見出し画像

ルール5ドラフトは怖くない?

 毎年12月に開催されるウィンターミーティングの最終日に実施されるルール5ドラフト。ロスターに空きが多いチームのファンにとっては楽しみであり、一杯のチームのファンにとってはプロテクトしていないプロスペクトの流出を恐れるイベントになります。一方、ルール5ドラフトで指名された選手のその後を見ると、意外に流出人数は少なく、移籍後の活躍を見ても大きな損失にはなっていないことが分かります。

〇指名人数は意外に少なく、1球団当たり0.5人

 MLBフェーズのルール5ドラフトが中止になった2021年を除いた過去10年の指名人数推移を見ると、過去10年平均14.5人、過去5年平均15.8人となります。30球団で割ると概ね0.5人。1球団の最大流出人数も2人が上限といったところです。

2011年以降のルール5MLBフェーズ指名人数

 この点を考慮すると、ルール5候補のプロスペクトが5、6人いたとしても悪くて2人しか出ていかないということになります。私は毎年獲られる側のチームのファンなので、ルール5ドラフトを恐れてしまうのですが、実際には自軍のプロスペクトを過大評価しているようです。これはTBに限らず、11月15日のロスターセットで40人枠が埋まってしまったチームのファンに共通でしょう。

〇過去10年最高はライアン・プレスリー

 「Here are the 10 best Rule 5 Draft picks of past decade」という記事では、過去10年にルール5で指名された選手のうち、rWAR(baseball reference WAR)を多く稼いだ10人の選手が記載されています。

ライアン・プレスリー RP 9.7rWAR
ギャレット・ウィットロック RP 4.7rWAR
オデュベル・ヘレーラ CF 13.4rWAR
アンソニー・サンタンダー RF 4.8rWAR
マーク・カンハ LF 12.5rWAR
ブラッド・ケラー SP/RP 8.9rWAR
アキ・バドゥー LF 2.5rWAR
チェ・ジマン 1B 5.2rWAR
デライノ・デシールズ・ジュニア CF 5.1rWAR
ヘクター・ロンドン RP 4.9rWAR

Here are the 10 best Rule 5 Draft picks of past decade

 こちらのリストを見ると、多くは外野手とリリーフ投手であることが分かります。また、エクステンション又はFA権獲得後に得て大きな契約を得たのはプレスリーとカンハくらいと言えそうです。それぞれに素晴らしい選手ですが、10年で145人指名された中でトップクラスの2人がこのレベルと考えると、流出はそれほど恐れることではなさそうです。

 マイナーリーグフェーズに広げると、オマー・ナルバエス、ジャスティン・ボーア、ライアン・トンプソンといった選手も成功例に挙げられます。また、今年ブレイクしたネスタ―・コルテスは2017年のルール5ドラフトでBALから指名されましたが、2018年開幕から間もない時点でNYYに返却されました。

〇2006年に伸びたルール5対象年数も影響か?

 かつてルール5ドラフトからはヨハン・サンタナのようなエースクラスの選手も生れる土壌となっていましたが、現状はそれほど突出した選手は見られません。その要因として労使協定の改正により2006年オフよりルール5ドラフトの対象が1年伸びてたことが挙げられます。

 現在は、18歳以下でプロ入りした選手はプロシーズン5年以上、19歳以下でプロ入りした選手は同4年以上を経ないと、ルール5ドラフトの指名対象になりませんが、2005年以前はそれぞれ4年、3年といずれも1年短いルールでした。もっとも、過去10年に限らず改正後全てのルール5ドラフトを見ると、R.A.ディッキーのような例もあるので、ルール変更に加えMLB各球団のフロントの見極めも向上していると思われます。

〇TBの選手は指名されなさそう

 11月15日の時点でTBにおいてルール5対象の選手が複数ロスター入りできませんでしたが、現状はそれほどリスクはなさそうかなと考えているところです。プロテクトされなかった選手の中でも指名されそうな選手を思い浮かべたところ、やはりそれぞれに欠点があり、26人枠にキープしなければならないルールが障害になりそうです。以下、指名候補を挙げます。

ロニー・サイモン
 2021年オフにジョーダン・ルプロウとのトレードで加入。遊撃が本職ながら二塁と三塁も守れるユーティリティタイプの内野手。打撃も三振が少なく、パワーもあります。しかしながら、表面上の打撃成績はいいのですが、リーグが打高とあってwRC+は106に留まります。まだ今年途中にAA昇格という段階なので打撃傑出度がそれほど高くない点と合わせてMLBで使うのはリスクがありそうです。

カメロン・マイスナー
 2019年ドラフト1巡目補完でMIAより指名され、2021年オフにジョーイ・ウェンドルとのトレードで加入。センターに留まれるアスリート性の高さとパワーが売りで、打撃成績はAAまでほぼ文句なしです。一方、三振率が高くMLBに適応できるか疑問。

オースティン・シェントン
 2021年デッドライン時にディエゴ・カスティーヨとのトレードで加入。三塁が本職で一塁も守れます。AA昇格後に打撃スタッツが一気に落ち込んでおり、三振も増えています。正直、将来的にロスターに加わるとも思えません。

ルーベン・カルデナス
 2019年デッドライン時にハンター・ウッド、クリスチャン・アローヨとのトレードで加入。ロスター整理の意味合いが強かったものの、MLB選手2人ンに対して1人の見返りという位置づけで入っただけあってパワーナンバーに優れています。AAA成績は落ち込んでいるように見えますが、7月に怪我から復帰後は51試合で15本塁打、OPS.882と吹き返しました。三振率も同期間は25.3%と怪我前の33.8%から大幅に改善しました。個人的には一番獲られたくない選手ですが、まあ大丈夫でしょう。

エリベルト・エルナンデス
 2020年オフにナサニエル・ロウとのトレードで加入。3人の見返りのうちのメインチップでそれに相応しい活躍を見せています。とはいえ、まだA+ですし、三振率も高くMLBフェーズで指名するレベルにはありません。来年、AAで活躍の後、ロスター入りしてくれたらいいと考えています。

 以上、挙げてみましたが、26人枠にキープしなければいけないMLBフェーズで上記の選手が指名されるとは考えにくいと思います。また、指名されたとしてもリターンの公算が大きいと考えます。サイモンは11月30日時点のBAのルール5ドラフトプレビューで1人目に挙がっていますが、まだまだ未熟だと思うのですがどうでしょう?他球団のルール5対象選手を見ても2020年のように20人近く指名されるということはないように見えます。いずれにしても12月7日のルール5ドラフトが楽しみですね。

※画像はMLB公式


いいなと思ったら応援しよう!