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青梅リベンジャーズ

20時に白加賀梅が届く。

想像してたより小ぶりではあったが、
贅沢言ってられない。

即仕込みに入った

水洗いはしたが、
煮るから拭かなくて良いかと省き、

ヘタ取りはやはり親指の爪でポロポロと
テンポ良く取っていく。
たまに爪楊枝でやってみるが、
やはりヘタがどこかへ勢いよく飛んでいく。

忘れてはいけない!!!!
梅シロップ用の青梅を確保するのだ。
本来、私は梅シロップを1番作りたかったんだ。

それがどうだ。
今じゃ梅肉エキス作りに
すっかり取り憑かれてるではないか。

何も考えるな急げ時間がないのだから。
種を取り出す作業に取り掛かれ!

ネットでは、袋に入れて棒で砕く方法を
やっていたのだが、
私は上手く出来なかった為、
トンカチに布巾を巻いて
1個ずつ砕いていくことにした。

実が硬くて種となかなか離れてくれない時は
包丁で削ぎ落としてった。

BGMは最近自分の中で流行っている
愛染観音の真言を流す。
この梅子たちに良きご利益をと
図々しい想いを込めて。

現場はそれはもう無心で黙々と梅をガンガン叩いてBGMも手伝い
ちょっとしたトランス状態
優雅さとは程遠いものであった。

本来は梅1個ずつおろし器を使ってすりおろして、種を取り出すらしいのだが、
そんな心の余裕と時間のない私は
文明の利器ブレンダーを使わせてもらう。

時刻は23時半、、、
何時に終われるんだ。寝れるのか?私

次は布巾の中に青梅を入れ果汁を絞る
絞り終えた頃は指がシワシワ

梅1キロで25g程度の梅肉エキスしかとれないと
書いてあったけど、、、

土鍋には結構な量の絞り汁が出来たと同時に
トロトロになるまで
コレ何時間煮詰めなきゃならんのだ?
ガス代を気にしつつ
青汁にしか見えない出来んのかと不安がよぎる。
すでにもう眠い。

煮詰めてくぞーっ!
弱火でコトコト書いてあるけど、
んな事してたら朝になってしまう強火加熱

ここからは少し心にゆとりが出てくるだろうと
ラジオをつけた。

だが、コトコトではなくグッツグツ煮詰めてる
その鍋の中身は悪い魔女が作ってる
薬にしか見えない。

灰汁を取り除きながら焦げないように
木べらでかき混ぜ繰り返してると、
見た目とは反した薄っすらと甘く爽やかな香りが
ほんわりしてきたと同時に
昔の記憶が蘇ってきた。

30歳頃から、四季を感じたい充実させたいと思い始め、
日比谷線の始発を待って
築地の場内で早すぎる朝食と旬の魚を見て
満足していたものだった。

朝まで遊び泥酔で築地場外のお店で
朝食をとる事は何度かあったのだが、
はじめて本気で場内へ行った日は
スタイリストの友人と。

彼女とは婚活パーティーにも一緒に行った思い出がある。

市場へ仕入れをしてるベテランの真似をし、
大体の人が持っている竹籠バックを買って帰った。

市場には立って運転する 通称「ターレー」
という小さな働く乗り物に乗って
タバコをふかしながら猛スピードで
あちこち走っている。

そこはもう見たことない無法地帯のような感じに私は終始大興奮していた。

ターレーを大爆走している姿が
物凄くカッコよくて乗ってる人も3倍増しに見えた(失礼)

カッコいい♡漢だ!
私はもう目がハートで
市場の人と結婚したいと強く願った。
「あーゆうのがいいの?市場の人は出会いがないからすぐ結婚できるよ。」と友人

「仕事中だし気が荒いから
(またもや勝手な思い込み)
邪魔にならないように気をつけなくっちゃね。」

なんて言いながらも、
私は竹籠バックがあるから
素人だと思われないとイキっていた。

そして小馬鹿にされないよう
素人だとバレないように練り歩くのだが、
場内の細い道をターレーが
勢いよく私の後ろスレスレを走り回ってる度
ヒヨっていた。

何をしてても邪魔なのだ。

それから築地市場へは
2ヶ月に1度1人でも通うようになっていた。

日本の四季イベントと言えば
これまで盆踊りでワイワイ飲み騒ぎ踊って楽しむ程度だった。

築地市場をキッカケに私は
四季を感じる喜びをより強く求めるようになっていき、
ミモザの植木を育て始めたり、
節分、冬至や菖蒲湯に入ったりなど
日本古来からの年中行事にとても興味惹かれていった。

その行事を行うと幼少時代に家族と過ごした年中行事を思い出したり、生活が彩り豊かになって、
心が満たされていくのだった。

梅の果汁を何時間もかき回してたお陰で思い出す事もなかった築地の事や
生活の一部にしたい私の中の大切な事を思い出せた。

灰汁を取る度に私の中の毒も取り除いたのだろうか。
ただ眠たいだけなのか、まろやかになった気がする。

こういう時間が私には とても必要な時間なのだと梅を通じて教えてもらった。

物思いにふけてると梅肉エキスが仕上がった。

ちょっと舐めてみる。
スーッパっ!! どこかで食べたことのある味

飴の小梅ちゃんだ!
小梅ちゃんの最後ギュンと酸っぱくて歯にくっつく小梅ちゃんのシメ
そんな中身のやつに似てる。

懐かしい。今も小梅ちゃん売ってるのかな。

3時、、、眠い、、、けどとても達成感がある。
やっぱり、梅仕事は日中にやろう。
そう固く心に決めた。

翌日早速梅肉エキスをお湯に混ぜて飲もうとしたら、カッチコチに固まっていた。

フォークじゃビクともしない包丁の先端でほじくり出し湯に溶かす。

煮詰め過ぎたか。

これから毎日ガリガリほじくる作業が追加。


丁寧でお洒落な暮らしとは程遠い私の暮らしだ。


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