日本格闘技界の今後を考える

現在の日本格闘技界で夢のある舞台と呼べるのはどこでしょうか?

個人的にはRIZIN、新生K-1、RISEが該当すると思います。

そしてかつての格闘技ブームを引っ張っていたのはK-1とPRIDEです。

つまり立ち技、総合のそれぞれに夢のあるリングが存在しました。

今回、日本格闘技の今後を考えるきっかけとなったのは新生K-1の申し子、平本蓮のRIZIN参戦と将来的にUFCの王者となるという目標の表明です。

平本がゲーオに勝利した後K-1から脱退するというのは試合をしていなかった時点でファンは皆が気づいていました。

その時彼はONEに参戦するであろうという予想が最も多く、なぜかと言えばONEはMMAのみならず立ち技(ムエタイ、キックボクシング)ルールでもベルトを作っている世界的団体だからです。

しかし、彼は世界最強を目指すということで昨年末はベラトール(実質RIZINキックボクシングですが)に参戦し、将来はUFCを目指すと言っています。

MMAの世界ではUFCの王者が世界一というのは暗黙の了解になっていると思います。ボクシングで言えば4大メジャー団体の王者、ムエタイで言えばラジャダムナン、ルンピニーの王者です。

かつては日本が世界最高、世界最強であった時代があったと思います。

K-1GPの王者は立ち技世界最強、PRIDEの王者はMMA世界最強であると信じられている時代がありました。

そして立ち技、MMAの王者はそれぞれ権威を持っていたのですが、最近の格闘技界を世界基準で見ると明らかにその当時とは異なる状況になっていると思います。

何より平本の選択がそれを象徴しています。

先程UFC王者はMMA世界最強を名乗れる旨のことを書きました。では、キックボクシング世界最強はどこの王者になればいいのでしょうか?

K-1?、RISE?あるいはGLORY?それともクンルンファイト?ONE?

軽量級ならK-1という人もいるとおもいます。

しかしパっとしません。

那須川天心対武尊が戦えば間違いなく世界最強だという人もいます。

なんでそんなことが言い切れるのか?

タイには彼らより強い可能性のある化け物がまだいると思います。

天心は未だにロッタンに負けていたと言われるし、武尊だって階級下のヨーキッサダーのミドルで腕があんなに変色していました。

私は決してムエタイナンバーワンを唱えたいわけではありません。

勝負の場、団体としてここで王者になれば世界最強だ、ベルトが欲しかったらテキサスまで取りに来いと言える団体が現状キックボクシングでは無いのです。

中量級以降のキックボクシングであればGLORYかもしれませんが。

さて、今回はここからが本番です。

キックボクシングでは世界最強を決めるリングがないと書きました。

平本はそのためUFCを目指すことにしたと思います。

RIZINの煽りVで北岡悟が「柔術=練習、キックボクシング=練習、MMA=試合」みたいなことを言っていました。

まさにそんな状況になりつつあるのかもというのが今の格闘技界の世界情勢です。

キックボクシング界でコナー・マクレガーほど金を稼いで、人から良くも悪くも認知される選手は誰もいません。

さらに昨年のベラトール日本大会のメインイベント、エメリヤーエンコ・ヒョードル対ランペイジ・ジャクソンの試合のファイトマネーはRIZINでは到底支払えない額だったと榊原さん自身が語っていました。

彼らは現役のトップファイターではありません。しかも全盛期はPRIDE時代です。その頃よりも今の衰えたときの試合の方がファイトマネーは高くなっているのです。

ある記事ではファブリシオ・ヴェウデゥムはUFCに参戦したらファイトマネーが二倍になったとどっかの記事で見ました。

つまり何が言いたいかと言うと世界的にMMAは60億分の1とかやってた頃よりも遥かに市場がでかくなっているということです。

対象的にキックボクシングは未だにかつてのK-1に肩を並べる団体が無いのです。

そしてこの状況はキックボクシングをいくら頑張っても同じファイトスポーツであるMMAと比べたら全く稼げない。であればMMAに行こうと考えるキックボクサーが増えるきっかけになりうる現象です。

だから世界的にはキックボクシングはMMAを構成する格闘技の一種になることになってしまいそうです。野球で言えば、MMAが野球の試合でキックボクシングはバッティング、柔術は守備、レスリングは走塁みたいなイメージです。

今思えばUFCのヨアンナなんて日本の女子キックボクシングの試合に出ていた程です。それが今やUFCのメインカードで試合をするのだからバイトから取締役くらいの出世と言っていいでしょう。

すいません。本当の本番はここからです。

今回のタイトルは日本格闘技界の今後を考えるとしました。

ここまで世界的な競技の差を書いてきましたが、日本国内はどうも事情が異なるようです。

現在の状況で新生K-1とRIZINどっちが上かと聞かれたらどっちとも言えないと思います。

武尊よりRIZINファイターの方が明らかに金がある様にも見えないです。

つまり日本格闘技界だけかつてのバブルのときの構造のままなのです。

おそらくこの構造は世界唯一なのではないかと思います。

さらにRIZINを見ているとかつてのPRIDE時代よりも主要選手に金を払っている様子もなく、世界的には拡大しているはずのMMAでRIZINだけはPRIDE時代よりも下手をすれば縮小しています。

これって経済と全くかぶる部分があり、1990年代前半にバブルが弾けてからもう30年ほど経ちますが、新興国はもちろん、日本を除くほとんどの先進国でさえ、給料は上がっています。日本だけ30年前と変わらないというか確か減っていたと思います。

今の日本格闘技は昔の製造業みたいな立ち位置だと思ったほうがいいです。

なかなかONEは受け入れず、UFCをやっても成功しない、ベラトールはスコット・コーカーが日本格闘技に愛着を持ってくれているから受け入れるなんて感じですが、コーカーだって儲からなければかんたんに切り捨てるはずです。

携帯電話と同様完全にガラパゴス化した日本格闘技ですが、これからどうなるかを最後に予想します。

すでになりかけていますが、今後K-1もRIZINもおそらく日本プロ野球のような形を目指すことになるというかそれしか生き残る道は無いように思えます。

かつてのアンディ・フグやピーター・アーツ、ヴァンダレイ・シウバやミルコ・クロコップのような選手はもう日本に来る前にUFCに行ってしまいます。

マネル・ケイプだって、トフィック・ムサエフだっていずれはプロハースカのように海を渡ることが考えられます。

そして日本人では那須川天心や平本蓮のような才能あふれるファイターが日本でやることがなくなってアメリカや東南アジアに行くことになるのでしょう。

ただ、別に悲観しなくていいと思います。

日本プロ野球だって1軍に登録できる外国人選手は4人までです。

それしかいないのです。だからあとはみんな日本人です。

格闘技界も日本人同士の対戦でカードを組む興行が多くなるし、PRIDE時代よりも様々な日本人にスポットがあたるようになるでしょう。

ガラパゴス化は避けられませんが。

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