ベッドの中で(仮)

薄暗い毛布の香りの中、

智は手探りでカーテンを掴み開いた


朝の冷気を含んだ陽の光が、

遮るもののない裸の肌を直に刺す


ちくちく痛む皮膚の欠片は、

じわりじわりと静かに拡がっていく

 

  

  

肌を柔らかく包むベッドの温もりに抱かれつつ、

智は傍らに寄り添って寝息を立てる優菜に目を向けた

  

穏やかに眠るその姿を見守りつつ、

智は昨晩の優菜のことを思い起こしていた

 

 

  

耳にかかる優菜の荒い息遣い

身体の奥で感じる優菜の身体の温もりと重み

滑るような優菜の肌の手触りを

 

 

 

智は優菜を愛していた


だから、優菜のことを誰よりも知っていた

 

 

優菜には物心付く頃から両親がいないこと、

そして唯一の肉親で彼女を支え続けてきた兄も

10年前に失くしてしまったことも

 

寄る場所のない優菜は、

あまりにも長い年月を

助けの来ない孤独の中で過ごしてきたことも

 

 

兄の愛情が優菜を形作り、

そしてその欠落が優菜を苦しめていることも


智は知っていた



頼れる場所のない寄るべなさが、

優菜のあらゆる感情に爪を立て引っ掻き回している

 


その針金のような軛が 

優菜が救われるのを拒んでいるのだ

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