嚥下食の話② 死ぬまで酒を楽しみたい!を叶えたい
おはようございますme;です。
「死ぬまで酒を楽しみたい」
とある患者様に言われた言葉です。
私の勤める病院は高齢者が8割以上占めています。
そのため、退院時に食事に対する何らかの指導が行われます。
食事の形態によるものから
塩分制限や糖質制限、栄養面に関する事
管理栄養士さんと協力して指導する日々ですが
まだまだ勉強不足な所も多く
四苦八苦しています。
そんな中
先月退院された患者さま
主治医から退院許可についての説明の際
「家帰ったら冷酒飲みたいなー」
「死ぬまで酒は楽しむて今回の病気(脳梗塞)で決めたんや」
退院日を待ち遠しく笑顔で話されてました。
先生からも「お祝いの時とか少しならね」と
本人、ご家族さまに声をかけられてました。
しかし、この方は脳梗塞の後遺症により飲み物にはとろみが必要で
前日にはご家族さまにとろみ指導を行ったところでした。
先生からのお話の後、ご家族さまより
「お酒にもとろみつけれますかね?」
原理的にはつけられるが院内では試したことがなく、退院までご家族さまと試すこととなりました。
この患者さま、実は酒屋の元店主。
今は息子さまに引き継がれましたが病前までバリバリと働いていました。
そんな試みが始まった退院2週間前。
病院では実際に作れないためレシピを探し
自宅にて何度か試作をしていただきました。
そもそも「とろみ」とは?
飲み物に何故必要なのか?
1.とろみとは?
とろみ調整食品=増粘剤
液体や食物にとろみをつけるための添加剤
私達はよく「とろみ剤」「とろみ粉」といいます。
料理ではよく片栗粉などでとろみをつけますが
熱を加える必要があります。
しかし、この増粘剤は飲料の種類や温度に関係なく粉末を加えるだけでとろみをつけることができ、加熱は不要。
増粘剤の量により、とろみの硬さを変えることが可能で温度や時間に関係なく均一性を保ちやすいのも特徴です。
2.誤嚥ととろみ
では、なぜ嚥下機能が低下すると
とろみが必要なのか。
嚥下機能が低下すると
口に入れてから「ごっくん」するまでに
力がいる
時間がかかる
といったことが起こります
そのため、お茶や水といったサラサラした液体は「ごっくん」が起きる前にノドに流れてしまい「ムセる」=「誤嚥(ごえん)」が起きやすくなります。
そういった時に増粘剤を使用し
液体にとろみをつけることでノドに流れる速度を落とし「ごっくん」に間に合わせるのです。
とろみの段階については1つ前の投稿
「嚥下食の話①災害時を考える」を参考にしてください。
3.とろみ酒の試み
レシピ検索から
①ビール
②日本酒
③ワイン
で試作を行い
息子さんに試飲して頂き感想をいただきました。
レシピの参考はこちら↓↓
https://www.nutri.co.jp/enge-sake/#shizuoka
https://www.food-care.co.jp/blog/posts/8733
1つ目のサイトは日本酒のとろみ酒を品評しており、すごく興味深い内容でした!
息子さんの感想としては
①ビール
ビールは少し苦味が出やすいから飲みにくい
ビール好きにはいいのかもしれないが
父親は冷酒好きだから好まないかもな
②日本酒
これは新しい!
きちんと種類によって風味も異なって
飲むのが楽しいかもしれない
新しい酒を仕入れた時に試飲させてあげられる
③ワイン
ワインの種類によって良し悪しが別れそう
全体的に白ワイン向きかもしれないな
ビールのレシピを応用してシャンパンも
してみたらいいかもしれない!
すごく前向きに取り組んでいただき
むしろとろみ酒作りを楽しんでもいるようで
素敵なご家族さまだな。と聞いてて心が暖かくなりました。
退院後、しばらくして
外来通院された際、お声をかけてくださり
その後のとろみ酒について
「飲みたいと要求する頻度が増えて困ってます。」と嬉しそうに話す息子さまの隣で
「ありがとね、まだまだ仕事が出来そうや」と一緒に息子さまとお酒が飲めることを喜ぶ患者さまがすごく印象的でした。
そして、今回のとろみ酒の試みをきっかけに
見つけたという「とろみつきの日本酒」を店に置こうかと思ってる
と教えていただいたお酒を最後にご紹介します。
今日は久しぶりに家でお父さんと
お酒でも飲もうかな。
今日も素敵な1日を
me;でした。
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