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【MLB】マイケル・ハリスのエクステンションは割安なのか?

 ATLがマイケル・ハリスと8年72Mのエクステンションを行いました。2021年オフ以降ですと、マット・オルソンの8年168M、オースティン・ライリーの10年212Mに続く長期エクステンションとなりました。絶対額で見ると8年という年数に対して72Mという金額は割安に見えますが、MLSが1年未満の選手という点を考慮すると、果たして安いのか過去の選手と比較してみたいと思います。

〇サービスタイム1年未満では史上3番目の契約

 マイケル・ハリスはまだサービスタイム1年未満ですが、この範囲に絞ると8年72Mという契約は史上3番目に大きな契約です。1位はワンダー・フランコの11年182M、2番目はロナルド・アクーニャの8年100Mです。主だったところでは、ルイス・ロバートの6年50M、エロイ・ヒメネスの6年43Mを上回ります。ハリスは素晴らしい選手だと思いますが、ルイス・ロバートやエロイ・ヒメネスよりも大きな契約というのは少し疑問の余地があると感じました。もちろん、活躍すればロバートやヒメネスの方が若くFA市場に参戦できるメリットはありますが。

〇調停期間までの5年35Mはオールスター級

 ハリスは今季AAで好成績を残すと5月28日に昇格。昇格直後にいきなりスタメン起用されるとそのままCFのレギュラーを獲得しました。ハリスの今を見れば、マット・オルソンのためにクリスチャン・パチェを放出したのも納得です。8月16日終了時点のスラッシュラインは、.287/.325/.500/.825、その他のスタッツもwRC+126、fWAR2.7とルーキーイヤーの選手としては非常に高水準の成績を残しています。

 一方、2023年から始まる契約の最初6年の総額は45Mとなっています。ハリスは1年目に当たる2022年5月28日にデビューしているので、2022年はサービスタイムの消化は1年未満となりますが、新人王投票で2位以内になる公算が大きいので今年は1年分のサービスタイムを与えられるでしょう。また、2年目以降も順調に毎年1年分のサービスタイムを消化した場合、2027年オフにFAとなる見込みです。

 つまり、2027年までにハリスが受け取る総年俸は最低年俸1年分+5年35Mとなる見込みですが、調停3回で35Mに到達する選手は中々いません。以下の表を参照していただきたいのですが、40Mを超えた野手7人のうち5人はスーパー2です。しかし、ハリスは今年1年分のサービスタイムを得る公算が大きいので比較すべきは非スーパー2で3回の調停を経てFAになった選手との比較でしょう。30~40Mの選手に色付けしましたが、確実にこれらの選手を上回ると言えそうでしょうか?単純に調定額のみを比較すると、ディスカウントという印象は受けません。

エクステンションしなかった大物野手の調停額合計

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※調停期間中をイートする複数年契約は含む(例:ストーリーの2年27.5M等)

〇キャリア9年で72M稼ぐ野手の実績はかなり高い

 次に最低年俸相当(2022~2024年)+調停期間相当(2025~2027年)+FAイヤー相当3年(2028~2029年)、つまりサービスタイム9年を経過した年に契約が切れ、その時点での生涯総年俸が72M程度の選手を探すと、これが中々見つからないのですが列挙すると、ディディ・グレゴリウスが約71M、少し古いですがマイク・ナポリが約69Mなので大分ハードルが下がります。さらにコストが安かった選手を見るとダニエル・マーフィーが約56Mでした。9年間通算で彼らを明確に上回ると言われると必ずしも安泰ではないレベルの選手が揃っていると思います。

〇リスクリワードが見合わない

 マイケル・ハリスがフランコやアクーニャ、ルイス・ロバート等と異なるのは、シーリングの高さではないでしょうか。アップサイドが限られそうな割には、怪我や不振に陥った場合のリスク分が割り引かれていない契約に見えます。同じATLでもハリスはどちらかと言えば、アクーニャよりもアルビーズ寄りのプロスペクトではないでしょうか。そのアルビーズが今7年35Mでも割安とまでは言えない成績に陥っている点を踏まえると、リスク分のディスカウントがないのは懸念点に見えます。ATLはハリスの将来性に対する自信が強いということになるのでしょうか。

〇ATLのメリットはキャッシュフローとAAV?

 最後にATLのメリットを考えてみましたが、やはり年々の支払額が固定することで支出見通しが明確になること、そしてAAVが数年に渡って同程度に安定することではないでしょうか。特に後者は贅沢税の計算をする際に数年に渡って一定の見通しが付くか、最低年俸から調停に切り替わるタイミングで一気に上昇してしまうかは編成の柔軟性に大きく影響すると思います。もっとも、リスク分のディスカウントがない理由としては弱い気がします。

〇それでもATLの編成は巧くて羨ましい

 とはいうものの、若くて計算できるレギュラー野手の多くを長期的にロックしているのは羨ましい限りです。今回はハリスに関してのみ、それほど美味しいわけでもないのではないかという感想にはなりましたが、ATLのロスターマネジメントはとても合理的で美しいと思います。

 ※画像はMLB公式


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