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国旗を踏むな!

私は、国旗を大切にしようという考えには大賛成の立場です。

それでも、これはちょっとやり過ぎなんじゃないの、という気がします。

今年12月にイスラエルで行われる「ミス・ユニバース」のタイ代表、アンチリー・スコット-ケミスさん(父親はオーストラリア人)。

同ミスコンのプロモーション活動の一環として公表された写真の中に、タイ国旗を踏みつけている(?)ものがありました。

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元下院議員がこの写真を問題視し、「国旗法」違反だとして警察に訴え出たようです。

タイの国旗法では、国旗を冒とくした者に対して2年以下の懲役ないし罰金4万バーツ以下、もしくはその両方が課せられます。

うーん、アンチリーさん。

たしかに国旗の上に立ってはいるものの、これを「国旗を踏みつけている」と判断するか…。これは彼女の過失…というより、写真家やスタッフの配慮の足りなさの方が問われるべきであるような。もちろん、いずれにせよ国旗を冒とくしようという意図は感じられません。国を代表して…というところが、国旗の上に乗るという表現になったようにも思います。

訴状を出した元議員ですら、「国旗の冒とくが意図ではないことはわかっているから、アンチリーさんが実際に逮捕されるとは思わない。あくまでも、今回の件を契機に、国旗に対する配慮を広く社会に問い直したいがための訴状提出だ」と話しています。

社会に問いかけたい、ということが主旨であれば、これだけ大きく報道されているのですから、たしかにその目的は達成されたといえましょう。ただその余波が、社会を分断する方向に作用してしまっている危険性が感じられます。

アンチリーさんが立っている国旗の位置は、真ん中の青色部分。これは、タイ王室(ないしタイ国体)を象徴しています。その両側にある白色は仏教(ないし宗教)を示し、それを国民が身を挺して守る(血を意味する赤色)というのが、タイ国旗の意味するところです。それゆえ「青色部分の上に立っている」ということで、王室護持派からは「考えすぎじゃないか」と思われるくらい、反発する声があがっています。まぁ、それは社会を動かすほど大きなウネリにはなっていませんが。

また、アンチリーさんが反王室を訴えている民主派グループと同年代にあり、かつ父親がオーストラリア人ということで、「反王室、民主派」というイメージと重なりやすいことも、この国旗騒動に影響しているといえましょう。

この一件、タイでは大きく報じられていましたが、幸い、コトが荒れることなく下火になってきています。保守層の一部が非難の声を強めたものの、警察や政府はこの件に関してまったく動きませんでした。まずは、よかった。

「国を愛し、国旗を尊重する」ことと、「国を愛し、国民を尊重する」ことは、本来矛盾することではないと思いますが、タイに住むガイコク人としては、国旗を大切にするように、主権者である国民がもっと尊重されていいんじゃないですか?という思いが拭えません。


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