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長嶋茂雄人気とセイバーメトリクス

 人生において何回目になるか分からない「マネーボール」通読の過程で、かつて長嶋茂雄人気について感じたことがあったのを思い出したので、MLBのトレードは一切関係ありませんが、備忘録的な話題として取り上げます。
※選手名は全て敬称略です。

〇長嶋茂雄人気と裏にある過大評価との声

 巨人の長嶋茂雄と言えば、王貞治とともにONの愛称で非常に人気のある選手でした。しかし、通算本塁打数で世界記録を持つ王と比較して、一流の成績ではあるものの、通算成績、特に打撃三部門において突出した数字を残していない長嶋は野村、張本らと比較して過大評価という声が昔から根強くありました。

 もちろん、長嶋自身、首位打者6回というセ・リーグ記録を有しており、名球会入りもしている一流選手ではありますが、通算本塁打数2位の野村や、NPB唯一の3000本安打達成者の張本と比較すれば、やや劣るように見え、巨人人気に乗っかっていたというアンチ巨人の考え方もあながち間違っていなかった(過去形)ように見えます。私も90年代はそうした見方をするアンチ巨人の一人でした。

〇総合指標では長嶋が高い公算大

 ただ、10数年前に日本プロ野球統計というサイトを見たことをきっかけに長嶋茂雄は野村、張本を上回っていたのでは?と考え始めました。通算RC+(4000打席以上)のランキングで長嶋は野村、張本を上回っており、積算系のRCでも張本を下回るものの、野村を上回っています。

 つまり、打撃三部門だけでは見えない打者としての生産性、特に相対的な位置付けや傑出度において、長嶋は王に次ぐ選手だったと言えます。この点、面白いのは90年代まではデータを見ていたとされる側ほど、長嶋人気を「成績には劣るが巨人の主力だったから」だと主張していたことです。

〇当時の観客も気付いていた?長嶋の傑出度

 上記のRC+と同じような発想で傑出度を示すのに現代において一般的なwRC+で見ても長嶋は王に次ぐ歴代2位(7,000打席以上)の数字です。改めて見ると、三冠王3回の落合をも上回っており、打撃三部門のタイトル獲得回数では打者の評価は容易ではないことが分かります。

 さらに彼の場合は守備位置が三塁手であり、守備がいいという評価を得ていました。守備位置や守備での貢献度を考慮すれば、張本や野村よりもWARも高かったと推測されます。

 こうした指標を長嶋が現役時代だった当時の野球ファンはもちろん知らなかったでしょう。ただ、長嶋人気は巨人に所属している四番打者だったからという側面があったにしても、張本や野村と比較して人気が大きかったのは、観客がその傑出ぶりを十分に感じ取っていたからこそではなかったでしょうか?そして、通算wRC+歴代1位の王と合わせてONと呼んだ当時の観客は慧眼だったと思います。

 何となく本を読んでデータを眺めたところ、データ分析が精緻化したことで大衆人気の正確性が証明されたような気がしたので書いてみました。

※画像はベースボールonlineより引用

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