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慢心が招いた自滅?

昨日このnoteで記事にした、警察による麻薬密売容疑者虐待死事件。日本でも報道されているようですね。

この件では、警察庁副長官が捜査指揮にあたっていますが、その後、次々と驚くべき事実が明るみに出ています。

まず、この「殺人事件」が発生したのは、8月6日だったこと。事件が明るみになったのが8月24日頃からですので、かなり時間が経っています。その間、殺害された夫と共に逮捕されていた妻は、「この一件を公言しないこと」を条件に、釈放されていたようです。

また、病院医師による検死報告書も明るみになっています。

どうやら200万バーツの賄賂を要求した警察署長(41歳の警察大佐、一部報道では39歳となっています。公務員の年齢を調べるだけで混乱があるところが、いかにもタイのマスコミらしい…)は、容疑者の死亡後、「麻薬中毒で死亡したことにしろ」と部下に指示したそうです。そしてそれを事実らしくするために、死亡した容疑者に麻薬を注射したらしい…。

検死にあたった医師は、死亡した容疑者の体に複数のあざが見られたことから、「暴力があったのではないか」と疑ったそうです。しかし、遺体を運んできた警察官は、「逮捕しようとしたところ逃亡し、途中でふらついて倒れ込んだ。あざは逃走して倒れた時にできたのではないか」と説明を繰り返していたそうです。また、死因も医師は窒息らしいと感じたそうですが、尿検査で薬物成分がみつかったことから、結局警察の「逃亡説」を受け入れたとのこと。地元警察に対しては、検死を担当している病院・医師も過度に深入りしないルールがあるのでしょう。ただこの医師は、最終的に警察の説明を受け入れながらも、検死報告書には所見を正確に記入していたとのことで、これは今、警察署長らの犯罪を暴く貴重な証拠となっています。

さらに、このティティサン署長(すでに懲戒解雇されていますから、正式には前署長。今は指名手配中なので、以下、ティティサン容疑者とします)のバックグランドについても明らかになってきました。

ティティサン容疑者は、バンコク都クロンサンワ―区に豪邸を所有していた…プール付で、時価総額は6,000万バーツ(約2億円)は下らないとみられています。警察署長(警察大佐)の基本給は、43,000バーツ(約14万2,000円)ですから、この豪邸の購入資金はいったいどこから…。さらには豪邸だけでなく、ランボルギーニを含めた超高級車も13台所有していたというのですから驚きです。

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女性関係も派手。

まず、高級車販売業を営む裕福な女性と結婚、男子に恵まれました。ネットでは彼女の写真も出回っていますが、かなりの美人さんです。しかし、ティティサン容疑者がモデルと浮気していたことがバレて離婚。その後、そのモデルとも別れ、有名女優とお付き合いをし、最近は元警察高官(退役警察中将)の娘さんと再婚していたようです。この娘さんもかなりの美人さんなのですが、その一方で、ティティサン容疑者は、さらに別の女性ともお付き合いをしていたらしい…。まったく、足るを知らない人間ですね。今は義父も妻も、大きなショックで気持ちが落ち込んでいることでしょう。

なぜ、ティティサン容疑者がこれだけの富を得たのか。

警察は、彼の資金源についても調査中です。これだけの資金、単にカツアゲをくり返していただけではとても稼げません。ひょっとしたら、大規模犯罪組織とのつながりがあったのかも。

一方で、王室擁護派との付き合いもよく、王室主催のボランティア活動にもよく参加していて、プラユット首相から表彰を受けたこともあるそう。模範的な警察官としてのパフォーマンスも、しっかり演じていたようです。

おそらく、十数年にわたった警察人生の中で、「オレは世渡りが上手なんだ」と自信をつけてきたんでしょうねぇ。

そしてそれが慢心となって、麻薬密売人と100万バーツ(約330万円)で釈放の合意をしたのに、欲をかいてその倍額を求めてしまったのではないでしょうか。さらに彼の慢心が日頃から態度に現れていて、それを嫌悪していた部下が、虐待が記録されていた警察署の防犯カメラ映像を有名な弁護士に提供した…。

過度の慢心が、自らの自滅を招いた…。私はこの事件を、そのように受けとめています。

ティティサン容疑者は、今も逃亡中。すでにミャンマーに逃れた、という推測も出ています。いずれにしても、これからの彼の人生は容易なものではないでしょう。

虐待を受けて殺された密売人もお気の毒ですが、これまでティティサン容疑者に検挙された犯罪者たちも、どうように虐待を受け、高額の賄賂を支払ってきたのかもしれません。また、同容疑者が関わってきたさまざまな人たちも、きっとそれぞれ心を痛め、悩み、苦しんでいることでしょう。彼の警察官としての経歴は、実に多くの人たちを不幸にしてきたように感じます。特に、彼の指示で今回の虐待に加わった6人の警察官(うち、4人が逮捕、残り2人は逃亡中)は。

タイの警察に対しては、この一事をもって汚職体質が一掃されるという幻想はありませんが、こうした事件をくり返していく中で、徐々に浄化されていくことは間違いない…ここには期待したいと思います。

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