未来の語り場についての取り組み
全国の生徒のみなさんと未来について語り合う、私たちは明日に何をしようか一緒に考える「未来の語り場」の取り組みを行なっています。
12月に開催した「未来の語り場」の様子は下記ブログに掲載いただきました。
なぜ「未来の語り場」の講師になりたいと思ったのか、どんな想いを持って場づくりをしているのか、これからどうしていきたいのか、を知ってもらいたいと思いnoteに書くことにしました。
1.きっかけと理由
「全国の生徒のみんなと未来について語る場をつくりたい」
そう思ったきっかけは、私がどういう未来をつくりたいか?を社内外いろいろな人との対話を通して考えはじめたことがきっかけでした。
(参考)
ひとつのきっかけ
『シン・ニホン』読書会
私は「誰かが決めたとおりにがんばることが、私のがんばる意味」と思っていた学生でした。未来について、自分がこうしたいというより、こうあらなければならない、本当に自分が大切にしたいものが何か、たしかにそれはあったと思うのだけど、それを言葉にしたり誰かに伝えてみる、という機会がありませんでした。
もしかすると、自分の大切にするもの、大切にしていきたいと思っていることを、言葉にしてみる機会、またそれを人から聞く機会は、今の日本の教育の中ではあまりないのかもしれません。
ただ、私は今、日々を生きる中で「自分の本当に大切にしたいものは何なのか」を言葉にし、自分の気持ちに本当に素直になることが特に重要だと思っています。
そして、自分の大切にするものを人に伝えること。また、人に伝えられたときに、それをまっすぐ受け止めること。私の大切にしたいものを、私たちの大切にしたいものにするには何が必要だろう。私たちって、誰のことだろう。
世の中には学校や社会、いや人間の定めた「ゲームのルール」があり、それを学んで実践すれば、たしかにルール上はうまくいくのかもしれない。ルールに則るので評価もしやすい、されやすい、優劣がわかりやすい、正誤をつけやすいのかもしれない。でも、そのルールを守ること、そのルール上でゲームを攻略することよりも、本当はもっと大切にしなきゃいけないものがある。
人間の定めたルールは、完全に正しくはない。
たとえば、モノをどんどん生産し、そのためであれば何をしてもよい、固定の尺度を設定し、それをひたすら盲目的に続けること=発展だという想定のもと定められたルールだとしたら?
現実に今そのルールと現在の世界の現状との乖離が起こっている。
だから、もっと、外側のルールではなくて、本当に大切にしないといけないことに気付き、言葉にしてみて、話し合ってみて。正しいかはすぐわからない、それでもやっぱり大切なものを見失わないために、私たちがそれぞれ向き合っていかないといけないと思っているのです。
そのことについて、ちゃんとまずは知っておくこと。考えることをつづけること。人間が定めたルールに則りそうになってしまう一つのきっかけである、学生の間に、考える場を提供してみたいと思ったことが理由です。
2.未来の語り場のゴール
「未来をジブンゴトに語る」
私が、未来の語り場で設定したゴールです。
その場に参加したみなさんが、どのような状態になってほしいか、というゴールです。
しかし、この「未来をジブンゴトに語る」ことが難しいということも重々承知していました。
たとえば、地球や世界の現状を正しく説明し、いまみんな世界共通のSDGs17の目標に向かってそれぞれがんばっている、では明日からあなたは何をする?と問いかけても、「ゴミをなるべく出さない」「差別をしない」「ムダな買い物をしない」という回答が多く出てくるでしょう。
正しいです。やるにこしたことはありません。
でも、自分が未来のためにどうしてもやりたいこと、もしくは、本当に自分の本心からその言葉を発することができる状態になるのか?そこを考えつづけました。
「キレイゴトじゃない?」
なにかこちらから提示する情報が、これを言わないといけない正しい解を言わせることを、参加者のみなさんに強制してしまうような気がして、これは私の作りたい「未来の語り場」ではないと感じました。
3.未来の語り場に取り入れた学びと内容
では、どう考えればよいのだろうか。
私が、ゴールに近づくために参考にした内容が下記です。
①ていねいな発展
ていねいな発展とは、チリの経済学者マックス・ニーフが「Human Scale Development(人間サイズ発展)」という著書の中で提唱したものです。
数字を追う、モノをどんどん生産する、売上を拡大し続ける、そうすることで経済は発展し続ける、、じゃなくて、そもそも「発展」てなんだっけを考える必要がある。
・一人ひとりが自分らしく幸せに生きられるよう、発展し続けながら生きる。
・「私だけの幸せ」じゃなく、「私たちの幸せ」を考える
上記のようなことを、武蔵野大学の公開授業に参加しつつ、対話を通して学び、深めていました。
(参考)牧原ゆりえさんの対話記事
②NVC
NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)とは、1970年代に、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって体系化され、提唱された、コミュニケーションの方法です。具体的には、観察(Observation)、感情(Feeling)、ニーズ(Need)、リクエスト(Request) の4要素に注目しながら、自身の内なる対話や、相手の言葉の奥の意図の推測、相手との対話を行います。誤解や偏見、思い込みを注意深く見きわめ、「今」の気持ちと、その奥にある大事に思っていること・価値を置いていることを明確にしていくと、本当にやりたいこと・望むことを見出し、自らの力で実現する原動力が身のうちに生まれます。
ていねいな発展の対話のなかでもNVCの考え方がありましたが、NVCは私が「自分の想いをどうすれば人に対立せず伝えられるんだろう?」と思い、悩んでいたときに、本屋さんで偶然出会ったものでした。
相手が出す表情、言葉、沈黙をじっくりと見つめ、その人の心の奥底に大切に持っているものは何だろう。コミュニケーションのあり方につき、現在の自分に大きな意味をもっている考え方です。
③パーパスカービング
いま私が働いている富士通では、Purpose Carving(=自身のパーパスを彫りだし、言葉にする対話のプログラム)があります。「私」が何を大切にしているか、何をしたい人物か、何者であるかを掘り起こすものです。
(自分のパーパスについては、改めてnoteに書きたいと思っているので自分のパーパスについては少し省略…笑)
私も働きながら、自分のパーパスを掘り起こしていますが、これは、私のような働いている大人だけでなく、学生でもどんな立場の人でも年齢を関係なく自分が何を大切にし、何をしていきたい人物であるかを語れる状態になる、もしくは考えるきっかけを持つことは非常に大切だと思っています。
パーパスカービングとは何ぞや?はぜひ下記小針さんのnoteと記事をどうぞ。
4.未来の語り場のプログラム内容
上記のような思いをもとに、つくった
私の未来の語り場プログラムはこのような内容です。
ゴールは
「未来をジブンゴトに語る」
ルールは3つ。
①自分を主語に語ろう!
②他の人の意見に耳を傾けよう!
③多様な意見を楽しもう!
1.「私の幸せ」と「私たちの幸せ」のちがいを考える
ふせんに、「私だけの幸せ」「私たちの幸せ」を考えて、対話を通して、違いや、そもそも「私」と「私たち」のちがいってなに?「私たち」ってだれ?を対話してもらいました。
2.会社のパーパスと私のパーパス
会社のパーパスと私のパーパスを紹介し、なぜ私が今このパーパスをもって働いているのか、会社も、私自身も、「私たちの幸せ」を考えていることをお話しました。
3.みんなのパーパスを考えてみる
「最近どうしても許せなかったこと」をテーマに、大切にしたい価値観を見つけてみるというワークを行いました。
下記4人組で役割を設定しながら対話をし、大切にしたい価値観を探索してみました。
①話し手:うまく言葉にならなくてもOK!そのときの想いを素直に。
②インタビュアー:話し手のお話を深堀する
③価値観発見係:ニーズリストから話し手の大切にしたい価値観を発掘。
④受容係:相手の顔をまっすぐみつめ、うなずき、想いを受け止める。
4.わたしたちは未来に何をしよう?
3.で掘り起こした、「それぞれが大切にしたい価値観が大切にされている世界ってどんなのだろう?」を対話してもらい、さいごに、その世界のために、「私は明日からどんな一歩をふみだせるだろう?」を宣言をしてもらいました。
5.今後私はどうしていきたいか
このプログラムは、私が講師・ファシリテートをするからこそできるプログラムではなく、誰でもファシリテート・参加・対話できるプログラムになっています。
上記のプログラムを参考に、今自分のいるコミュニティのみなさんと話し合ってみる場を作っていただくことも思っている以上にかんたんにできると思います。
全国各地で、学校で、職場で、どんな場所でも。
このような対話の場が生まれてほしい。
そのような想いをもって、私は未来の語り場活動をつづけていきます。
※掲載内容は私自身の見解であり、富士通グループを代表するものではありません。
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