ヴェロニカのひげ

クラスの中心、人気者、マドンナ。彼女は「ヴェロニカ」。美人で愛嬌があって、優しく公平で少しミステリアス。とぼけた雰囲気はあるけど、抜けているってことはない。みんな、差はあるけど彼女のことは好きだろう。

そんな彼女の、形の整ったあごから、ひげが一本生えていた。

長い。あごから、首の付け根に届きそうなくらい。ヴェロニカはクラスメイトに囲まれて談笑中。誰もひげに突っ込まない。
ヴェロニカは女性だし、そうでなくとも一本だけひげを生やしたりしない。それに昨日まではひげなんてなかった。

おかしい。自分の目がおかしくなったのだろうか。外から押し付けられるような熱気に頭がやられてしまったのだろうか。

ヴェロニカのひげから目が離せなかった。そのことに、ヴェロニカも気が付いた。目が合う。

「どうかしたの?」

「…え、ひげ」

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