっかり見せてくるタイプ
土踏まず辺りまでしか見せないタイプ

それぞれの特徴はこうだ。
かかとタイプは、隙きがなく用心深いのか見せるのは一瞬で対空時間が少ない
つま先裏タイプは、これでもかと脳裏にはっきり残るぐらいに主張し対空時間が長い
土踏まずタイプは、その中間なのでまぁ当たり障りない程度にみることができる

なるほど、なんだか特徴が見えてきたな。
そんなことを仕事の合間に考察していた。

数日間は分析結果の精度を上げるため同じ事を繰り返した。

変態ポイントもとい観察眼を鍛えた私は次の疑問にぶつかった。

何故 みんなの歩き方が違うのか である。
生物学的な分類だけでは説明できない。男女の差だけでは解決できないことが混乱の基となった。

先入観だけで言えば、「女性は細い生き物」「男性は細くない生き物」だけで終わった。誰かは知らないが昔からそう教わったような気さえしてくる。

「釈然としない」
ポツリと独り言まで言ってしまった自分に多少驚いた。
でも、だからといって何かが変わるわけではない。
行動だって何も起こしていない。その日は動画を見ながら寝落ちた。

毎日の日課の観察に模倣が加わったのは、頭の中で考えるだけでは解決しなかったと認めたあの日の翌日からだ。

面と向かって動きを真似していると危険な人認定されるので、目の前を過ぎていった人の歩き方を思い返してはひたすら真似をした。動きのトレースは研究者の基本である。

そう言えば、「正しい歩き方」で入力し検索した時期がある。
そこにはこう書いてあったのを思い出した。つま先に体重を乗せるらしい。そのときは意味がわからなかった。
どんなに意識しても気付いたときには、かかとに体重が戻ってしまうからだ。

立つだけならまだつま先に重心がかかる感触はわかる。
歩き出すと途端に崩れる。つま先に体重を乗せたくても乗らないのだ。
かかと重心の生活を送るうちに、必要がないから筋肉を削ぎ落としてしまったのだろう。
病気や障害の問題があるわけではないからもちろんやろうと思えば出来る。ただ持続が出来ないだけ。今の私に足りないだけ。

次第に面白い発見も視えるようになってきていた。

階段に足をかけるときだ。

つま先重心が身についてる人は、段差の縁からかかと側が浮いているのだ。
私は足の端から端までを丸っと段差の中に入れてしまう。かかとに体重を乗せるためにだ。

東京駅にある長いエスカレーターをご存知だろうか?
そこで試してみた。
案の定ぎりぎりの戦いを繰り広げることになった。
いやエスカレーター戦に耐えられただけだった。

その一度きりの戦いで疲弊した私の足たちは泣いていた。
いうならば筋肉痛直前になる筋肉パンパン状態。
帰るまでの移動すべてが痛かった。
試合に勝って勝負に負けたとかなんとかという名言はこういうときに使うんだな、と一つ勉強になった。

帰り道、お友達の重い足くんを気遣いながら歩いた。

もしサポートしてくれたら、その数の分だけ私の自信になります! でも、ホントは いいね!やフォローだけで十分嬉しいです(*^^*)