パソコン音楽クラブ「See-Voice」によせて
すぐには何も思い出せなかった。
ただ緩い水の中にいるような、柔らかい霧の中にいるような感覚だけが残った。
堤防に立った。
小さな漁港で育った自分にとって海は、日常のそばにあるけれど、日常とは少し違う場所で、生臭くて、薄汚くて、少し危ないけれど、楽しい遊び場で、大きくて、怖くて、景色は良かったけれど、よく分からなくて、どこか不気味で、いつも死の匂いがする場所でもあった。海は、空で、風で、音だった。
海の見える堤防に座ると、なんだか感傷的になって、普段恥ずかしくて言えないような気