Vol.008〜露出のトライアングルの話〜
露出に関しての話も、ようやく今回で一区切りです。
適正露出(見た目と同じ明るさ)を調整するには
絞り
シャッター速度
ISO
の3つを組み合わせていく必要があることを学びました。
そして、それぞれには露出を調節すること以外に
ボケの量
ブレやすさ
ノイズの量
に影響を与える役割がある事も知りました。
下記は、そのことをイラストで表してあります。
この3つの数値の組み合わせで、自分がほしい明るさを求めていくのですが、前回の最後でもお話したようにこの3つは
「露出のトライアングル」
と呼ばれ、それぞれが絡み合いながら存在しているので、なかなか理解しようとすると大変です。
個人的な考えとしては、トライアングルではなく
「絞りとSSのツートップ」と「その仲間たち(ISO感度)」
という考え方でいいかなと思います。
ISOの数値は、その環境の明るさに応じて一定にして、絞りとSSの組み合わせだけを考えたほうが、わかりやすいです。
絞りとSSの組み合わせを考えよう
絞りとSSの組み合わせ、その考え方のポイントは
「足した合計が同じになる組み合わせ」
を考えて、調節してみようということです。
5+5=10 4+6=10 3+7=10 2+8=10 1+9=10 6+4=10 7+3=10 8+2=10 9+1=10
数字で書くとこうです。答えが10でも、その組み合わせは色々あります。この式ですが
絞りの値 (光量) + SSの値 (光量) = 明るさ (写真の明るさ)
と考えてください。(答えが10というのは例えです。)
たとえば5+5=10で表す写真の式があり、答えの10は適正な明るさだと仮定します。そこから、
【仮定1】
「もう少し絞りを絞ってピントをはっきりさせたいから1段絞りを絞ろう」
と思い調整したとします。絞る=光量が減るので、絞りは5から4に1つ減ります。そうすると
4+5=9
という式になり、写真の明るさは10から9に減りました。
ピントははっきりしたいけど、明るさが増減しては困りますよね?では、どうすればいいのか?
もうわかりますよね。
4+6=10
と、SSの値を増やせばいいのです。
SSの値を増やすということは、SSの開いている時間を長くしてより光を取り込むようにするという意味です。
【仮定2】
「動いているものをもう少しピタッと止めて撮りたいからSSを1段速くしてみよう」
この場合は、SSを速くする=光量が減るですから、SSは5から4に1つ減ります。なので
5+4=9
となります。暗くなってしまった写真を明るくするには??
6+4=10
とすればいいわけです。
絞りの値(光量)を増やすということは、絞りの大きさ(絞りの直径)を大きくすることでしたよね。
絞りを1段絞ったときは、シャッタースピードを一段遅くする。反対に絞りを1段開けたときは、シャッタースピードを一段速くする。絶えず、バランス調整をすることで、同じ明るさの写真を取ることができます。
F2.8-1/500 F4-1/250 F5.6-1/125 → 同じ明るさ(同じEV)
詳しい話をすると、この考え方のことを
EV(Exposure Value)と言います。EVの数値は写真を撮影するシーンの明るさを表していて、表もありますがこれはまあ、覚える必要はないでしょう。
実際の写真を見て学ぼう
実際の写真を見て、もう一度おさらいしてみましょう。
上の写真を基準に考えましょう。
SS 1/250秒 絞りF5.6 ISO 400 で適正な明るさです。
そこから、もう少し絞りを絞りたいのでF8にすると
絞りだけ動かすと、このように写真は暗くなってしまいます。バランスが大事です。絞りで暗くなってしまったらSSで明るくしてあげましょう。
SSを1段遅くすることで、バランスが取れました。
こうやって、バランスを取りながら調節していきます。
組み合わせの数値を覚えるのもいいですが、最初はファインダーにあるインジゲーターを見て、プラマイ0になるように調整するのがわかりやすいです。
では、問題です。最初の画像からもっともっとぼかしたい!
なので、絞りをF5.6から2段開けてF2.8にして撮影します。
すると
当然、そのままだと2段分明るくなってしまいます。どうしたらいいでしょうか?
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答えは
SSを1/250から1/1000 に2段分速くして(つまり光量を減らす)、適正露出にします。
絞りとSSがどちらも重要なシーンとは?
絞りとSSのどちらの値も重要という場面、意外とあって
「大人数の集合写真で、ピントはちゃんと前から後ろまで合わせなくては。でも、手ブレなど絶対ダメ!」
「サッカーの試合で、選手だけにピント合わせたいから絞りは開放ぎみで。でも、動きが速いからSSは速くしないとな。」
「森の中に流れる川をくっきりとボカさずに撮りたい。そして、川の流れはブラして流れを強調したい。」
どちらか片方だけを調節できればいい!ときももちろんあります。その場合、前回お話したAvとかTvモードで撮ったりしますが、その時でもカメラの中でちゃんと、どちらかを動かしてもバランスが取れるようにしてくれているのですね。
第3の手段〜ISO感度〜
そして、もうひとつ露出を調節するのがISO感度です。
もう一度、基本となる写真に戻りましょう。
例えば、この写真を1段明るくしたいとします。そうすると、SSを1/125にするか、F4 にするか。
どちらを選択しても明るくなります。
例えばここで
「絞りの値もSSの速さも今がベストなんだよな。この組み合わせは変えたくはないけれど、今よりは明るくしたい。」
と思った時、第3の手段であるISO感度の登場です。
ISO感度は数字が上がるほうが高感度(光に感じやすい)つまり、光を増幅してくれるということでしたね?
なので、ISOの値を400→800にすることでも、同じ露出にする事が可能になります。
下記はさっきの問題に出てきた写真です。そのままでは露出オーバーの写真を、SSを速くすることで適正露出にしました。
では、SSもそのままの1/250秒がいい!となった時はISO感度をどうしましょうか?
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ISO感度を400から100に2段落とす(2段分光の感じやすさを鈍くしてあげる)ことで、適正露出に戻しました。
冒頭で言ったように、本来は
絞り
シャッター
速度ISO
の3つの組み合わせですが、ISOは状況に応じての最後の手段として考えたほうがわかりやすいです。
ISO感度で調整したほうがいい場面とは?
ISO感度の調節で露出調整する場面としては
SSは低速にしたくない(三脚がなくて手持ち撮影するしかない)が、絞りはもう開放でそれ以上開けられないのにまだ暗い場合。
絞りを思い切り開けて撮影したいが、SSを極端に高速にできない場合。(詳しくは別の回にお話しますが、ストロボを使用した撮影の時や、フリッカー現象の出やすい状況のときなど)
上の川の流れのように、動きを強調するためにSSは低速にしたいが、ボケも意識したいので絞りはそれほど絞りたくない場合。
など、他にもいろいろな状況があります。ISO感度は高感度にあげるのは比較的簡単です。(ザラつきなどを無視すれば)
ISO400→800→1600→3200→6400→12800→25600..…
ですが感度を下げたい場合、ISO感度はあまり下の設定がないのが現状です。(カメラにもよりますが、ISOは50くらいが一番低い設定がほとんどです)
となると
ISO400→200→100→50
ここより下が、カメラの設定では下がりません。
なので、それよりも感度を下げようとするのなら、絞りやSSの値を再度動かす、もしくはレンズにNDフィルターをつけて
物理的に光をカットする必要があります。
まとめ
この話は、なかなか難しいです。なので、撮りながら体感で覚えることをおすすめします。
最近のミラーレスカメラだと、EVFファインダーなので、絞りやSSの数値と連動して、リアルタイムで明るさを表してくれるので、非常にわかりやすいです。古い一眼レフだと
撮ってみないとわからないのですが、その場合は先程書いたファインダー内のインジゲーターを頼りにしましょう。
絞りとSSの組み合わせ(プラスISO感度)で、写真の明るさを調節する。
絞りもSSも動かすと、光の量も変化するがボケやブレなど画作りに関わる表現も変化する。それを活かすのかそれともマイナス要素だと考えるのか?
それによって、組み合わせを考えてみる。プラスしてISO感度を利用して、組み合わせを変えずに明るさを変えたり絞りや SSの動かせる範囲外のところをカバーしてみよう。
というのが一応のまとめです。
とりあえず、オートで撮影した時に
「あれ?シャッタースピードがずいぶん遅いなあ?」
と感じたときは
もしかして、絞り(F値)が極端に大きかったり、ISO感度が低すぎたりしないかな?
と、推測してチェックしてみましょう。それがぱぱっとできるようになれば、初級者卒業です!
最後に、露出のトライアングルはよく
「蛇口から出る水をコップに貯める行為」
に例えられます。
蛇口の直径が「絞り」
水を流している時間が「シャッタースピード」
そもそもの蛇口の大きさが「ISO感度」
水は光の量です。
コップいっぱいの水を貯めるには、蛇口の直径が大きければ短い時間で終わります。直径が小さければ流す時間は長くなります。
魔法を使って蛇口が大きくなるなら(笑) コップの水はさらに速く貯まるでしょうし、蛇口がミニチュアサイズになったら、コップが満タンになるにはさらに時間がかかります。
この例え、よく分かる人とピンとこない人と分かれるのですが、参考になれば幸いです。
基本的な露出のお話はこれで以上になります。
次回をお楽しみに。
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